パイプステンレス規格基礎知識
パイプステンレス規格の重要ポイント
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JIS規格体系
用途別に細分化された規格で適切な選択が可能
パイプステンレスJIS規格種類と記号
ステンレスパイプの規格は用途に応じて複数のJIS規格に分類されており、それぞれ固有の記号が定められています。最も一般的な配管用ステンレス鋼鋼管は「JIS G 3459」に規定され、記号「TP」で表されます。
主要な規格と記号の体系は以下の通りです。
- 配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3459) - 記号:TP
- 耐食用、低温用、高温用、消火用配管に適用
- 外径φ10.5㎜~φ660.4㎜の範囲で規定
- 一般配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3448) - 記号:TPD
- 給水、給湯、排水、冷温水配管に適用
- 外径9.52mm~318.5mmの17種類を規定
- ステンレス鋼サニタリー管(JIS G 3447) - 記号:TBS
- 食品工業用、酪農用に適用
- 管内面は通常400番研磨仕上げ
- 機械構造用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3446) - 記号:TKA
- 航空機、自転車、車両、建築、厨房等の構造物に適用
- 配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管(JIS G 3468) - 記号:TPY
- 350A以上の大径配管用規格
製造方法による記号の違いも重要で、TPS(シームレス管)、TPA(溶接管)など末尾で区別されます。
パイプステンレス外径厚さ寸法規格
ステンレスパイプの寸法は外径と厚さの組み合わせで標準化されており、材質や製造方法により詳細な規格が定められています。
配管用ステンレス鋼鋼管(TP)の主要寸法範囲。
- 外径:φ10.5mm~φ660.4mm
- 製造方法:継目無し(S)、自動アーク溶接(A)、レーザ溶接(L)、電気抵抗溶接(E)
SUS304材でのシームレスパイプ標準寸法例。
- 小径:外径25~50mm、厚さ1.2~5mm
- 中径:外径60~150mm、厚さ2~35mm
- 大径:外径165~400mm、厚さ5~42mm
サニタリー管(TBS)の標準寸法。
- 外径25.4~165.2mm
- 厚さ1.2~3.0mm(JIS G 3447より)
- 内外径ともに#400研磨仕上げが標準
一般配管用(TPD)の特徴。
- 17種類の外径規格
- 各外径に対し1寸法のみの肉厚を規定
寸法公差については、用途により要求が異なります。熱交換器用では外径公差が厳しく、肉厚公差がマイナス0という特殊な規定もあります。
パイプステンレス材質別用途特徴
ステンレスパイプの材質選択は使用環境と要求性能により決定され、主要材質であるSUS304、SUS316系統それぞれに特徴があります。
SUS304系(最も一般的)
- 汎用性が高く、市中在庫で入手しやすい
- 耐食性と加工性のバランスが良好
- 建築設備配管、食品工業で広く使用
SUS316系(高耐食性)
- SUS304より優れた耐食性を持つ
- 海水や酸性環境での使用に適する
- 化学工業、医療機器で重要
特殊材質の用途
- SUS310・SUS310S:高温用途向け
- SUS430(フェライト系):磁性有り、コスト重視用途
- SUS436L、SUS444:特殊耐食用途
用途別の材質選定ポイント。
🏭 化学工業
- 腐食性媒体:SUS316L以上を推奨
- 高温環境:SUS310系を検討
🏥 医療・食品
- サニタリー性重視:SUS316L + 内面研磨
- 清掃性:継目無し管を優先
🏢 建築設備
- 一般給水:SUS304で十分
- 温泉・海水:SUS316系を選択
材質証明書の確認も重要で、化学成分や機械的性質の保証値を必ず確認する必要があります。
パイプステンレス溶接継目無し製造方法
ステンレスパイプの製造方法は大きく継目無し管と溶接管に分類され、それぞれ特性と適用場面が異なります。
継目無し管(シームレス管)- 記号:S
製造工程。
- 鋼塊から熱間で穿孔・圧延
- 内外面の品質が均一
- 肉厚精度が高い
特徴と用途。
- 高圧配管に最適
- 継手部分の信頼性が高い
- 化学工業、石油精製で多用
- コストは溶接管より高い
溶接管の種類と特徴
自動アーク溶接(A)
- 大径管に適用
- 溶接部の品質管理が重要
- 配管用で一般的
レーザ溶接(L)
- 高精度な溶接が可能
- 薄肉管に適用
- 医療機器用途で増加
電気抵抗溶接(E)
- 量産性に優れる
- 中小径管で主流
- 建築設備用途で多用
製造方法選定の実務ポイント。
⚠️ 圧力条件
- 高圧(10MPa以上):継目無し管推奨
- 中低圧:溶接管で十分
🔍 品質要求
📏 寸法要求
溶接管では溶接部の非破壊検査(超音波探傷、渦流探傷)が品質保証の要となります。
パイプステンレス規格選定実務ポイント
実際のプロジェクトでステンレスパイプ規格を選定する際は、技術的要件とコスト効率の両面から総合的に判断する必要があります。
規格選定フローチャート
1️⃣ 用途の明確化
- 配管系統:TP(JIS G 3459)
- 建築設備:TPD(JIS G 3448)
- 食品関連:TBS(JIS G 3447)
- 構造用:TKA(JIS G 3446)
2️⃣ 寸法仕様の決定
- 流量計算による内径決定
- 圧力条件による肉厚算定
- 規格寸法との適合確認
3️⃣ 材質選定
- 使用環境(温度、腐食性)
- 機械的性質要求
- コスト制約
見落としがちな重要ポイント
🔧 接続方式との整合性
- フランジ接続:JIS B 2309準拠の管継手
- ねじ接続:管端つば出し加工の考慮
- 溶接接続:開先加工の仕様確認
📊 調達・在庫戦略
- 標準寸法での設計によるコスト削減
- 市中在庫品の活用可能性
- 納期とコストのバランス
⚡ 将来拡張性
- 配管系統の増設可能性
- メンテナンス性の考慮
- 規格統一によるスペア部品管理
コスト最適化のテクニック
💰 材質グレードの最適化
- 過仕様の回避(SUS316→SUS304への変更検討)
- 部分的な材質変更(腐食環境のみSUS316)
📏 寸法の標準化
- 類似寸法の統一
- 端数寸法から標準寸法への変更
- 在庫品活用による短納期・低コスト実現
設計段階での規格選定が後工程のコストと品質を大きく左右するため、初期検討の重要性は極めて高いといえます。
ステンレス協会の配管ガイド等の業界標準資料も参考にしながら、プロジェクト固有の要件に最適な規格選定を行うことが成功の鍵となります。
ステンレス協会配管ガイド - 配管設計の標準的な考え方と規格適用例