

スプラインは、軸と穴の間でトルクを伝達し、位置決めや滑動(摺動)も担える結合要素として使われます。JISの世界では大きく「角形スプライン」と「インボリュートスプライン」に分かれ、前者は比較的単純な歯形、後者は歯車と同系統のインボリュート歯形を用います。角形スプラインの代表としてJIS B 1601があり、寸法・公差だけでなく検証(検査)方法まで踏み込んで規定しています。
一方、インボリュートスプライン(歯面合わせ)はJIS B 1603で扱われ、ねじれのないインボリュートスプラインについて、モジュールや圧力角の範囲などの適用条件が明記されています。
参考)JISB1603:1995 インボリュートスプライン−歯面合…
実務的には「高精度な同心性が欲しい」「歯面・ピッチ精度を上げやすい」などの要求が強い場合に、角形よりインボリュートが選ばれやすい、という整理が有効です(※ただし設計選定は相手部品・加工法・コストも含めた総合判断になります)。JIS B 1603側でも特徴として“作動時に自動的に同心となる”趣旨が述べられています。
参考)JISB1603:1995 インボリュートスプライン−歯面合…
建築従事者の文脈だと、機械装置そのものの設計よりも「設備の駆動系(搬送・昇降・ダンパ駆動・回転体)」「建築生産設備(加工機・搬送治具)」「大型ファンやポンプ周りの特殊カップリング」など、機械要素として図面に出てくるケースがあります。そこで重要なのは、スプラインを“キーの上位互換”として雑に理解するのではなく、規格上の呼び方・はめあい・検査で合否が決まる部品だと捉えることです。JIS B 1601にはゲージによる検査体系が示されており、図面の要求がその検査に乗っているかが品質の境目です。
参考)JISB1601:1996 角形スプライン−小径合わせ−寸法…
スプライン図面で頻出する情報は、概ね「呼び径」「歯数(z)」「モジュール(m)」「圧力角」「等級(例:b級)」のような並びです。JIS B 1603の例示では、歯面合わせの場合にスプライン穴が「INT 35×12z×2.5m×20」、スプライン軸が「EXT 35×12z×2.5m×20(b級)」のように表され、記号+主要パラメータ+等級で構成されることが読み取れます。
この“文字列”が読めるようになると、現場コミュニケーションがかなり楽になります。例えば「12z」は歯数で、同じ呼び径でも歯数が変わると歯溝・歯厚が変わり、当然ながら相手部品と噛み合いません。さらにモジュールmは歯の大きさの基準で、歯車と同様に寸法体系が連動するため、mが違う組合せは成立しないと判断できます(設計上の特注を除く)。JIS B 1603は用語として基礎円径や基礎円ピッチなども定義しており、歯形の幾何が規格内で閉じている点がインボリュートの強みです。
また、JIS B 1603には“転位量(0.8m)”に関する記述があり、スプライン軸の歯に十分な強度を与えるための考え方が示されています。
設計者でなくても、この種の記述を知っておくと「同じ呼びでもメーカー表で細部が違うのはなぜ?」という疑問に、規格上の背景から納得しやすくなります。
注意点として、ネット上にはスプライン寸法表(抜粋表)のPDFが多く流通していますが、そこに載っているのは“表の一部”で、どの等級・どのはめあい・どの基準での表かが省略されがちです。例えばインボリュートスプラインの抜粋表のように大径・小径・公差が列挙されている資料は便利ですが、図面要求(等級、合わせ方、検査方法)とセットで扱わないと、受入時に「表は合うがゲージが通らない」といった事態が起こり得ます。
参考)https://www.matex-japan.com/pdf/products/documewnt/sp.pdf
スプラインのはめあいは、単に“きつい・ゆるい”ではなく、何を基準に位置決め(同心・回り止め・摺動)を成立させるかで見ます。JIS B 1603では「歯面合わせ」のスプラインを対象にしつつ、例の中で“大径合わせ”のケースも併記しており、合わせ方が変わると図面指示や検査の考え方が変わることが分かります。
