たわみ角法の例題と梁の公式で解き方と固定端モーメントの手順

たわみ角法の例題と梁の公式で解き方と固定端モーメントの手順

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たわみ角法と例題と梁

たわみ角法 完全攻略ガイド
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公式の本質的理解

単なる暗記ではなく、剛度と変位の関係から公式を導出し、符号ミスのない計算力を身につける。

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実戦的な例題演習

連続梁やラーメン構造の例題を用いて、節点方程式の組み立てから曲げモーメント図の作成までをステップ化。

💻
実務ソフトとの連携

手計算のたわみ角法が、現代の構造解析ソフト(マトリクス変位法)でどう応用されているかを深掘り。

たわみ角法の梁の公式と符号の定義

 

構造力学において不静定構造物を解くための強力なツールである「たわみ角法」。その核となる公式は、一見複雑に見えますが、物理的な意味を分解すれば非常に合理的です。基本公式は、部材の両端に生じる材端モーメント($M$)を、節点の回転角(たわみ角 $\theta$)、部材全体の回転角(部材角 $R$)、そして荷重による固定端モーメント($C$)の総和として表現したものです。
一般的に用いられる基本公式は以下の通りです。
Mab=kab(2θa+θb3R)+CabM_{ab} = k_{ab} (2\theta_a + \theta_b - 3R) + C_{ab}Mab=kab(2θa+θb−3R)+Cab
ここで重要なのは、各項が表す物理的意味です。



  • $k_{ab}$(剛度): 部材の曲げにくさを表します。通常、$2EK_0$($E$:ヤング係数、$K_0$:標準剛度)を係数として用います。


  • $2\theta_a + \theta_b$: 節点の回転による影響です。自分側の節点($a$)の影響は相手側($b$)の2倍効いてくる、という特性があります。


  • $-3R$: 支点沈下などにより部材全体が回転した場合の影響です。


  • $C_{ab}$: 節点が固定されていると仮定したときに、中間荷重によって生じるモーメントです。


構造計算の実務で最も多くのミスを誘発するのが「符号規約(サインコンベンション)」です。微分方程式を用いた梁の理論では、「下に凸」や「反時計回り」を正とすることが多いですが、**たわみ角法では「時計回り」を正(プラス)**と定義するのが一般的です。

  • 材端モーメント $M$: 時計回りが正

  • たわみ角 $\theta$: 時計回りが正

  • 部材角 $R$: 時計回りが正

この「全て時計回りが正」という統一ルールは、計算処理を機械的に行う上で非常に有利です。しかし、最終的に曲げモーメント図(BMD)を描く際には、引張側を正とする慣習に合わせて符号を読み替える必要があるため、この変換プロセスで混乱しないように注意が必要です。特に、層間変位が生じるラーメン構造の計算では、この符号の定義を厳格に守らないと、水平力のつり合い計算で致命的な誤差が生じます。
大学の講義ノートなど、信頼性の高い資料で符号規約を確認したい場合は以下が参考になります。
名城大学 理工学部 建築学科 村田研究室:たわみ角法の基本式(PDF) - 基本式の誘導と符号の定義が詳細に解説されています。

たわみ角法で梁の固定端モーメントを計算

たわみ角法の計算精度を左右するのが、荷重項である「固定端モーメント(Fixed End Moment, $C$)」の正確な算出です。これは、節点(支点)が完全に固定され、回転も移動もしないと仮定した状態で、部材にかかる荷重が端部にどのようなモーメントを発生させるかを計算したものです。
実務においては、都度積分計算をして求めるのではなく、代表的な荷重パターンの公式を完全に暗記し、即座に数値を出せるようにしておく必要があります。以下に、頻出するパターンの計算式と、実務上の注意点をまとめます。ここでも「時計回りが正」のルールが適用されるため、左端は反時計回りとなることが多く、マイナスが付くことに注意してください。
主な固定端モーメントの公式一覧

