プラ束の使い方と施工方法
プラ束の基本情報
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プラ束とは
床組みを支える樹脂製の床束。木製や鋼製に比べて腐食やシロアリに強く、調整が容易です。
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主な用途
住宅の床下構造やウッドデッキの基礎として使用され、大引きを支え床の水平を保ちます。
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メリット
高さ調整が簡単、施工が容易、耐久性に優れ、工期短縮にも貢献します。
プラ束の基本構造と種類について
プラ束(樹脂束)は、床組みにおいて大引きを支える重要な部材です。従来は木材が使われていましたが、腐食やシロアリの被害、経年による収縮などの問題から、現在では樹脂製や鋼製の床束が主流となっています。
プラ束の基本構造は、コンクリート基礎に固定する底部と、大引きを受ける上部、そして高さを調整できる中間部分から成り立っています。形状によって主に以下の種類があります:
- T型プラ束:根太レス工法に適しており、大引きと土台を格子状に組む場合に使用します。断熱材を大引間に入れる際にも適しています。
- L型プラ束:根太工法で使用され、反転した大引きに対してL型の受け部分が互い違いになるように施工します。大引受側面に釘穴があり、片側2本ずつ釘やビスで固定できるため、安定性に優れています。
- フラット型プラ束:様々な工法に対応できる汎用性の高いタイプです。
プラ束の高さは調整可能で、一般的に20mmから300mm程度まで対応しています。特に低床向けの極狭空間用(20-115mm)のものもあり、状況に応じて選べます。
プラ束の正しい施工方法と接着剤の使い方
プラ束の施工は比較的簡単ですが、正確な作業が求められます。以下に基本的な施工手順を解説します。
1. 施工前の準備
- 床下のコンクリート面を清掃し、ゴミや油分を取り除きます
- 施工図面に従って、プラ束の配置位置を決めます(一般的に900mmピッチが標準)
- 必要な工具(水平器、ドライバー、接着剤など)を用意します
2. プラ束の設置と固定
- コンクリート面にプラ束を配置します
- 専用の接着剤(つかボンドWなど)をプラ束の底面に十分に塗布します
- しっかりと圧着させ、接着剤が完全に乾くまで養生します(24時間以上が理想的)
接着剤の使用量の目安:
- 城東テクノ製「つかボンドW」(1kg入/袋)の場合、ゆかづかは約20個/袋、その他のプラ束は約25個/袋が目安です
3. 大引きの設置と固定
- プラ束の上に大引きを設置します
- 水平器を使って水平を確認しながら、プラ束の高さを調整します
- 大引きとプラ束を釘やビスで固定します(L型プラ束の場合、片側2本ずつ)
4. 根太の設置
- 大引きの上に根太を等間隔に配置します
- 根太と大引きをビスで固定します
施工時の注意点:
- プラ束は垂直に取り付けてください
- 接着剤が完全に乾くまで荷重をかけないようにしましょう
- 水平は何度も確認し、完成後のズレを防ぎましょう
- 適切なビス(3.8mm~8.0mmの太さでプラ束の台座を貫通する長さ)を使用しましょう
プラ束と鋼製束・木製束の違いと選び方
床束には主に「プラ束(樹脂製)」「鋼製束」「木製束」の3種類があり、それぞれに特徴があります。適切な選択をするために、それらの違いと選び方のポイントを解説します。
【材質による違いの比較】
特徴 |
プラ束(樹脂製) |
鋼製束 |
木製束 |
耐久性 |
防腐性◎ 防蟻性◎ 耐候性◎ |
防腐性◎ 防蟻性◎ 耐候性〇 |
防腐処理が必須 |
高さ調整 |
簡単(回転式) |
簡単(ターンバックル式) |
困難(カット加工が必要) |
施工の難易度 |
簡単 |
簡単 |
加工が大変 |
価格 |
中程度 |
比較的安価 |
木材の品質による |
重量 |
軽い |
重い |
中程度 |
見た目 |
プラスチック感あり |
無機質 |
自然な風合い |
【選び方のポイント】
- 設置環境に合わせた選択
- 屋内用:どのタイプも使用可能ですが、プラ束は紫外線に弱いため注意
- 屋外用(ウッドデッキなど):耐候性の高い鋼製束か、屋外用に特化したプラ束
- 湿気の多い場所:木製束は避け、プラ束か鋼製束を選択
- 床の高さに応じた選択
- 低床(20-115mm):低床用プラ束
- 標準的な高さ(100-300mm):一般的なプラ束や鋼製束
- 高床(300mm以上):高さ調整範囲の広い鋼製束
- 工法に応じた選択
- 根太工法:L型プラ束が適している
- 根太レス工法:T型プラ束が適している
- DIYか専門業者施工か
- DIY初心者:プラ束(施工が最も簡単)
- DIY上級者:どのタイプも対応可能
- 専門業者施工:現場の状況に応じて最適なものを選択
それぞれのメリット・デメリットを理解し、設置環境や予算、工法に合わせて最適な床束を選びましょう。
プラ束を使用する際の荷重計算と配置間隔
プラ束を使用する際には、適切な荷重計算と配置間隔を考慮することが重要です。これにより、床の強度と安全性を確保できます。
【基本的な配置間隔】
一般的なプラ束の配置間隔は以下の通りです:
- 住宅の床下:900mmピッチが標準
- ウッドデッキ:600mmピッチが推奨
- 特殊な用途(重量物を置く場所など):450mm以下のピッチ
