スパンドレルの施工方法と下地の準備および取付け

スパンドレルの施工方法と下地の準備および取付け

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スパンドレルの施工方法について

スパンドレル施工の基本手順
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下地準備

正確なレベル出しと野縁の適切な配置が施工の成否を左右します

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廻り縁取付

ビス止めは300~360mmピッチで、コーナー部分はより密に施工します

🔧
本体施工

目地割付に注意し、張り出しから張り終いまで計画的に取り付けます

スパンドレルの施工に必要な工具と材料

スパンドレルの施工を適切に行うためには、正しい工具と材料の選択が不可欠です。施工の品質を左右する重要な要素となりますので、事前の準備を怠らないようにしましょう。

 

必要な工具一覧
・丸のこ - スパンドレルの長手方向(L寸法)切断に最適
・ジグソー - 複雑な形状や細かい調整が必要な切断に使用
・電動ドリル - ビス止め作業に必須
・+ビットNo.2 - 標準的なビス頭に適合するサイズ
・水準器 - 下地材および取付け時のレベル確認用
・メジャー - 正確な寸法測定のため
・マーカーペン - 墨出しや切断位置のマーキング用
必要な材料
・ワンタッチビス - スパンドレル本体の固定用(頭の大きすぎないものを選択)
・スポンジ/パッキン - 張り出し部や張り終い部のバックアップ材として
・小頭ビス - 表面に出るビス止め部分用(目立ちにくい)
・カラービス - SKタイプのスパンドレル固定用(付属品)
施工においては、特に切断工具の選定が重要です。スパンドレルは金属製のため、適切な刃を使用しないと切断面がきれいに仕上がらず、施工品質に影響します。丸のこを使用する場合は金属切断用の刃を、ジグソーの場合も同様に金属用の刃を装着してください。

 

また、取付け時に使用するビスは、スパンドレルのタイプによって異なります。一般的には頭の大きくないワンタッチビスが推奨されますが、SKタイプのスパンドレルには専用のカラービスが付属している場合もあります。ビスの選定については、使用するスパンドレルの仕様書を必ず確認しましょう。

 

スパンドレルの下地材の正確な取り付け方法

スパンドレル施工の成否は、下地材の取り付け精度に大きく依存します。特にレベル出しと野縁の配置方向は、最終的な仕上がりに直接影響するため、細心の注意を払って作業を進めることが重要です。

 

下地材のレベル出し

  1. 壁面や柱面に天井下地墨を出し、これを基準点とします
  2. ハンガーを仮止めした状態で、下地レベルを調整します
  3. 基点間に水糸(麻糸やナイロン糸)を張り、中間部のレベルを調整します
  4. 全体のレベルを調整した後、ハンガーのナットを本締めします
  5. 許容誤差は3mに対して±3mm以内を目安としてください

野縁の配置方法
・スパンドレルの貼り方向と直交するように野縁を配置することが基本です
・屋内施工の場合:野縁のピッチは360mm程度が標準
・屋外(軒天)施工の場合:野縁のピッチは300mm程度に縮めます
・野縁は野縁受けから150mm以上はね出す施工は避けてください
注意点
・野縁受けへのクリップ取付けは、特に屋外の場合、野縁受け材の溝内に十分折り込んで施工します
・野縁は、同列になったり、ねじれ、目違いが生じないように施工します
・耐風圧がかかる場所では、耐風圧用の特殊下地を使用する必要があります
下地材の取り付けが完了したら、必ず全体的な水平精度を確認してください。スパンドレルは線状の意匠性を持つ材料であるため、わずかなレベルのずれでも仕上がりに大きく影響します。レベル確認後、問題があれば調整し、問題がなければ次の工程に進みましょう。

 

スパンドレル本体の切断と取付けのポイント

スパンドレル本体の切断と取付けは、施工の中でも特に技術を要する工程です。特に目地の一貫性と張り終わりの処理が仕上がりの美観を左右します。

 

目地割付(墨出し)
スパンドレルは必ず張り方向に目地が入ります。施工前に目地の位置を明確にしておくことが重要です。

 

・スパンドレルの形状・種類によって目地幅は異なります
・スライドピッチを利用して目地割付を行います
・割付は通常左右対称が基本です
スパンドレルの切断方法

  1. L方向(長手方向)の切断。
    • 廻り縁に飲み込ませる場合、計画寸法より15~20mm程度長く切断
    • 両端とも廻り縁に十分呑み込ませることが重要
  2. W方向の切断。
    • 張り出しと張り終いの部分で必要となる場合があります
    • 丸のこやジグソーを使用すると良い仕上がりになります