荷重タイプ 荷重形状 左端モーメント ($C_{ab}$) 右端モーメント ($C_{ba}$) 備考
中央集中荷重 ↓ $P$ $-\frac{PL}{8}$ $+\frac{PL}{8}$ 最も基本的な形。単純梁の最大曲げモーメント $PL/4$ の半分となる。
等分布荷重 ↓↓↓ $w$ $-\frac{wL^2}{12}$ $+\frac{wL^2}{12}$ 多くの梁計算で使用。単純梁の $wL^2/8$ と係数が違う点に注意。
偏心集中荷重 ↓ $P$ ($a$:$b$) $-\frac{Pb^2a}{L^2}$ $+\frac{Pa^2b}{L^2}$ 距離の2乗が掛かるのは、荷重から「遠い方」の距離である点に注意。
三角分布荷重 📐 $-\frac{wL^2}{20}$ $+\frac{wL^2}{30}$ 荷重が大きい側(右側最大の場合)の分母が30、小さい側が20となる。


実務における「意外な」落とし穴
計算ミスが多発するのは、複数の荷重が組み合わさった場合です。例えば、「等分布荷重」と「集中荷重」が同時にかかる梁の場合、重ね合わせの原理(スーパーポジション)を利用して、$C_{ab} = C_{ab}(\text{等分布}) + C_{ab}(\text{集中})$ として単純に加算することができます。
しかし、忘れがちなのが「符号の逆転」です。もし下から上への突き上げ荷重(風圧力など)がかかる場合、固定端モーメントの符号はすべて逆転します。機械的に公式を適用するだけでなく、荷重が部材を「どちらに曲げようとしているか」を常にイメージすることが、エラー検出の鍵となります。
また、片持ち梁(キャンチレバー)部分がある場合の処理も重要です。たわみ角法の基本式は「両端が支持されている」ことが前提です。片持ち部分がある場合、その部分は不静定構造の一部ではなく、単なる「外力(確定したモーメント荷重)」として節点方程式の右辺(荷重項)に組み込む処理を行います。これを部材の一部として基本式に組み込んでしまうと、未知数が無駄に増え、計算が破綻する原因となります。
固定端モーメントの詳細な導出過程を知りたい方は、以下のリンクが役立ちます。
構造力学Ⅱ - たわみ角法 - 固定端モーメントの図解と詳細な導出が掲載されています。

たわみ角法の例題で梁の解き方を実践

ここでは、実務で頻出する「2スパン連続梁」を例題として、たわみ角法による解法の全手順を解説します。手順をマニュアル化することで、どのような複雑な問題でも迷わずに手を動かせるようになります。
例題設定


  • 構造: 2スパン連続梁(支点A:固定、支点B:ピンローラー、支点C:ピンローラー)

  • スパン: スパンAB = $6m$、スパンBC = $6m$

  • 剛度: 全部材等質等断面とし、剛比 $k = 1.0$ とする。標準剛度 $K_0$ を用いる。

  • 荷重: スパンABの中央に集中荷重 $P=80kN$。スパンBCに等分布荷重 $w=10kN/m$。

ステップ1:未知数の確認(自由度の判定)
まず、求めたい変数が何かを特定します。


  • 支点A:固定端なので、たわみ角 $\theta_A = 0$。

  • 支点B:連続ばりの内部支点なので、たわみ角 $\theta_B$ が発生する(未知数1)。

  • 支点C:端部ピン支点なので、たわみ角 $\theta_C$ が発生する(未知数2)。

  • 支点沈下はないものとし、部材角 $R = 0$。

この問題は、未知数 $\theta_B, \theta_C$ を求める連立方程式となります。
ステップ2:固定端モーメント($C$)の計算
公式を用いて各材端の荷重項を算出します。


  • 部材AB(集中荷重):


    • $C_{AB} = -PL/8 = -(80 \times 6)/8 = -60 kNm$

    • $C_{BA} = +PL/8 = +60 kNm$


  • 部材BC(等分布荷重):


    • $C_{BC} = -wL^2/12 = -(10 \times 6^2)/12 = -30 kNm$

    • $C_{CB} = +wL^2/12 = +30 kNm$

ステップ3:たわみ角法の基本式の作成
基本式 $M = 2EK_0 \cdot k (2\theta_{myself} + \theta_{neighbor}) + C$ に代入します。ここでは $2EK_0 = 1$ と仮定して計算を進め、最後に補正します(比率だけで解けるため)。