ただし、これらは目安であり、実際には使用する大引きや根太の強度、床材の種類、想定される荷重などによって適切な間隔が変わります。
【荷重計算の基本】
プラ束の荷重計算には以下の要素を考慮します:
- 固定荷重:床材、大引き、根太などの構造材自体の重量
- 積載荷重:人や家具など、床に載る可能性のあるものの重量
- 集中荷重:ピアノなどの特に重い物品が置かれる場合の重量
一般的な住宅の場合、床の積載荷重は180kg/㎡程度と想定されます。この荷重を安全に支えるためには、適切な数のプラ束を配置する必要があります。
【計算例】
3m×4mの床を支えるプラ束の必要数を計算する場合:
- 床面積:12㎡
- 想定積載荷重:180kg/㎡
- 総荷重:12㎡×180kg/㎡=2,160kg
プラ束1個あたりの許容荷重が300kgの場合、必要な本数は:
2,160kg÷300kg=7.2本→安全率を考慮して8本以上
ただし、均等に荷重を分散させるためには、900mmピッチで配置すると:
3m÷0.9m=3.33→4列
4m÷0.9m=4.44→5列
合計:4×5=20本が必要となります。
特殊な荷重がかかる場合(ピアノなど)は、その部分のプラ束を増やすなどの対応が必要です。メーカーの仕様書や専門家のアドバイスを参考にしましょう。
プラ束のDIY活用法とウッドデッキへの応用
プラ束はDIYでも扱いやすく、特にウッドデッキの施工において重宝されます。ここでは、DIYでのプラ束活用法とウッドデッキへの応用について解説します。
【DIYでのプラ束活用のメリット】
- 施工の簡便さ:専門的な技術がなくても比較的簡単に施工できます
- 工期の短縮:木製束のように加工する必要がなく、作業時間を大幅に短縮できます
- 調整の容易さ:高さ調整が簡単で、水平を取りやすいです
- 耐久性:腐食やシロアリの心配がなく、長期間使用できます
【ウッドデッキ施工へのプラ束応用】
ウッドデッキにプラ束(マルチポスト)を使用する場合の基本的な施工手順:
- 設計と準備
- デッキの大きさと形状を決定します
- 必要な材料(プラ束、大引き、根太、床材など)を計算して用意します
- 地面がコンクリートであることを確認します(土の場合は束石などの基礎が必要)
- プラ束の設置
- 設計図に基づいて600mmピッチでプラ束を配置します
- 接着剤を使ってコンクリート面にプラ束を固定します
- 完全に乾くまで24時間以上養生します
- 大引きと根太の設置
- プラ束の上に大引きを設置し、水平を確認しながら高さを調整します
- 大引きとプラ束をビスで固定します(1箇所につき2本以上)
- 大引きの上に根太を等間隔に配置し、ビスで固定します
- 床材の設置
- 根太の上に床材を配置し、ビスで固定します
- 端部の処理や仕上げを行います
【DIY時の注意点】
- プラ束は屋外で使用する場合、直射日光による劣化を考慮する必要があります
- 接着剤は完全に乾くまで養生することが重要です
- 水平は何度も確認し、完成後のズレを防ぎましょう
- 荷重計算を行い、適切な間隔でプラ束を配置しましょう
- ウッドデッキの場合、雨水の排水を考慮した設計が重要です
DIYでウッドデッキを作る際には、シミュレーターを活用して必要な材料を計算すると便利です。また、プラ束の特性を理解し、適切に使用することで、耐久性の高い美しいウッドデッキを作ることができます。
プラ束のメンテナンスと長期使用のポイント
プラ束は耐久性に優れていますが、適切なメンテナンスを行うことで、より長期間にわたって安全に使用することができます。ここでは、プラ束のメンテナンス方法と長期使用のためのポイントを解説します。
【定期的な点検項目】
- 接着部分の確認
- コンクリート面とプラ束の接着状態を確認します
- 浮きや剥がれがある場合は、再接着が必要です
- 固定部分の確認
- プラ束と大引きを固定しているビスや釘の緩みを確認します
- 緩んでいる場合は、増し締めや追加固定を行います
- 水平の確認
- 床の水平状態を確認し、傾きがある場合はプラ束の高さを再調整します
- 水平器を使って複数箇所で測定するとよいでしょう
- プラ束本体の状態確認
- ひび割れや変形がないか確認します
- 屋外で使用している場合は、紫外線による劣化や変色を確認します
【長期使用のためのポイント】
- 適切な荷重管理
- プラ束の許容荷重を超える重量物を置かないようにします
- 特に重い家具やピアノなどを置く場合は、その部分のプラ束を増やすなどの対策を行います
- 湿気対策
- 床下の湿気を適切に管理し、結露を防ぎます
- 床下換気を確保し、カビの発生を防止します
- 紫外線対策(屋外使用の場合)
- 直射日光が当たる場所では、紫外線による劣化を防ぐために遮光対策を検討します
- 屋外用に特化したプラ束を選択します
- 床鳴り対策
- 床鳴りが発生した場合は、プラ束と大引きの固定部分を確認します
- 必要に応じて追加のビス止めや固定材の挿入を行います
【トラブル発生時の対応】
- 床の沈み:プラ束の高さ調整機能を使って再調整します
- 床鳴り:固定部分の緩みを確認し、増し締めや追加固定を行います
- プラ束の破損:破損したプラ束は交換が必要です。同じ高さのものに交換しましょう
プラ束は基本的にメンテナンスフリーですが、定期的な点検を行うことで、床の安全性と快適性を長期間維持することができます。特に築年数が経過した住宅では、リフォームの際にプラ束の状態を確認することをおすすめします。