
建築主事とは、地方公共団体(都道府県や市町村)に所属し、建築確認申請や完了検査などの審査業務を担当する公務員です。建築基準法第4条に基づき、政令で指定する人口25万以上の市では、市長の指揮監督のもとに建築主事を置かなければならないと定められています。
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建築主事の主な業務は、建築主から提出された建築確認申請書を審査し、建築物が建築基準法などの建築基準関係規定に適合しているかを判定することです。また、工事の中間検査や完了検査を実施し、違反建築物に対しては工事施工の停止や是正措置を命じる権限も持っています。
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特定行政庁における建築主事の立場として重要なのは、法律上は特定行政庁との間に上下関係がなく、独立した判断権限を持つ専門家として位置づけられている点です。ただし、知事や市長の指揮監督を受けることは法律で定められています。
参考)http://www2u.biglobe.ne.jp/~katana/tokutei.htm
建築主とは、建築基準法第2条第1項第16号において「建築物に関する工事の請負契約の注文者または請負契約によらないで自らその工事をする者」と定義されています。一般的には「施主」や「クライアント」と呼ばれることも多く、建築プロジェクトにおいて工事を発注し、費用を支払う立場の人や組織を指します。
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建築主の主な責任は、建築確認申請を行い、確認済証の交付を受けることです。工事完了時には完了検査を受ける義務があり、一定の場合には工事の中間検査も受けなければなりません。また、建築物の設計は建築士が行い、建築士である工事監理者を置くことも建築主の義務となっています。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=69
建築主と所有者は異なる概念であり、建築主は建築物が完成するまでの手続きに関係する立場であるのに対し、所有者は建物完成後の維持保全や管理に関する責任を負います。例えば、分譲マンションの場合、建築主はデベロッパー会社ですが、最終入居者が所有者またはオーナーとなります。
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建築主事になるためには、まず建築基準適合判定資格者検定に合格し、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。この検定を受験するためには、一級建築士試験に合格していることが前提条件となります。
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さらに、建築基準法第77条の58第1項および施行令第2条の三に基づき、以下のいずれかの業務について2年以上の実務経験が必要とされています。具体的には、建築審査会の委員としての業務、4年制大学の教授または准教授として建築に関する教育や研究業務、その他審査や検査を行う業務で国土交通大臣が認めたものなどが該当します。
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2024年の法改正により、従来の一級建築基準適合判定資格者検定に加えて、二級建築基準適合判定資格者検定が新設されました。改正前は一級建築士資格と2年以上の実務経験が必須でしたが、改正後は試験合格後に実務経験を積むことで資格登録できるようになり、より柔軟な制度設計となっています。
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建築基準適合判定資格者検定の試験は、考査Aと考査Bの2つから構成されています。考査Aは建築基準法や関係法令に関する知識を問う5肢択一式の筆記試験で、法規集の持ち込みが許可される場合が多いです。考査Bは建築物の計画や設計に関する知識、法令に基づいた適合性の判断能力を問う試験で、記述式または選択式で実施されます。
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確認申請手続きにおいて、建築主事と建築主は明確に異なる立場にあります。建築主は申請する側であり、建築主事はその申請を審査する側という関係です。建築主は建物を建てる前に、建築確認申請書を特定行政庁または指定確認検査機関に提出しなければなりません。
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確認申請の流れは以下のようになっています。まず建築主または設計者が必要書類を準備・記入し、建築確認申請書を提出します。次に建築主事または確認検査員が審査を行い、建築基準関係規定に適合していることを確認すると「建築確認済証」が交付されます。その後、建築主は工事に着手し、必要に応じて中間検査を受け、最終的に完了検査を経て「検査済証」の交付を受けます。
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建築主事による審査は「羈束行為」とされており、法律の規定に基づいて判断する裁量のない行政行為です。そのため、建築主事と指定確認検査機関のどちらが審査しても、本来は同じ判断になるべきものとされています。ただし、法の解釈や適用の仕方によって判断が分かれることは現実的に起こり得ます。
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確認申請の審査期間は、木造2階建て等の簡易な建築物で7日以内、その他の建築物で35日以内と法律で定められています。建築主は審査期間中に図面の訂正などを求められることがあり、建築主事との協議を通じて申請書類を修正していきます。
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国土交通省の建築基準適合判定資格者検定に関する公式情報はこちら
建築主事と確認検査員は、どちらも建築基準適合判定資格者の資格を持ち、建築確認や検査の業務を行う点では共通していますが、所属する組織が異なります。建築主事は地方公共団体(都道府県や市町村)の職員である公務員であるのに対し、確認検査員は民間の指定確認検査機関に所属する職員です。
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職名は違いますが、同じ建築基準適合判定資格者検定に合格した有資格者であり、業務内容は基本的に同じです。指定確認検査機関は、建築主事が行う確認や検査と同等の法的効力を持つ業務を民間で行うことができる機関として認められています。
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平成10年の建築基準法改正により、従来は特定行政庁のみが行っていた建築確認業務が民間にも開放されました。これにより、建築主は特定行政庁に申請するか、指定確認検査機関に申請するかを選択できるようになりました。現在では、民間の指定確認検査機関に申請するケースが増えており、建築確認業務の効率化が図られています。
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建築主事と確認検査員の責任範囲については、どちらも建築物の安全性を確保するために重要な役割を担っていますが、建築主事は公務員として行政の一員であり、国家賠償法の適用を受ける立場にあります。一方、確認検査員は民間機関の職員として業務を行います。
参考)https://uhec.co.jp/business/inspection/content/
建築業従事者として実務を行う際、建築主事と建築主の違いを正確に理解しておくことは極めて重要です。特に確認申請の手続きにおいては、両者の役割を混同すると手続きの遅延や不備につながる可能性があります。
建築主の立場から注意すべき点として、確認申請前の事前相談や事前受付の段階で、建築主事や確認検査員と十分にコミュニケーションをとることが挙げられます。図面や書類の不備があれば早期に修正することで、審査期間の短縮につながります。また、消防同意など関係機関との調整も建築主の責任において進める必要があります。
建築主事の業務における責任は非常に重く、構造計算書の耐震偽装を看過した場合などには国家賠償請求訴訟の対象となることがあります。最高裁判例では、建築主事の責任が否定されたケースもありますが、明白なミスと注意義務違反が認められた場合には過失が認定される可能性があります。このような訴訟リスクと責任の重圧により、建築主事の業務に対する意欲低下が課題となっています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/8717ef6734de2b6dfa026a68187c457531bbb030
違反建築物に対する措置についても、建築主事は建築主や建築工事の請負人に対して工事施工の停止命令や違反是正措置を命じる権限を持っています。建築主としては、建築基準法や関係法令を遵守し、適法な建築を行うことが求められます。
参考)建築主、設計者、施工者の法的責任の関係性|適法改修・用途変更…
実務上の効率化という観点では、建築確認申請を早く通すためには、設計段階から建築基準法の規定を正確に理解し、申請書類の精度を高めることが重要です。また、特定行政庁と指定確認検査機関のどちらに申請するかについても、プロジェクトの特性や審査期間を考慮して適切に選択することが求められます。
参考)大阪市:【確認】確認申請等における手続きの流れについて (……
建築主の定義と責任についての詳細解説はこちら
建築主は建物の所有者として、完成後の維持保全や管理責任も負うことになります。建築基準法第8条では、建築物の所有者や管理者に対して、建築物を常時適法な状態に維持する義務を課しています。このため、建築主は単に建物を建てるだけでなく、長期的な視点で建築物の安全性と法適合性を確保していく責任があります。
参考)建築確認|不動産用語集|三菱地所の住まいリレー