

「森林総合研究所は年収が低い」と思い込んでいると、部長クラスで年収1,170万円超という現実を見落とすことになります。
森林総合研究所(正式名称:国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)の2024年度における事務系職員の平均年収は、公式発表で 720.7万円、ボーナスは 200.1万円 です。平均年齢は44.0歳、対象職員数は488人となっています。
この数字、ピンとこない方のために比較してみましょう。国家公務員(一般職)の平均年収はおよそ680〜690万円台で推移しているため、森林総合研究所はそれをわずかに上回る水準です。建築業界の平均年収(全体では400〜500万円台)と比べると、かなり高い水準と言えます。
給与水準の目安として「ラスパイレス指数」という指標があります。これは国家公務員の給与水準を100とした場合に、各法人の水準を示す数値です。森林総合研究所のラスパイレス指数(年齢・地域勘案)は 105.5 であり、国家公務員よりも約5.5%高い給与水準にあることがわかります。つまり国より高い、ということです。
| 年度 | 平均年収 | ボーナス |
|------|---------|---------|
| 2024年度 | 720.7万円 | 200.1万円 |
| 2023年度 | 710.5万円 | 194.1万円 |
| 2022年度 | 690.5万円 | 186.0万円 |
| 2021年度 | 696.9万円 | 188.5万円 |
| 2020年度 | 702.5万円 | 189.8万円 |
5年前(2019年)の714.4万円と比較すると6.3万円の増加、10年前(2014年度)の690.5万円と比べると約30万円の増加です。緩やかながら着実に上昇しているのが特徴です。この安定感が基本です。
また、ボーナスは年間で約200万円。月給に換算すると、賞与だけで約16〜17万円/月分の収入が加算されることになります。住宅手当・扶養手当・通勤手当なども別途支給されますので、総支給額はさらに大きくなります。
参考:農林水産省による独立行政法人の給与等公表資料(公式データ)
農林水産省:独立行政法人一覧(給与公表)
「平均720万円」と聞いても、自分が何歳でいくらもらえるのかイメージしにくいものです。以下に2024年度の役職別・年齢別の具体的な数字を整理します。
| 役職 | 平均年齢 | 平均年収 | 最高年収 |
|---|---|---|---|
| 部長 | 56.9歳 | 1,170.8万円 | 1,378万円 |
| 本部課長 | 54.2歳 | 990.6万円 | 1,106.6万円 |
| 地方課長 | 53.2歳 | 926.2万円 | 1,139.9万円 |
| 課長補佐 | 51.1歳 | 795.8万円 | 1,086.7万円 |
| 係長 | 43.9歳 | 659.4万円 | 835.3万円 |
| 主任 | 34.7歳 | 498.9万円 | 771.4万円 |
| 本部係員 | 27.2歳 | 463万円 | 515.8万円 |
| 地方係員 | 26.3歳 | 424万円 | 507.8万円 |
注目すべき点が一つあります。地方勤務の係員と本部勤務の係員では、同じ「係員」でも年収に約40万円の差があります(424万円 vs 463万円)。地域手当の有無が主な原因であり、本部が置かれる神奈川・川崎などは地域手当の支給率が高いためです。地方か本部かの違いは大きいですね。
年齢別に見ると、30歳時点での推計年収は約550万円、40歳で約674万円、50歳では約767万円となっています。建築業界の施工管理職や設計職の年収水準と比較しても、40代以降は明らかに有利な水準と言えます。
モデル給与として公表されている具体例も確認しておきます。22歳・大卒初任給の年間給与は 365.2万円(月給22万円)、35歳の係長相当で 581.3万円(月給34.5万円)、50歳の課長補佐相当で 777.1万円(月給45.6万円)という水準です。
参考:森林研究・整備機構の役職員給与等公表ページ
国立研究開発法人 森林研究・整備機構:役職員の報酬・給与等の公表
初任給についても整理します。2024年11月実績として公表されている一般職員(大卒)の初任給は月給 220,000円 です。これは基本月額であり、通勤手当・住居手当などは別途支給されます。
