
ローラチェーンの規格化は、世界各国で異なる経緯を辿っています。現在、主要な規格として、アメリカ中心のANSI規格、イギリスのBS規格、ドイツのDIN規格の3つの流れが存在します。
日本では、ANSI規格に準拠する形で規格化が進められました。1942年に臨JES第324号として最初に規格化され、数回の改正を経て、1980年にJIS B 1801として統一規格が制定されています。この規格統一により、建築業界においても部品の互換性と品質保証が確立されました。
⚠️ 規格による寸法差に注意
また、スプロケットの規格化は遅れ、1962年にJIS B 1802として制定されました。その後、JIS B 1803(ダブルピッチチェーン)、JIS B 1804(リーフチェーン)など、用途別の細分化された規格も整備されています。
建築機械におけるローラチェーンの選定では、ピッチと許容張力が最重要パラメータとなります。JIS規格のRSチェーンでは、以下の標準値が設定されています:
チェーンサイズ | ピッチ | ローラー外径 | 内幅 | 許容張力 |
---|---|---|---|---|
RS40 | 12.7mm | 7.92mm | 7.95mm | 2.65kN (270kgf) |
RS50 | 15.875mm | 10.16mm | 9.53mm | 4.31kN (440kgf) |
RS60 | 19.05mm | 11.91mm | 12.7mm | 6.28kN (640kgf) |
RS80 | 25.4mm | 15.88mm | 15.88mm | 10.7kN (1090kgf) |
✅ 選定のポイント
建築機械では、RS60以上のサイズが多用される傾向にあります。これは、重機の油圧ポンプやコンベヤー駆動部での高負荷条件に対応するためです。
強力型ローラチェーンは、標準型よりも板厚を増し、強靭鋼製ピンを採用することで、引張強度と疲労強度を大幅に向上させた製品です。建築現場での使用条件を考慮すると、この強力型の特性が非常に重要になります。
🔧 強力型の主要特徴
建築機械における具体的な応用例として、製鉄所の炉開閉装置、ドローベンチ、土木建設機械などで、きわめて大きな力や衝撃荷重のかかる動力伝動部に使用されています。
⚡ 建築現場での実用メリット
特にクレーンやコンクリートミキサーなどの建築機械では、不規則な負荷変動が発生するため、強力型チェーンの採用により、突発的な機械停止リスクを大幅に軽減できます。
建築現場でのローラチェーン交換作業では、継手リンクの選択が作業効率と安全性を大きく左右します。継手リンクには主に4つのタイプがあり、それぞれ異なる特性を持っています。
🔗 継手リンクの種類と特徴
クリップ形(SPJ)
割ピン形(SCJ/DCJ)
マスターリンク形(MLJ)
スクリュー形(SLJ)
🏗️ 建築現場での選択指針
建築機械の稼働率を重視する現場では、マスターリンク形またはスクリュー形の採用により、突発的な継手部破損を防止できます。特にタワークレーンなどの重要設備では、安全係数を考慮した継手選択が必要不可欠です。
建築プロジェクトにおける機械の稼働率向上には、適正規格チェーンの選定と計画的な予防保全が重要な成功要素となります。従来の事後保全から予防保全への移行により、プロジェクト遅延リスクを大幅に軽減できます。
📊 規格適合による保全効果
建築機械別の最適規格選択
機械種別 | 推奨規格 | 交換周期目安 |
---|---|---|
タワークレーン | RS100~160(強力型) | 3,000時間 |
コンクリートミキサー | RS60~80(強力型) | 2,000時間 |
搬送コンベヤ | RS40~60(標準型) | 1,500時間 |
🔍 予防保全の先進事例
響灘エネルギーパーク合同会社では、木質ペレット・石炭搬送用コンベヤにゼクサス製チェーンを採用し、計画的な保全により年間稼働率98%以上を維持しています。この事例は、適正規格選択による保全効率化の典型例です。
また、農協サイロ株式会社の第三次増設では、ケースコンベヤチェーンとローラチェーンの一括納入により、異なる規格混在による管理コストを30%削減しています。
⚠️ 規格統一による管理効率化
建築現場では複数のメーカー機械が混在するため、可能な限りJIS規格準拠製品で統一することにより、部品在庫管理と作業員教育の効率化が図れます。特に大規模建築プロジェクトでは、この統一効果が顕著に現れます。