スパンドレルの取付け手順

  1. 張り出し。
    • W方向の切断を行った張り出し材には「あたり」がないため、浮き上がり防止用のバックアップ材(スポンジやパッキン)が必要
    • バックアップ材を適切に配置し、隙間が出来ないよう注意します
  2. 道中の施工。
    • 割付墨に沿って順次施工していきます
    • 廻り縁にスパンドレルが確実に乗っているか常に確認しながら作業を進めます
  3. 張り終い。
    • 最後の一本は現場寸法に合わせてL寸法を+10mm程度、W方向も現場加工が必要
    • 三方向とも廻り縁に5mm程度呑み込ませるよう調整
    • 張り出し同様、浮き上がり防止のためのバックアップ材が必要
    • 「行って来い」方式で材料を納め、L方向両端および2,000mmピッチ程度で表ビス固定

SKタイプのスパンドレル取付けでは、端部のバタツキがある場合は付属のゴムパッキンまたはバックアップ材をはさみ込み、バタツキを防止することが重要です。また、表ビス止めが必要な場合は、あらかじめ建設会社等に説明し、了解を得ておくことをお勧めします。

 

スパンドレル施工における廻り縁の重要性

スパンドレル施工において、廻り縁(見切り縁、ボーダー)の取付けは非常に重要なプロセスです。廻り縁はスパンドレル本体の端部を美しく納めるだけでなく、構造的な安定性にも寄与します。

 

廻り縁取付けの基本手順

  1. 下地施工が完了した後、最初に廻り縁を取り付けます
  2. 直線部分は300mm~360mmピッチでビス止めします
  3. コーナー部分はより細かいピッチでビス止めし、安定性を確保します
  4. 施工現場の状況に応じて、出隅・入隅のトメ加工が必要になります

廻り縁の種類と選択
・標準的な廻り縁:基本的な端部処理に使用
・R廻り縁:曲線部分の処理に適している
・Hジョイナー:スパンドレル同士の接続部に使用
・下がり壁ボーダー:段差のある部分に対応
取付け時の注意点としては、廻り縁同士の接合部や角部分の処理が美観を左右します。特に複雑な形状の天井では、廻り縁の切断や接合に高い技術が求められます。廻り縁の取付け精度が悪いと、後のスパンドレル本体取付け時に調整が困難になるため、この段階での正確な施工が重要です。

 

また、廻り縁とスパンドレルの収まりも重要なポイントです。スパンドレルは廻り縁に十分に呑み込ませる必要があり、特に張り出しと張り終いの部分では浮き上がりを防止するための対策が必要です。廻り縁への呑み込み量は一般的に15~20mm程度が推奨されています。

 

スパンドレル施工後の点検と長期的な維持管理

スパンドレルの施工完了後は、適切な点検と維持管理が長期的な性能と美観を保つために不可欠です。施工直後の検査から定期的なメンテナンスまで、計画的な管理を行うことをお勧めします。

 

施工後の点検項目
・天井レベル、割付方法の確認(許容誤差:±10mm以内)
・開口部、下がり壁などの位置、寸法検査
・各部材が規定通りの取付け方法で正しく施工されているか
・水平精度の検査(3mに対して±3mm以内)
・周辺部の取合い、目違いや段違いなどの点検
・補強箇所の点検、錆止め検査
施工後は、スパンドレルに衝撃や外力を加えないよう注意し、水や湿気の浸入を防ぐことが重要です。特に屋外に設置されたスパンドレルは、天候の影響を直接受けるため、定期的な点検が必要です。

 

長期的な維持管理のポイント

  1. 定期点検。
    • 6ヶ月~1年ごとに目視点検を実施
    • ビスの緩みや脱落がないか確認
    • スパンドレル表面の汚れや変色をチェック
  2. 清掃方法。
    • 乾いた柔らかい布で定期的に埃を拭き取る
    • 頑固な汚れには中性洗剤を薄めた溶液を使用
    • 研磨剤入りの洗剤やブラシは表面を傷つける恐れがあるため使用しない
  3. 補修と交換。
    • 損傷したパネルは早めに交換することで広範囲の劣化を防止
    • 部分的な補修が必要な場合は、同じ仕様・色調の材料を使用

スパンドレルは、適切に施工・維持管理されれば、長期間にわたって美観と機能性を維持します。特に防火要件を満たすために設置されたスパンドレルは、その性能維持が建物の安全性に直結するため、定期的な点検と必要に応じた補修が重要です。

 

また、スパンドレル周辺の構造変化(例:天井内設備の増設や変更)がある場合は、スパンドレルの機能や取付け状態に影響がないか確認することも忘れてはなりません。施工記録と図面を保管しておくことで、将来的なメンテナンスや改修時に役立ちます。