指定確認検査機関と建築主事の違い|役割・資格・手数料を解説

指定確認検査機関と建築主事の違い|役割・資格・手数料を解説

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指定確認検査機関と建築主事の違い

この記事で分かること
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基本的な違い

建築主事は公務員、指定確認検査機関は民間企業という組織形態の違いと、それぞれの役割について理解できます

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審査期間と費用

確認申請の審査にかかる期間や手数料の違い、メリット・デメリットが分かります

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実務的な選択基準

建築事業者として、どちらに申請すべきかの判断基準と実務上のポイントが理解できます

指定確認検査機関と建築主事の組織形態の違い

建築確認申請を行う際、提出先として選択できるのが「建築主事」または「指定確認検査機関」です。両者の最も基本的な違いは組織形態にあり、建築主事は都道府県や市区町村に所属する「公務員」であるのに対し、指定確認検査機関は株式会社や一般財団法人などの「民間企業」です。
参考)確認申請はどこに出す?人気の申請先について|建築基準法とらの…

建築主事という名称は組織ではなく、個人の役職を指します。人口25万人以上の政令指定都市では建築主事を置くことが法律で義務付けられており、それ以外の市町村では任意で配置できます。一方、指定確認検査機関は1998年の建築基準法改正により新設された制度で、それまで特定行政庁の建築主事のみが行っていた建築確認業務を、民間でも実施できるようにしたものです。
参考)建築主事(特定行政庁)と指定確認検査機関の違いってなんなんで…

💡 ポイント

  • 建築主事:地方公共団体の公務員(役職名)
  • 指定確認検査機関:民間の株式会社や財団法人
  • 確認申請はどちらに提出しても法的効力は同じ

指定確認検査機関の確認検査員と建築主事の資格要件


建築主事になるためには、国家資格である「建築基準適合判定資格者」の検定に合格し、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。この検定の受験資格は、一級建築士であることに加えて、建築行政または確認検査機関での実務経験が2年以上必要です。合格率は30~40%程度と難易度が高い試験です。
参考)『建築主事』とは|特定行政庁における権限・必要資格を解説 href="https://kakunin-shinsei.com/secretary/" target="_blank">https://kakunin-shinsei.com/secretary/amp;…

指定確認検査機関で確認検査を担当する職員は「確認検査員」と呼ばれますが、建築主事と同様に建築基準適合判定資格者の資格が必須です。つまり、職名は異なりますが、どちらも同じ国家試験に合格した有資格者であり、検査する内容や権限に違いはありません。
参考)指定確認検査機関と第三者認証とは?


  • 建築基準適合判定資格者検定の受験には一級建築士資格が必要
  • さらに2年以上の実務経験が求められる
  • 合格者は国土交通大臣の登録を受ける
  • 公務員として任命されると「建築主事」、民間機関では「確認検査員」となる

なお、2024年の法改正により「二級建築基準適合判定資格者」が新設され、この資格で登録した者は「建築副主事」または「副確認検査員」として小規模建築物の確認検査業務を行えるようになりました。
参考)建築基準適合判定資格者 難易度と資格取得のメリット|積算の基…

指定確認検査機関と建築主事の審査期間と手数料の比較

建築確認申請の審査期間については、法律で明確な規定があります。1~3号建築物の場合は確認申請受理後35日以内、4号建築物では7日以内に確認済証を交付することが定められています。構造計算適合性判定が必要な場合は、最大70日程度かかることもあります。
参考)建築確認申請とは?不要なケースや費用、建築時の流れなどを解説…

しかし実務上、指定確認検査機関は建築主事よりも審査スピードが早い傾向にあります。これは民間企業である指定確認検査機関が、確認申請の依頼がなければ経営が成り立たないため、スケジュール調整や審査の効率化に積極的だからです。一方、建築主事は公務員であるため、確認申請の依頼がなくても給料が支払われるという組織構造の違いが影響しています。​

