センター穴規格・形状・寸法・角度・ドリル選定基準

センター穴規格・形状・寸法・角度・ドリル選定基準

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センター穴規格の基本知識と選定基準

センター穴規格の全体概要
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現行JIS規格体系

ISO規格と共通化されたJIS B 1011-1987による統一規格

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形式分類システム

A形・B形・C形・R形の4タイプによる用途別分類

角度規格種類

60°・75°・90°の標準角度による精度管理体系

センター穴は機械加工において円筒形材料の軸中心に設けられる基準穴で、JIS B 1011-1987により規格化されています。この規格は2019年の法改正により日本産業規格(JIS)に名称変更されましたが、内容は継続されています。
現行のセンター穴規格はISO規格と完全に共通化されており、従来の「1.2×60°」「3×60°」などの旧JIS規格から、「A形1.25×60°」「A形3.15×60°」などの新規格に移行しています。これにより国際的な互換性が確保され、グローバルな機械加工において統一された基準が適用できるようになりました。
センター穴の主要な形式分類は以下の通りです。

  • A形(標準タイプ):面取り部がなく、最も一般的に使用される形状
  • B形(保護タイプ):120°の面取り部を持ち、センター穴周りを保護
  • C形(座ぐりタイプ):座ぐり形状の面取り部でより強固な保護機能
  • R形(精密タイプ):R形状で線接触となり、小物の精密加工に適用

角度仕様については、60°が最も標準的で、75°と90°も用途に応じて使用されます。ただし75°センタ穴はなるべく用いないとされています。

センター穴規格のA形基本寸法体系

A形センター穴の寸法は、呼び径(d)を基準とした詳細な寸法体系で規定されています。現行JIS B 1011-1987では、以下の寸法系列が標準化されています:
小径系列(精密加工用)

  • 呼び0.5:D=1.06mm、D1=1.6mm、l*=1mm
  • 呼び0.63:D=1.32mm、D1=2mm、l*=1.2mm
  • 呼び0.8:D=1.7mm、D1=2.5mm、l*=1.5mm

中径系列(一般加工用)

  • 呼び1:D=2.12mm、D1=3.15mm、l*=1.9mm
  • 呼び1.25:D=2.65mm、D1=4mm、l*=2.2mm
  • 呼び1.6:D=3.35mm、D1=5mm、l*=2.8mm

大径系列(重加工用)

  • 呼び2:D=4.25mm、D1=6.3mm、l*=3.3mm
  • 呼び2.5:D=5.3mm、D1=8mm、l*=4.1mm

ここでDは円錐部の大径、D1は円筒部径、l*は円筒部の最大長さを示します。これらの寸法は、センター加工時の精度確保と工具寿命の最適化を考慮して設定されています。
寸法選定の実用的指針は以下の通りです:

  • ワーク径φ5以下:センター穴φ1使用
  • ワーク径φ10以下:センター穴φ1.5使用
  • ワーク径φ10以上:センター穴φ2以上使用

大きすぎるセンター穴は加工不能や精度悪化の原因となるため、適切なサイズ選定が重要です。

センター穴規格のB形・C形保護機構の設計原理

B形とC形センター穴は、センター穴周りの保護機能を持つ特殊形状として設計されています。これらの形状は、厳しい加工環境や高精度要求に対応するために開発されました。

 

B形の保護メカニズム

  • テーパ部角度:60°(標準)
  • 面取り部角度:120°の傾斜面
  • 保護効果:バリ・カエリ除去による精度維持
  • センター挿入性:間口拡大による作業性向上
  • 外部影響防止:表面打痕からのセンター穴保護

B形の面取り部は、センター穴加工時に発生するバリやカエリを効果的に除去し、センター工具の挿入時の精度悪化を防止します。また、センター穴が材料表面から一段奥に配置されるため、外部からの機械的影響を受けにくくなります。

 

C形の座ぐり構造

  • 基本角度:60°テーパ部
  • 座ぐり形状:円筒状の凹部形成
  • 保護レベル:B形以上の強固な保護
  • 適用分野:重切削・重研削加工
  • 精度安定性:長期使用での寸法保持

C形は座ぐり形状により、B形以上の保護機能を提供し、特に重切削や連続使用環境での精度維持に優れています。

 

これらの保護形状は、加工工程の延長や工具交換頻度の削減にも貢献し、総合的な加工コスト削減効果をもたらします。

 

センター穴規格に対応するドリル選定と切削条件

センター穴加工には、JIS B 4304-2018で規格化されたセンタ穴ドリル(センタードリル)を使用します。規格対応ドリルの選定は、加工精度と効率に直結する重要な要素です。
ドリル形式の対応関係