  • $M_{AB} = 1 \cdot (2\cdot 0 + \theta_B) - 60 = \theta_B - 60$

  • $M_{BA} = 1 \cdot (2\theta_B + 0) + 60 = 2\theta_B + 60$

  • $M_{BC} = 1 \cdot (2\theta_B + \theta_C) - 30 = 2\theta_B + \theta_C - 30$

  • $M_{CB} = 1 \cdot (2\theta_C + \theta_B) + 30 = 2\theta_C + \theta_B + 30$

ステップ4:節点方程式(つり合い式)の樹立と連立方程式の解法
節点におけるモーメントの和がゼロになる条件式を立てます。


  1. 節点Bのつり合い: $M_{BA} + M_{BC} = 0$


    • $(2\theta_B + 60) + (2\theta_B + \theta_C - 30) = 0$

    • $4\theta_B + \theta_C + 30 = 0$ ...①


  2. 節点Cの境界条件: ピン支点なので材端モーメントはゼロ($M_{CB} = 0$)


    • $2\theta_C + \theta_B + 30 = 0$ ...②

①、②の連立方程式を解きます。
②より $\theta_B = -2\theta_C - 30$。これを①に代入。
$4(-2\theta_C - 30) + \theta_C + 30 = 0$
$-8\theta_C - 120 + \theta_C + 30 = 0$
$-7\theta_C = 90 \rightarrow \theta_C = -12.85$
$\theta_B = -2(-12.85) - 30 = 25.7 - 30 = -4.3$
ステップ5:最終材端モーメントの算出
得られた $\theta$ を基本式に戻します。


  • $M_{AB} = -4.3 - 60 = -64.3 kNm$

  • $M_{BA} = 2(-4.3) + 60 = 51.4 kNm$

  • $M_{BC} = 2(-4.3) + (-12.85) - 30 = -8.6 - 12.85 - 30 = -51.45 kNm$


    • ($M_{BA} + M_{BC} \approx 0$ となりOK)


  • $M_{CB} = 0$ (条件通り)

このように、手順を厳密に守ることで、複雑な不静定梁も機械的に解くことが可能です。計算過程での検算(B点でモーメントが釣り合っているか確認)は必ず行いましょう。
具体的な計算手順の参考資料:
建築構造の基礎知識 連続梁の計算 - 2スパン連続梁の解法が図入りで解説されています。

たわみ角法の梁の剛度とマトリクス変位法

たわみ角法を学ぶ多くの実務者が疑問に思うのが、「なぜコンピュータ全盛の時代に、手計算のたわみ角法を学ぶ必要があるのか?」という点です。実は、たわみ角法は単なる古典的な解法ではなく、現代の構造解析ソフト(MIDAS, SAP2000, SS7など)の内部で動いている**「マトリクス変位法(剛性マトリクス法)」の原始的な形そのもの**なのです。
検索上位の記事ではあまり語られませんが、この関連性を理解すると、構造ソフトのブラックボックスの中身が見えてきます。
剛度方程式とマトリクスの対応
たわみ角法の基本式を行列形式(マトリクス)で書き下すと、そのまま剛性マトリクスになります。
式 $M = 2EK(2\theta_a + \theta_b)$ をベクトルと行列で表すと以下のようになります。
(MaMb)=2EIL(2112)(θaθb)\begin{pmatrix} M_a \\ M_b \end{pmatrix} = \frac{2EI}{L} \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \theta_a \\ \theta_b \end{pmatrix}(MaMb)=L2EI(2112)(θaθb)
この中心にある $\begin{pmatrix} 2 & 1 \ 1 & 2 \end{pmatrix}$ という行列こそが、部材剛性マトリクスの正体です。



  • 対角成分の「2」: 自分の節点を回転させるために必要なモーメント(直剛性)


  • 非対角成分の「1」: 相手の節点に伝達されるモーメント(連成項)


