酸化鉄 叩くと広がる 金属性質と建築劣化対策

酸化鉄 叩くと広がる 金属性質と建築劣化対策

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酸化鉄 叩くと広がる 金属性質

💡 この記事で分かること
🔨
金属鉄の展性について

鉄は叩くと薄く広がる展性を持つが、酸化鉄になると性質が変化する

⚠️
酸化による劣化リスク

酸化鉄は体積が増加し、周囲への伝染や構造強度の低下を引き起こす

🏗️
建築物の適切な対策

5年周期の塗装メンテナンスで錆の進行を防ぎ資産価値を維持できる

酸化鉄と金属鉄の叩くと広がる性質の違い

 

金属である鉄は、叩くと薄く広がる「展性」という特性を持っています。この性質は金属に共通する重要な特徴の一つであり、金属原子が規則正しく配列した結晶構造の中で自由電子が存在することで実現されます。
参考)https://chuugakurika.com/2018/05/13/post-2506/

展性は圧縮応力に対する変形能力を示すもので、引っ張る力で伸びる「延性」とは区別されます。金属を叩いて薄く広げる加工方法は圧延と呼ばれ、板金製造や建築部材の製造に広く利用されています。
参考)https://kdmfab.com/ja/%E5%BB%B6%E6%80%A7%E3%81%A8%E5%8F%AF%E9%8D%9B%E6%80%A7/

しかし、鉄が酸化して酸化鉄になると、この展性は失われてしまいます。酸化鉄は金属結合を持たない化合物であり、叩いても広がらず、むしろ脆くなって崩れやすくなります。さらに酸化鉄は元の鉄よりも体積が増加する性質があり、残っている塗膜を押し上げて剥離を進行させてしまいます。
参考)https://welbe-home.com/knowledge/rust/

酸化鉄の劣化メカニズムと塗装への影響

鉄が酸化して錆となる現象は、大気中の酸素と水分が鉄と反応することで起こります。建物外部に使用されている鉄製部材は常にこのリスクにさらされており、特に「赤錆」と呼ばれる酸化鉄は素材の腐食を進行させる働きを持ちます。
参考)https://owners.sumaity.com/cat_management/press_932/

塗装表面が紫外線や風雨によって劣化すると、塗膜に微細な凹凸が生じて艶が失われます。この段階では目に見えにくいものの、塗膜組織の破壊が始まっているサインです。さらに劣化が進むと色褪せやチョーキング現象が発生し、塗膜の防水性能が低下します。
参考)https://www.hikohome.jp/blog/detail1139/

酸素と鉄が結合して酸化鉄へと変化すると、体積が増大して残存する塗膜を押し上げるかたちになり、剥離がどんどん進行していきます。一度腐食が生じた鉄は元に戻ることがなく、放置すれば朽ち果てるのを待つしかありません。​

酸化鉄が建築物に与える深刻なダメージ

酸化鉄による劣化は単に見た目の問題にとどまりません。錆びた鉄部の表面にある酸化鉄は雨にさらされると流れ出し、周辺のまだ健全な部分にも付着して腐食を広げてしまいます。​
酸化鉄を含んだ雨水は鉄以外の部材にも付着するため、外壁などの表面にも錆による汚れが付着します。この汚れは簡単に落とすことが難しく、美観を回復するには追加の塗装が必要となり、予定外の出費を強いられることになります。​
さらに深刻なのは構造的な安全性の低下です。錆が進行すると金属の強度が著しく低下し、穴あきやひび割れなどの深刻なダメージが発生します。階段の手摺や鉄骨部材などは、腐食が進むと触っただけでぼろぼろと崩れることもあり、転落事故などの重大なリスクにつながります。
参考)https://shintoakogyo.co.jp/column/posts/146129/

酸化鉄の進行を防ぐ塗装メンテナンス周期

鉄部塗装の耐久年数は約5年とされており、塗膜はこの期間で劣化が始まります。国土交通省のガイドラインでも鉄部塗装の目安周期をおおむね5~7年と示していますが、実際には建物の立地環境や部位の条件によって劣化スピードは異なります。
参考)https://smart-shuzen.jp/media/sp9pgjder0c

塗装の劣化状態は5つのレベルで判断できます。レベル1は艶がなくなる段階、レベル2は色褪せが目立つ段階、レベル3はチョーキング現象が起こる段階、レベル4はひび割れが目立つ段階、そしてレベル5は錆や剥がれが目立ち他への伝染が起こる段階です。​
チョーキング現象が見られるようになったら、再塗装のタイミングと認識する必要があります。この段階では塗膜は劣化して防水性も期待できず、その上に重ねて塗装することもできないため、外壁を洗浄したうえで塗装を行う必要があります。​

酸化鉄対策としての効果的な塗装工程

鉄部塗装を行う際の最も重要な工程は「ケレン作業」です。これは剥がれた古い塗膜、汚れ、錆を除去する作業であり、鉄部塗装の成否を左右する重要なプロセスとなります。錆の状態に合わせてやすりやディスクサンダーなどの道具で表面をきれいにし、塗装が密着する状態にします。
参考)https://www.sunwall.co.jp/column/2005/

ケレン作業の後には錆止め塗装を下塗りとして行います。鉄部の表面に錆止め塗装を施すことで塗膜を形成し、鉄が空気に触れることを防いで錆の発生を抑制します。錆止め材には様々な種類があり、特定の環境や用途に適した耐候性耐腐食性を持つ塗料を選ぶことが重要です。
参考)https://ssk-tosou.net/1261/

最後に上塗り材を二回塗装します。二回塗装することでムラをなくし、塗膜の厚みが増して劣化要因である紫外線などからより強固に保護することができます。外部階段の場合は一般的に10~20万円、ベランダ・バルコニーの手摺はメートルあたり1,000~2,000円が塗装費用の目安となります。​
不動産従事者として建物の鉄部劣化を見逃さず、適切なタイミングでメンテナンスを実施することが、資産価値の維持と入居者の安全確保につながります。酸化鉄による劣化は進行すると修繕費用が大幅に増加するため、早期発見・早期対応が経済的にも合理的な選択となります。

 

鉄部塗装の劣化レベル判断基準と具体的な塗装工程についての詳細情報
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