  • A形-1、A形-2:面取り部なしの標準ドリル
  • B形-1、B形-2:120°面取り部付きドリル
  • C形-2:座ぐり形状加工用ドリル
  • R形-1、R形-2:R形状加工用特殊ドリル

標準切削条件の設定指針
炭素鋼(C<0.3%)の場合。

  • 回転数:60-70-80 min⁻¹(φ4ドリル基準)
  • 送り:0.08-0.12-0.14 mm/rev
  • クーラント:水溶性切削液推奨

炭素鋼(C>0.3%)の場合。

  • 回転数:50-60-70 min⁻¹(φ4ドリル基準)
  • 送り:0.08-0.12-0.14 mm/rev
  • クーラント:水溶性切削液必須

ドリル寸法確認項目

  • 刃先径(小径):センター穴規格との整合性
  • センター穴角:60°、75°、90°の角度精度
  • シャンク径:使用機械のチャック仕様適合
  • 全長・刃長:加工深さとの関係確認

センタードリルは剛性が高く位置決め精度に優れているため、通常のドリル加工の下穴あけ(センタリング)にも活用されています。これにより、ドリルの滑りや曲がりを防止し、高精度な穴あけ加工が実現できます。

センター穴規格の特殊用途と角度選定理論

センター穴の角度選定は、加工目的と使用するセンター工具の特性に基づいて決定されます。各角度には固有の機能的特徴があり、適切な選定が加工成果を左右します。

 

60°角度の機能的優位性

  • 最も汎用性が高く、標準的なセンター作業に最適
  • センター工具との接触圧力分布が均等
  • 工具摩耗が少なく、長期使用に適している
  • 精密加工における軸中心精度が最も安定

75°角度の限定的応用

  • JIS規格では「なるべく用いない」と規定
  • 特殊な工程間での暫定的使用に限定
  • 60°と90°の中間特性を活用する場合のみ採用
  • 標準工具の入手性に課題あり

90°角度の特殊機能

  • 面取り兼用の位置決め加工に多用
  • センター加工以外の用途拡張性
  • 工具の損傷リスクは最も低い
  • 軸中心精度は60°より劣る傾向

R形センター穴の精密加工適用

  • 線接触による接触圧力の分散化
  • 小物部品の超精密加工に特化
  • 熱変形の影響を最小化
  • 表面粗さの向上効果

角度選定の実務的判断基準。

  • 一般旋削加工:60°を標準選択
  • 切削加工:90°で工具保護優先
  • 精密研削加工:R形で接触負荷軽減
  • 面取り併用加工:90°で工程集約

これらの選定理論を理解することで、個別の加工要求に最適化されたセンター穴規格の適用が可能になります。

 

センター穴規格の品質管理と検査基準体系

センター穴の品質管理は、後工程の加工精度に直接影響するため、厳格な検査基準が設定されています。JIS規格では、寸法精度だけでなく、形状精度や表面品質についても詳細な管理基準を規定しています。

 

寸法検査の管理項目

  • 円錐部角度:±30'以内の角度精度維持
  • 円筒部径:公差等級IT7相当の精度管理
  • 深さ寸法:±0.1mmの深さ精度確保
  • 真円度:0.005mm以下の形状精度要求

表面品質の評価基準

  • 表面粗さ:Ra 1.6μm以下(円錐部)
  • 表面粗さ:Ra 3.2μm以下(円筒部)
  • バリ高さ:0.05mm以下の除去基準
  • エッジ品質:R0.1以下の微細面取り

検査方法の標準化

  • 角度測定:万能角度計またはプロファイル投影機使用
  • 寸法測定:マイクロメータまたは三次元測定機適用
  • 表面測定:触針式表面粗さ計による定量評価
  • 真円度測定:真円度測定機による形状解析

不良品の分類と対策
形状不良の典型例。

  • 角度不良:ドリル摩耗による角度変化→工具交換頻度見直し
  • 寸法不良:切削条件不適正→送り・回転数の最適化
  • 表面不良:切削液不足→クーラント供給量増大

検査頻度の設定指針。

  • 量産加工:50個/回の抜き取り検査
  • 精密加工:全数検査体制の構築
  • 試作加工:初品・中間・完了時の3回検査

これらの品質管理体系により、センター穴規格の要求品質を安定的に確保し、後工程での加工精度向上に寄与できます。定期的な検査データの蓄積と分析により、加工条件の継続的改善も実現されます。