作用温度とグローブ温度の違い|平均放射温度・気流速度・快適性評価

作用温度とグローブ温度の違い|平均放射温度・気流速度・快適性評価

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作用温度とグローブ温度

作用温度とグローブ温度の関係
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作用温度の定義

気温、放射温度、気流速度の3要素を総合した温熱指標で、体感温度に近い値を示します

グローブ温度計の測定

直径15cmの黒球に温度計を内蔵した測定器で、周囲からの熱放射と気流の影響を考慮した温度を測定します

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両者の関係性

気流が静穏な状態では、作用温度とグローブ温度はほぼ一致するため、実務では同じものとして扱えます

作用温度の基本概念と構成要素

 

 

 

作用温度(OT:Operative Temperature)は、室内の温熱環境を評価する際に用いられる重要な指標です。この指標は気温、放射温度、気流速度という3つの要素を総合的に考慮して算出されます。一般的な室温計が示す気温だけでは、人が実際に感じる暖かさや涼しさを正確に表現できません。なぜなら、人体は周囲の空気への対流による放熱と、床・壁・天井への遠赤外線による放射放熱の両方を行っているためです。冬期の室内では、放熱量のおよそ半分が空気への対流、残り半分が放射によるものとされています。
参考)http://kentikushi-blog.tac-school.co.jp/archives/36143534.html

作用温度は、気温と平均放射温度(MRT)の加重平均として定義され、簡易的には両者の平均値として算出できます。計算式で表すと「作用温度 = (気温 + 平均放射温度) ÷ 2」となります。この指標は主に発汗の影響が小さい環境下、つまり暖房時における熱環境の指標として用いられることが多いです。作用温度が体感温度に近い値を示すため、建築物の快適性評価において非常に有用な指標となっています。
参考)https://tomatoneko.com/kenchiku/kankyo/on-netu2/

グローブ温度計による測定方法

グローブ温度計は、直径15cmの薄い銅板製で表面に黒のつや消し塗装が施された球の中心に温度計を内蔵した測定器です。この黒球温度計とも呼ばれる測定器は、周囲からの熱輻射による影響を観測するために用いられます。グローブ温度計で測定される温度がグローブ温度であり、気温、気流、放射の3要素を総合的に表す人体感覚に近い温度として知られています。JIS規格では150mm径が定められていますが、一般的に75mm径のものも使用されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%96%E6%B8%A9%E5%BA%A6

グローブ温度計の最大の特徴は、気流が静穏な状態では作用温度とほぼ一致する点です。この特性により、建築現場や室内環境の評価において、作用温度とグローブ温度は実質的に同じものとして扱われることが多いです。ただし、風速が速いほどグローブ温度計の示度は気温に近づくため、正確な測定のためには微風速域で使用することが望ましいとされています。グローブ温度計は、WBGT(暑さ指数)の算出にも使用され、熱中症対策として建設現場などの屋外空間でも多く活用されています。
参考)https://www.ecoq21.jp/latest-article/no126/no126.pdf

作用温度とグローブ温度の計算・換算関係

作用温度は理論的には気温(ta)と平均放射温度(MRT)を対流熱伝達率と放射熱伝達率で加重平均して求められますが、実務では簡易的に両者の単純平均として算出されます。具体的な計算式は「OT = (hc × ta + hr × tr) / (hc + hr)」となり、hcが対流熱伝達率、hrが放射熱伝達率、trが平均放射温度を表します。一方、平均放射温度(MRT)は、グローブ温度、空気温度、気流速度から求めることができます。
参考)https://lab.a-hikari.com/about-thermal-environment/

興味深いことに、作用温度とグローブ温度は気流が静穏な室内環境ではほぼ等しい値を示します。この関係性から、実務では「体感温度 = 作用温度 = グローブ温度」という等式が成り立つとされています。例えば、室温が25℃で平均放射温度が12℃の場合、作用温度は(25+12)÷2=18.5℃となり、これがほぼ体感温度に相当します。この簡便な関係性により、グローブ温度を測定することで、作用温度を直接推定できるという実務上の利点があります。
参考)https://www.taisei.co.jp/tact/tr/2023/paper/A056_037.pdf

作用温度が不動産評価に与える影響

作用温度は建築物の快適性評価において中心的な役割を果たします。低断熱な住宅では室内側の放射温度が低いため、空気温度を高く設定する必要がありますが、エアコンからの高温空気は上方に溜まり、顔に強い乾燥感が生じる一方で足元は寒いままになってしまいます。これに対して高断熱住宅では放射温度が高くなるため、空気温度を上げなくても快適な作用温度を維持できます。床暖房との組み合わせにより、足元から暖かく温度ムラや乾燥感も少ない快適で健康な空間が実現できます。
参考)https://takajyu.jp/blog/4309/

不動産の価値評価において、作用温度による快適性評価は重要な指標となりつつあります。冬場の理想的な温熱環境として、足元(床の表面温度)を26℃、頭部(気温)を21~22℃にすることで、空間全体を24℃に設定しなくても十分に暖かく快適な状態を保てることが実験で明らかになっています。これにより、エネルギー効率も向上し電気代の削減につながるため、物件の経済的価値も高まります。CASBEE-ウェルネス不動産などの評価制度においても、温熱環境の質は評価項目として重視されており、作用温度の概念は建築物の総合的な環境性能評価に不可欠な要素となっています。
参考)https://www.asahi-kasei.co.jp/asu/learning/article048/index.html/

作用温度測定における不動産従事者の実践的注意点

作用温度の測定において最も注意すべき点は、湿度が考慮されていないという特性です。作用温度は気温、気流、放射の3要素のみを対象としており、湿度の影響は含まれていません。そのため、湿度が快適性に大きく影響する蒸暑環境の評価には、PMV(予想平均温令感申告)やSET*(標準新有効温度)など、温熱環境6要素を考慮した総合指標を使用する方が適切です。また、グローブ温度計は時定数が大きいため、環境が変化しやすい空間での測定では応答性の良い小型グローブ温度計の使用が推奨されます。
参考)https://emicocolo.hatenablog.com/entry/2017/06/23/105717

実務における測定では、赤外線センサを併用した空間温度の推定手法も開発されています。空調用センサは天井内の温度を計測するため、開口率など条件が異なる複数の室の空間温度を正確に把握できない場合がありますが、空間毎に配置される赤外線センサはグローブ温度との相関が確認されており、居住域の作用温度推定において有用な情報となります。建設現場においては、WBGT値(湿球黒球温度)の測定にグローブ温度計が使用され、熱中症対策の指標として活用されています。WBGT値は気温、湿度、輻射熱から算出される暑さ指数であり、屋外作業時の安全管理に不可欠な指標となっています。
参考)https://ec.midori-anzen.com/shop/e/ea054_010/

作用温度とグローブ温度の関係について建築士試験の観点から詳しく解説した参考資料
ヒートショックと作用温度・グローブ温度の関係を解説した住宅環境の専門資料
赤外線センサを用いた作用温度の推定・制御手法に関する建設会社の技術研究論文

 

 

 

 


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