実務における「剛度低下」の意味
RC造の断面算定などで用いる「剛度低下率」というパラメータがあります。これは、たわみ角法における係数 $k$(あるいは $EI$)を意図的に下げる操作です。
「ひび割れによって剛性が下がる」という物理現象を解析モデルに反映させる際、ソフト上ではこのマトリクス内の数値をスカラー倍して小さくしています。
もしあなたがたわみ角法を深く理解していれば、解析ソフトで「剛性率 0.7」と入力したとき、内部の方程式で $M_{ab}$ がどのように変化し、その結果として応力の再配分がどう起こるか(剛度の高い柱にモーメントが吸われる現象など)を直感的に予測できるようになります。

反力計算への応用
たわみ角法はモーメント $M$ を求めるメソッドだと思われがちですが、実は「変位 $\theta$」を主役にした解法です。これはマトリクス変位法が「まず変位 ${d}$ を求め、そこから応力 ${f} = [K]{d}$ を計算する」というプロセスと完全に一致します。
この視点を持つことで、支点沈下(強制変位)が起きた際に、なぜあれほど巨大な応力が発生するのかも理解できます。基本式の $-3R$ の項を見れば分かる通り、わずかな沈下($R$)に対して、剛度 $EK$(非常に大きな値)が掛け算されるためです。
このように、たわみ角法は「手計算のための古い道具」ではなく、「現代の解析技術のアルゴリズムを理解するための基礎言語」と言えます。ここを理解している技術者は、解析エラーが出た際の原因特定能力が格段に高くなります。

たわみ角法と修正たわみ角法の違い

実務でたわみ角法を用いる際、計算量を劇的に減らすテクニックとして「修正たわみ角法」が頻繁に使われます。標準のたわみ角法との違いを明確に理解し、使い分けることが効率化の鍵です。
なぜ修正が必要なのか?
通常のたわみ角法では、すべての節点のたわみ角 $\theta$ を未知数として扱います。しかし、梁の先端が「ピン支点(ローラー支点)」である場合、その点のモーメントは最初から「ゼロ」であることが分かっています。
例題の連続梁(C点がピン)を思い出してください。標準法では $\theta_C$ を未知数として連立方程式を解き、最後に $M_{CB}=0$ を確認しました。
修正たわみ角法では、最初から「相手端がピンならモーメントはゼロ」という条件を公式に組み込んでしまいます。これにより、未知数 $\theta_C$ を消去し、連立方程式の元数を減らすことができるのです。
修正たわみ角法の公式
部材ABにおいて、B端がピン(ヒンジ)の場合のA端モーメント $M_{ab}$ は以下のようになります。
Mab=3EK0k(θaR)+(CabCba2)M_{ab} = 3EK_0 \cdot k ( \theta_a - R ) + (C_{ab} - \frac{C_{ba}}{2})Mab=3EK0⋅k(θa−R)+(Cab−2Cba)
標準法との大きな違い



  1. 係数が変化: 標準の「$2EK$」ではなく「$3EK$」になります。これは、相手端がピンで拘束されていない分、こちら側が回転しやすくなる(剛性が低下する)のではなく、逆に相手側の回転の影響を考慮済みとするため、係数処理が変わるためです。(実務では「ピン支点の部材は剛比を1.5倍する」という処理として教わることが多いはずです。$2 \times 1.5 = 3$ だからです)


  2. 相手のたわみ角 $\theta_b$ が消滅: 式の中に $\theta_b$ が含まれていません。計算すべき変数が1つ減ります。


  3. 固定端モーメントの修正: 荷重項が $(C_{ab} - C_{ba}/2)$ となります。相手側の固定端モーメントの半分が戻ってくるイメージです(到達モーメント)。


実務での使い分け


  • 標準たわみ角法: ラーメン構造の中間層など、両端が剛接合されている部材に使用。


  • 修正たわみ角法: 最上階の柱頭、連続梁の端部、ピン柱脚の柱元などに使用。


特に手計算の検定試験(建築士試験など)では、修正たわみ角法を使えるかどうかで計算時間が倍近く変わります。ピン支点を見たら即座に「剛比1.5倍、相手の項なし」と反応できるようにトレーニングしておくことが重要です。
修正たわみ角法の詳細な適用例は以下で確認できます。
ゆるっと建築ライフ - たわみとたわみ角の基礎から修正法の考え方まで解説されています。

 

 


ラ-メン公式集並びに用法 (撓み角法モ-メント分配法による)