また、現場で見落としがちなキーワードが「結合長さ」です。JIS B 1603では結合長さ(length of engagement, gr)を“相手スプラインと接触している軸方向の長さ”として定義しており、単に全長が長ければ良いという話ではなく、実際に歯面が仕事をする区間がどこか、が明確になります。
建築設備や生産設備では、据付誤差・熱伸び・振動により軸方向の位置が微妙に変わることがあり、結合長さの確保(と、摺動の余裕)を読み違えると、局所当たりや異音、摩耗促進に直結します。
さらにJIS B 1601側には、滑動長さや結合長さの図示とともに、ゲージが一般に被検スプラインより短いことを前提にした注意が書かれています。つまり、ゲージ検査は“全長の状態をそのまま再現する”ものではなく、規格が定義する方法で合否を取る仕組みです。
この発想を知らないと、現場で「ゲージは通ったのに組むと渋い」「現物合わせで削ってしまった」など、規格から外れる対処に走りやすくなります。
はめあいを扱ううえでの実務メモを箇条書きにします。
スプラインの受入や品質保証で強い武器になるのが、規格に沿ったゲージ検査の理解です。JIS B 1601では、ゲージによる軸の検査として「通り側」「止まり側」を区別し、通り側では複数の特性を同時に検査する考え方が示されています。
この“同時に検査する”という点が重要で、現場でノギスやマイクロで個別寸法だけ追っても、機能(噛み合い)を保証しきれない理由がここにあります。
止まり側の検査についても、JIS B 1601は“大径・小径・幅B”などの要素を単独で検査するために別々の止まりゲージを用いる、といった構造を示しています。
つまり、通り側で「総合的に通る」こと、止まり側で「行き過ぎない」ことを組み合わせて、規格が意図する機能限界を作っているわけです。
インボリュート側(JIS B 1603)でも検査方法の章立てがあり、ゲージの公差域中心と部品の通り側限界との距離といった概念が登場します。
参考)JISB1603:1995 インボリュートスプライン−歯面合…
建築系の現場ではゲージ一式が常備されていないこともありますが、外注加工で「検査成績書に何を要求するか」を決めるとき、規格の検査体系を知っていると、発注側が過不足ない要求を出しやすくなります。
現場トラブルの典型と対策を、絵文字つきで整理します。
検索上位の記事は、どうしても「規格表」「寸法の読み方」「公差一覧」に寄りがちです。そこで独自視点として、建築従事者が巻き込まれやすい“発注ミス”を、図面の文字列(記号列)から潰す実務フローを提案します。JIS B 1603の例にあるように、INT/EXT+呼び+z+m+角度+等級のような並びは、どれか1つ欠けると別物になります。
発注・外注加工で起きやすいミスは、実は加工そのものより「仕様の同一性が担保されていない」ことです。例えば、社内では“スプライン”と呼んでいても、相手は角形を想定し、こちらはインボリュートを想定していた、というズレが起き得ます。JIS B 1601とJIS B 1603は対象・用語・検査体系が違うため、「規格番号まで含めた指定」を必須にするのが安全策です。
発注ミスを減らすためのチェックリストを置きます(入れ子なし)。
最後に、図面記号の読み違いは現場でも相談が多いテーマです。たとえば「6Z×1.5m×30P×5f」のような表記が分からない、という質問が実際に出ていますが、こうした表記は“どの規格・どの流儀か”を特定しないと一意に読めません。だからこそ、JIS番号と表記ルールを先に固定し、関係者間で同じ辞書を持つことが最大の予防策になります。
参考)機械図面でスプライン記号の右側に6Z×1.5m×30P×5f…
規格本文(一次情報)に当たれる導線も置いておきます。
スプライン規格の条文・定義・例示(JIS B 1603)が読め、図面指示の根拠を一次情報で確認できる。
JISB1603:1995 インボリュートスプライン-歯面合わせ(条文)
角形スプラインの検査(通り側・止まり側ゲージ、結合長さ/滑動長さの考え方)を確認できる。
JISB1601:1996 角形スプライン-小径合わせ-寸法,公差及び検証