比較項目 建築主事 指定確認検査機関
手数料

安い(例:100㎡以下の建築物で38,000円)
参考)建築確認・中間検査・完了検査等 申請手数料/大阪府(おおさか…

高い(建築主事より高額設定)​
審査期間 法定期間内(35日~70日)​ 法定期間の定めなし(比較的早い)​
業務区域 所在地の建築地のみ​ 業務エリアの建築地​
融通性 標準的 比較的柔軟な対応​

手数料については、基本的に建築主事の方が安く済みます。指定確認検査機関は民間企業として利益を求める必要があるため、価格設定は建築主事よりも高めになっています。大阪府の建築主事への確認申請手数料を例にすると、100㎡以下の建築物で38,000円、300㎡超から1,000㎡以下で97,000円となっています。​

指定確認検査機関の業務区域と特定行政庁との関係

指定確認検査機関の業務区域については、その指定主体によって異なります。一つの都道府県の区域で業務を行う機関は都道府県知事が指定し、二つ以上の都道府県の区域で業務を行う機関は国土交通大臣が指定を行います。これにより、指定確認検査機関は複数の都道府県にまたがって業務を展開できる仕組みになっています。
参考)https://www.smilenet.kobe-rma.or.jp/faq-list/952/

建築主事は特定行政庁に所属していますが、法令上、建築主事と特定行政庁の間に上下関係はありません。ただし、建築主事は法律上、知事または市長の指揮監督を受けるとされています。建築主事を置く市町村の区域外における建築物については、都道府県が建築主事を置いて対応する仕組みです。
参考)建築主事とは?建築基準適合判定資格者との違い|適法改修・用途…

指定確認検査機関の指定要件には、確認検査員の配置基準、業務体制、財産評価額、経理的基礎、監視委員会の設置など、詳細な基準が「指定確認検査機関指定準則」で定められています。これにより、建築主事と同等の審査能力を有する公正中立な業務が担保される仕組みになっています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/000228036.pdf

指定確認検査機関選択時の実務的メリットとデメリット

建築事業者が指定確認検査機関を選択する際の最大のメリットは、審査スピードの早さとスケジュール調整の柔軟性です。民間企業であるため顧客サービスを重視し、審査期間の短縮や工程に合わせた対応が期待できます。また、業務区域が広いため、複数の都道府県で事業を展開する建築事業者にとっては、同じ機関に一貫して申請できる利便性があります。
参考)指定確認検査機関一覧

一方、デメリットとしては手数料の高さが挙げられます。コストを優先する場合は建築主事への申請が有利ですが、工期を優先する場合は指定確認検査機関を選択するという使い分けが実務的です。​
📊 選択の判断基準

  • コスト優先:建築主事(特定行政庁)への申請
  • スピード優先:指定確認検査機関への申請
  • 複雑な案件で相談が必要:建築主事(行政の専門知識活用)
  • 遠隔地での業務:業務区域の広い指定確認検査機関

なお、建築確認は「羈束行為」とされ、指定確認検査機関であっても建築主事であっても同じ判断になるべき性質のものです。つまり、どちらに申請しても建築基準法への適合性判断は同一でなければならず、恣意的な判断の違いがあってはならないとされています。
参考)建築主事 vs 民間検査機関、なぜ判断が分かれる?裁量の誤解…

実務上は、確認申請書類に不備がなければ1週間程度で済むケースもありますが、不備があった場合は再審査となり、数週間から1カ月以上かかることもあります。このため、書類の正確性を確保することが、どちらの機関を選択する場合でも重要なポイントとなります。
参考)建築確認済証とは?いつもらえる?取得時期と日数に影響する要因…

建築基準適合判定資格者検定の詳細情報(国土交通省)
建築主事や確認検査員になるための資格試験について、受験資格や試験日程などの公式情報を確認できます。

 

確認申請の申請先選択に関する実務的アドバイス
建築主事と指定確認検査機関の具体的な違いや、申請先選択の判断基準について詳しく解説されています。

 

建築主事の権限と役割の詳細
特定行政庁における建築主事の位置づけや、必要な資格要件について体系的に説明されています。