
塩ビ管の規格において、VP管(厚肉管)とVU管(薄肉管)は明確な寸法差を持っています。VP管は水道用硬質ポリ塩化ビニル管として、給水管に主に使用される厚肉仕様です。一方、VU管は硬質ポリ塩化ビニル管として、排水・通気などの衛生設備配管に適用されます。
VP管の特徴的な寸法規格。
VU管の寸法規格は40mm以上から規定されており、VP管と比較して薄肉設計となっています。例えば、VU50の場合、外径は60mmでVP50と同じですが、厚さは1.8mmとVP50の4.1mmに比べて大幅に薄くなっています。
この厚さの違いは、用途による圧力要件の違いから生まれています。VP管は給水圧に耐える必要があるため厚肉に、VU管は重力排水が主用途のため薄肉に設計されています。
JIS K6741:2007に基づく塩ビ管寸法表の読み方は、金属加工現場での正確な材料選定に不可欠です。寸法表には「基本寸法」「許容差」「平均外径の許容差」「厚さの最小寸法」「厚さの許容差」という5つの重要な項目があります。
基本寸法と許容差の関係。
厚さ規格の特徴。
重量規格も重要な要素で、1m当たりの質量が規定されています。例えばVP50の場合、1m当たり1.122kgとなっており、運搬や施工計画に活用できます。4m定尺管の場合は約4.5kgとなります。
JIS規格表の「概略内径」は計算値であり、実測値ではない点に注意が必要です。実際の流量計算や配管設計では、この概略内径を基準として使用します。
塩ビ管における呼び径と実際の寸法の違いは、金属加工現場でよく混乱を招く要因です。呼び径は管の識別記号であり、実際の外径や内径とは異なる数値となっています。
具体的な寸法差の例。
この現象が生じる理由は、管の規格統一の歴史的経緯にあります。呼び径は配管系統での識別を目的とした名称であり、実寸法とは別の概念として扱われています。
実務での注意点。
金属加工現場では、塩ビ管を通すための穴加工や固定金具の設計において、必ず実外径を基準とする必要があります。呼び径50mmの管だからといって50mmの穴を開けると、実際の外径60mmに対して不適合となってしまいます。
また、内径についても呼び径と必ずしも一致しません。VP100の場合は内径100mmで呼び径と一致しますが、VP50では内径51mmと若干大きくなっています。
耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管(HI管)と耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(HT管)は、特殊用途向けの規格です。基本的な寸法はVP管と同じですが、材質特性が大きく異なります。
HI管の特徴と規格。
HT管の特殊性。
これらの特殊管は、一般的なVP管・VU管と外径・厚さが同じため、既存の接続部品や固定金具がそのまま使用できる利点があります。ただし、材料コストは通常品より高く、用途を十分検討した選定が重要です。
金属加工現場での使用例。
材質選定の判断基準として、使用環境温度、衝撃の可能性、化学的影響を総合的に検討する必要があります。
金属加工現場における塩ビ管の活用は、配管用途以外にも多岐にわたります。規格を正しく理解することで、コストダウンと作業効率向上を実現できます。
配管カバーとしての活用。
治具・固定具への応用。
規格寸法を活用した設計のコツ。
実際の現場では、塩ビ管の規格統一性を利用して、異なるメーカー品でも互換性を確保できます。これにより、調達の柔軟性が向上し、在庫管理も効率化されます。
切断加工時の注意点。
金属加工現場特有の活用として、工作機械の切削液配管、エアー配管の保護管、電気配線の整理用配管などがあります。これらの用途では、VP管の寸法精度と耐久性が重要な要素となります。
また、溶接作業エリアでの使用では、耐熱性を考慮してHT管の選定を検討することも重要です。通常のVP管では60℃までの耐熱性しかないため、溶接熱の影響を受ける可能性がある箇所では適切ではありません。