

多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式)は、円筒形の外殻(シェル)内に多数の細い管(チューブ)を配置した構造を持ちます。この構造により、小さな設置スペースで大きな伝熱面積を確保できるという特徴があります。
参考)https://d-monoweb.com/blog/heat-exchanger-shape/
シェル側にはバッフルプレートが設けられており、流体の流路を長くすることで熱交換効率を高めています。低温から高温、低圧から高圧まで幅広い条件に対応でき、加熱・冷却・蒸発・凝縮など全ての用途に適応可能です。
参考)https://chem-fac.com/heat-exchanger-type/
多管式熱交換器はさらに固定管板型、Uチューブ型、遊動頭型の3タイプに分類されます。固定管板型は構造がシンプルで最も多く採用されていますが、シェル内面の清掃が困難というデメリットがあります。Uチューブ型は管束を引き出せるため管外側の清掃が可能で、遊動頭型は全ての箇所を機械的に清掃できるため、使用条件が過酷な場合に採用されます。
参考)https://www.mekasys.jp/series/detail/id/KSK_0005/?number=111
プレート式熱交換器は、凹凸にプレス加工された金属プレートを複数枚重ね合わせた構造が特徴です。高温側と低温側の流体が交互に流れる設計により、プレート面で効率的な熱交換が行われます。
最大のメリットは、軽量かつコンパクトながら高い熱交換効率を実現できる点です。同じ伝熱面積の場合、シェルアンドチューブ式に比べて約3分の1から5分の1の設置スペースで済みます。プレート枚数を調節することで伝熱面積を自在に変更できるため、用途に応じた柔軟な設計が可能です。
また、分解清掃が容易なため、メンテナンス性に優れています。ただし、流路が狭いため汚れやスケールが付着しやすく、定期的な分解洗浄が必要となります。構造上、高圧条件では使用できず、圧力損失が比較的大きいというデメリットもあります。
参考)https://www.mdirect.jp/plate-heat-exchangers/
スパイラル式熱交換器は、2枚の伝熱板を螺旋状に巻き取って細長い流路を形成した構造です。最大の特徴は、スケールが付着した場合に流速の増加に伴い自動で洗浄できる「自己洗浄作用」を持つことです。そのため、他の熱交換器に比べて汚れによる性能低下がほとんどありません。
参考)https://www.kurose.co.jp/sh_merit.htm
主に製油所、石油化学工場、製紙工場、下水・廃水処理場などでガスクーラーとして使用されています。高温と低温の流体が完全な向流となり、理想的な熱回収を実現できます。ただし、スパイラル内部の分解清掃ができないため、スケールが発生しやすい流体には不向きです。
フィンチューブ式熱交換器は、チューブの外周に大量のフィンを取り付けた構造で、伝熱面積を大幅に拡大しています。主に外気との熱交換で使用され、空調設備のエアコンなどに採用されています。チューブ内に液体を流し、フィン側に気体を流すことで熱交換を行うため、ボイラー排熱回収やバーナー燃焼空気予熱器などに適しています。
参考)https://www.katsukawa.co.jp/use
二重管式熱交換器は、直径の異なる2本の管を二重に組み合わせたシンプルな構造です。内管の周囲に別の流体が流れるよう外管が設けられており、配管にも適用できる柔軟性があります。コイルやU字など様々な形状で設計できることが特徴です。
参考)https://www.hisaka.co.jp/phe/workbook/first_period06.html
流体が詰まりにくく、条件に合わせて柔軟に設計できる利点がありますが、伝熱面積を稼ぎづらいため、工業的には比較的小容量の熱交換に用いられます。石油精製プロセスにおける冷却や加熱、化学プロセスの制御、発電所の熱回収などで利用されています。流体が管内を直線的に流れるため、熱伝達効率が高く圧力損失が少ないという特徴もあります。
参考)https://st-fuji.co.jp/heatexchanger.html
コイル式熱交換器は、伝熱管をコイル状に巻いた管の中を片側の流体が通り、もう片側の流体に接触させる構造です。コイルを巻くだけという単純な構造が特徴で、液体に浸け込んだり気体に接触させたりと広く使用できます。タンク内にも設置できるため、加熱冷却用途で用いられています。材質はガラスから鋼材まで幅広く採用されており、用途に応じた選択が可能です。
参考)https://www.hisaka.co.jp/phe/workbook/first_period09.html
熱交換器の定期的なメンテナンスは、性能維持と予期せぬトラブルを防ぐために不可欠です。定期点検では、プレートやチューブの損傷・劣化、シール材やガスケットの劣化、表面の異物付着や目詰まり、流体漏れの有無を確認することが重要です。
参考)https://newji.ai/procurement-purchasing/key-points-for-optimizing-heat-exchanger-efficiency-and-regular-maintenance-for-chemical-plant-facility-managers/
定期清掃は、汚れやスケール、バイオフィルムなどの蓄積を防ぐために必要で、これらは熱交換効率を低下させるだけでなく、流体圧力や流量を変化させる原因となります。専門の化学薬品や機械を使用して、適切に清掃を実施することが求められます。
熱交換器を選定する際には、以下の項目を考慮する必要があります。清掃分解の可否、伝熱面への汚れ付着の程度、点検検査の実施可能性、漏洩リスク、流体温度差による熱伸縮、統括伝熱係数、機器費などです。多管式は熱交換効率が△でサイズが大きくメンテナンスが困難ですが、高温高圧に対応できます。プレート式は熱交換効率が○でコンパクト、メンテナンスも容易ですが、高温高圧には不向きです。スパイラル式は内部が汚れにくいものの、コストが高くメンテナンス性が悪いという特徴があります。用途と条件に合わせた適切な選定が、長期的な安定稼働とコスト削減につながります。
参考)https://www.t-k-k.jp/blog/blog/176048
様々な熱交換器の種類と分類について詳しく解説 - D-MONO WEB
熱交換器の種類別比較表と特徴 - Chem-Fac
熱交換器の仕組みと用途 - アルファ・ラバル