ローラーチェーン規格JISの基準値と選定法

ローラーチェーン規格JISの基準値と選定法

記事内に広告を含む場合があります。

ローラーチェーン規格JISの基準値と選定法

ローラーチェーン規格JISの基準値
⚙️
JIS B1801規格の概要

伝動用ローラチェーンの寸法、強度、品質を定める日本の工業規格

📊
標準寸法と許容張力

チェーンサイズ毎の詳細な寸法規格と最大許容張力値

🔍
選定指針と試験方法

JIS B1810による選定方法と破断強度測定の実施基準

ローラーチェーンJIS B1801規格の基本構造

ローラーチェーンJIS規格は、1952年12月に日本工業規格JIS B1801号として制定され、その後改正を重ねて現在に至っています。この規格は一般の伝動に用いるショートピッチローラチェーン及びブシュチェーンについて規定しており、建築現場や産業機械で広く使用される伝動装置の基盤となっています。
ローラーチェーンは5種類の部品から構成されています:

  • 内リンクプレート
  • 外リンクプレート
  • ピン
  • ブッシュ
  • ローラー

JIS規格では、これらすべての部品について詳細な寸法と品質基準が定められており、互換性と安全性を確保しています。特に建築業界では、クレーンやホイスト、コンベヤなど重要な機械設備でローラーチェーンが使用されるため、規格への適合は安全性確保の観点から極めて重要です。

 

ローラーチェーン規格JISの標準寸法表

JIS B1801規格では、チェーンサイズごとに詳細な寸法が規定されています。以下は主要な標準ローラーチェーンの寸法と許容張力の一覧です:

チェーンサイズ ピッチ(mm) ローラー外径(mm) 内幅(mm) 許容張力(kN) 許容張力(kgf)
RS25 6.35 3.30 3.18 0.64 65
RS35 9.525 5.08 4.78 1.52 155
RS40 12.7 7.92 7.95 2.65 270
RS50 15.875 10.16 9.53 4.31 440
RS60 19.05 11.91 12.7 6.28 640
RS80 25.4 15.88 15.88 10.7 1090

これらの数値は設計段階での選定の基準となり、負荷計算や安全率の設定に不可欠です。建築現場でよく使用されるRS40からRS80サイズは、中型から大型の建設機械に適用されています。

 

ローラーチェーン規格JISの破断強度測定基準

JIS規格では破断強度の測定方法も厳格に定められています。測定は以下の条件で実施されます:
測定条件 📏

  • 有効部分が5リンク以上のローラーチェーンを使用
  • 両端をつかみ装置に取付け
  • 各リンクにねじれ、曲げなどの応力が生じないよう配慮
  • 破断に至るまで徐々に引張り、最大荷重を測定

破断荷重の基準値 💪
ISO 606とJIS B1801で規定される標準的な引張強度は以下の通りです:

チェーンサイズ 25 35 40 50 60 80 100 120 140
引張強度(kN) 3.5 7.9 13.9 21.8 31.3 55.6 87.0 125.0 170.0

実際の測定では、多くのメーカーがこれらの基準値を上回る性能を示しており、品質管理の向上が確認できます。

 

ローラーチェーン規格JIS選定指針の実践的運用

JIS B1810:2024「伝動用ローラチェーンの選定指針」は、適切なチェーン選定のための具体的な方法を規定しています。選定時に考慮すべき主要な要素は以下の通りです:
基本選定パラメータ

  • 伝達しようとする動力(kW)
  • 補正動力値
  • 駆動軸・従動軸の回転数(r/min)
  • 軸径及びスプロケットボス径
  • 軸間の速比
  • 軸間距離

選定方法の種類 🎯

  1. 伝動能力表による選定:駆動側小スプロケットの歯数と回転数から可能な伝動能力を算出
  2. 簡易選定表による選定:回転数と必要伝動能力から直接選定
  3. 一般選定方法:詳細な計算による総合的な選定
  4. 低速選定法:チェーン速度50m/min以下の場合の専用選定法

建築現場では、使用環境の厳しさを考慮して安全率を高めに設定することが重要で、通常の産業機械より1.5〜2倍の安全率を採用することが推奨されます。

 

ローラーチェーン規格JISの環境対応型特殊仕様

建築現場では、一般的なスチール製チェーンでは対応困難な環境条件が存在します。JIS規格に準拠した環境対応型チェーンには以下の種類があります:
ステンレス製チェーン(SS) 🏗️

  • 全部品にSUS304ステンレス鋼を使用
  • 使用温度範囲:-20℃〜400℃
  • 耐食性・美観性に優れる
  • 建築現場の外装機械や海岸地域での使用に適用

表面処理チェーン 🛡️

  • ラストップ(N):特殊ニッケルメッキ処理
  • DCコート(DC):特殊皮膜の焼付処理、銀色がかった白色
  • BCコート(BC):機械的特殊表面処理、濃い灰色、RoHS指令対応
  • DGコート(DG):特殊コート+トップコート処理、RoHS指令対応

無給油形チェーン 🔧
建築現場での給油が困難な箇所や、給油を避けたい環境で使用される特殊なチェーンです。

  • NLタイプ:ローラ付きでスムーズな噛み合い
  • SLタイプ:厚肉焼結ブッシュ採用、潤滑油を多く含浸
  • 使用速度制限:150m/min以下
  • 使用温度範囲:-10℃〜+150℃

これらの特殊仕様チェーンは、建築現場の過酷な環境条件下でも安定した性能を発揮し、メンテナンスコストの削減にも貢献します。適切な仕様選択により、建設プロジェクトの安全性と効率性を大幅に向上させることが可能です。