研究職員(博士課程修了)の場合は初任給が大幅に異なります。大卒の一般職員と比較して月額約8万円ほど高い水準からのスタートとなり、概算年収ベースでおよそ400万円前後からとなります。博士号取得者は優遇されるということです。
ボーナス(賞与)は年2回支給で、年間の支給額は給与のおよそ4.5〜4.6ヶ月分が目安です。2024年度の実績では年間200.1万円、2023年度は194.1万円となっています。これは国家公務員に準拠した基準で算出されるため、景気や個人業績に左右されにくい安定した仕組みです。
口コミ情報(エン・カイシャの評判)によると、在籍21年以上の研究職の男性は年収1,000万円・賞与250万円という水準を実現しているケースもあります。年功序列的な積み上げが効く職場であることがわかります。いいことですね。
採用区分は大きく「研究職員」と「一般職員(事務・技術)」に分かれます。研究職員は論文実績などによる業績評価が加味されるため、成果を出せる人材にとっては昇給・キャリアアップの機会が広がります。一方の一般職は、勤務成績に基づく評価で昇給するルールです。
給与の数字だけでなく、実際の働き方も重要です。特に建築業界から転職・キャリアチェンジを検討する方にとって気になるポイントを整理します。
まず転勤について。森林総合研究所は北海道(札幌)、東北(盛岡)、関西(京都)、四国、九州など全国各地に支所を持っています。研究職・事務職ともに原則として全国転勤があり、数年ごとに異動するケースが少なくありません。口コミでは「定時退社を推奨されるためワークライフバランスは良いが、全国転勤が多いため家族と過ごす時間が制限される」といった声があります。厳しいところですね。
福利厚生については、公務員準拠の水準で充実しています。具体的には次のような内容が整っています。
勤務時間については、フレックスタイム制度または裁量労働制(研究職)を選択できる環境が整っており、コアタイムの設定もあります。残業時間は部署によって異なりますが、繁忙期以外は月20〜40時間程度が多いとの口コミがあります。
一つ注意点があるとすれば、給与には時間外勤務手当(残業代)が含まれていないことです。公表されている720.7万円という平均年収は残業代を除いた数字であり、残業が多い部署では実際の手取りがこれより高くなるケースもあります。
参考:OpenWorkによる森林研究・整備機構の社員クチコミ情報
OpenWork:国立研究開発法人 森林研究・整備機構の年収・給与制度
「森林の研究所なんて建築とは無縁では?」と思う方も多いでしょう。実はこれが大きな誤解です。
森林総合研究所は、CLT(直交集成板)や木質構造材の性能評価・規格策定に深く関わっています。CLTは近年、中高層木造建築物に活用される主要建材として急速に普及しており、建築基準法の改正とともに国内の建築プロジェクトへの採用事例が増加しています。こうした木材の強度基準や耐火性能の試験・研究は、森林総合研究所の木材研究部門が担っている領域です。建築と直結しているということです。
建築業従事者が森林総合研究所と接点を持てる場面は主に以下の通りです。
転職先として検討する場合、建築系の技術背景(施工管理・構造設計・材料試験の経験など)を持つ人材は、木材利用・建築技術に関連する研究補助職や技術職として評価されるケースがあります。採用は年に数回、公式サイトおよびマイナビ転職などに掲載されており、月給45万円〜(賞与年2回)という求人も確認されています。
なお、研究職として採用されるには修士・博士課程相当の学術的バックグラウンドが必要になる場合がほとんどですが、事務・技術職であれば学歴要件のハードルは下がります。建築施工の経験や木材に関する資格(木材グレーダーや木造建築士など)を持つ人材は、技術系の一般職として評価される可能性があります。
木造建築に関心のある建築業従事者にとって、この機関の研究成果を業務に活かすという視点も見逃せません。たとえば無料公開されている森林総合研究所の技術報告書・研究資料は、CLT建材の選定や仕様検討の際の根拠資料として使えます。これは使えそうです。
参考:森林総合研究所の公式ウェブサイト(研究成果・採用情報)
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 公式サイト