
鉄筋工の日当り施工量は、構造物の種類によって大きく異なることが特徴です。長野県の建設工事積算基準によると、一般構造物では1日当り3.5トンが標準施工量として設定されています。これは最も基本的な施工基準値として、全国の建設現場で広く採用されているものです。
参考)https://www.pref.nagano.lg.jp/gijukan/kensei/nyusatsu/sekisankijun/documents/sasikae1.pdf
切梁のある構造物では施工量が3.0トンに減少します。これは構造が複雑になり、鉄筋の配置や結束作業に時間がかかるためです。一方、地下構造物や橋梁用床版では4.0トンと施工量が増加する傾向にあります。
特筆すべきは場所打杭用かご筋で、日当り施工量が6.5トンに達します。これは円筒形の単純な形状であるため、組み立て作業が比較的効率的に進むことが理由です。逆にRC場所打ホロースラブは2.5トンと最も低い施工量になります。
構造物の種類 | 日当り施工量 | 特徴 |
---|---|---|
一般構造物 | 3.5トン | 標準的な施工基準 |
切梁のある構造物 | 3.0トン | 配筋が複雑 |
地下構造物 | 4.0トン | 作業環境が制約される |
橋梁用床版 | 4.0トン | 比較的単純な配筋 |
場所打杭用かご筋 | 6.5トン | 円筒形で作業効率が高い |
RC場所打ホロースラブ | 2.5トン | 精密な配筋が必要 |
鉄筋工の実際の施工量は、作業環境によって大きく変動します。鹿児島市の公共工事では、日当り施工数量が3.5トンを基準として設定されていますが、これはあくまで標準施工の場合の数値です。現場の施工条件、施工法、制約条件などを十分考慮する必要があります。
参考)官公需情報ポータルサイト
天候は施工量に直接的な影響を与える重要な要素です。悪天候の場合、雨や風が激しくなると作業の進行が制限され、鉄筋の施工量が減少することがあります。逆に天候が好転し作業が順調に進む場合には、施工量も増えることが期待されます。
参考)鉄筋工の日当りと施工量の関係について
作業現場のレイアウトや設備の整備状況も施工量を左右します。鉄筋材料の確保がスムーズであれば作業効率が向上し、施工量を増やすことができます。逆に作業現場における制約や混雑、適切な機材の不足などがある場合は施工量が減少する可能性があります。
建設プロジェクトの進捗やスケジュールによっても施工量は変動します。特定の日には多くの鉄筋を取り扱う必要があり施工量が増えることがありますが、建物の骨組みが完成し次の工程に進む場合などには施工量も減少します。
鉄筋工の歩掛は、工事の予定を立て工事の進捗を把握する上で非常に重要な指標です。歩掛を把握することにより作業にかかる時間や必要な材料を正確に把握でき、工事全体のスケジュールを立てて計画的かつ効率的に作業を進めることが可能となります。
参考)鉄筋工の歩掛:基礎から学ぶ
国土交通省が定める令和6年度の作業日当り標準作業量では、土工における掘削作業などの基準が詳細に規定されています。これらの基準は施工数量や施工方法、障害の有無などによって細かく分類され、現場条件に応じた適切な歩掛の設定を可能にしています。
参考)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001730051.pdf
歩掛の把握は工事の進捗管理においても重要な役割を果たします。工事現場での作業の進捗状況や遅れの有無を正確に把握することで、工事の遅延やトラブルを早期に察知し適切な対策を取ることができます。作業の進捗状況を把握することで、他の作業の予定や関連部署との調整も円滑に行うことができます。
太径鉄筋を使用する場合は施工量の基準が異なります。一般構造物で太径鉄筋混合の場合は5.0トン、切梁のある構造物では4.0トン、場所打杭用かご筋では9.0トンと、通常の鉄筋よりも施工量が増加します。
鉄筋工自身の能力や技術は施工量に直接的な影響を与えます。経験を積み重ねることや継続的なトレーニングによって、作業のスピードや正確さが向上し施工量を増やすことができます。効率的な作業手法や工夫を取り入れることも重要で、効率的な鉄筋のカットや組み立て方法の確立、作業工程の最適化などが挙げられます。
鹿児島県の鉄筋専門業では、主筋自動曲げ機を導入することで曲げ加工工程を55%短縮することに成功しました。2〜3名必要としていた作業員が1〜2名で可能となり、他の作業または現場施工に人員を送れるようになりました。曲げ加工において熟練工でなくても精度の高い部材が作れるようになり、若手の担い手不足の解消にも繋がっています。
参考)【平成27年度】作業工程の短縮化と品質・生産性向上による競争…
国土交通省が推進する鉄筋のプレハブ化も生産性向上に大きく貢献しています。鉄筋の配筋・結束作業を工場製作または現場の別ヤードで作業することで、現場鉄筋作業の削減と安全性の向上を実現しています。専門工場の点溶接機械による自動溶接により、現場での1カ所ずつの手作業や高所作業を大幅に削減できます。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001122296.pdf
作業計画の適切な策定と管理も施工量に影響を与えます。施工量を適切に見積もり日々の作業計画を立てることで、作業の優先順位や時間配分を最適化することができます。材料や装置の調達のタイミングや調整も施工量を左右する重要な要素です。
鉄筋工事における安全管理は施工量の維持に不可欠な要素です。作業員全員に対して安全ヘルメット、安全靴、安全ハーネスなどの装備を必ず着用させることで、万が一の事故発生時の被害を最小限に抑えることができます。
参考)鉄筋工事の事故事例と事故を起こさないための安全対策について解…
現場の安全点検を定期的に行い危険箇所を早期に発見し対策を講じることが大切です。特に足場の強度や重機の状態をチェックすることが必要で、これにより作業の中断や遅延を防ぐことができます。安全マニュアルの整備により作業員全員が同じ基準で作業を行うことができ、事故の発生を防止できます。
鉄筋工事特有のリスクとして落下事故や切創事故が挙げられますが、適切な保護具の装着が不可欠です。すべての作業員が足場の上でしっかりとした安全帯を使用すること、鋭利な鉄筋の端部にはキャップを設置して怪我を防ぐことなどが行われています。
参考)鉄筋工事で重要な安全管理
電動工具や重機が使用される際には、慎重かつ正確な操作が求められます。認定を受けた技術者のみが操作を行い、他の作業員は安全距離を取ることで機械からの危険を排除します。作業や移動の際には周囲の仲間に声掛けを行い、互いの動きを常に意識するコミュニケーションも事故防止に繋がっています。
建設業において生産性向上をめざすためにはICTツールの活用が有効です。ICTツールを利用すれば作業者1人当たりの作業効率を高めることができ、現場全体の生産性を向上できます。測量や施工管理、検査などでICTツールを活用することで、鉄筋出来形検測の効率化が実現し施工量の安定化に貢献します。
参考)建設業の生産性向上|鉄筋出来形検測の効率化を解説|建設DX …
国土交通省の鉄筋プレハブ化事例 - 現場作業削減と安全性向上の具体的取り組みが紹介されています
鉄筋工の歩掛の基礎知識 - 工事予定の立て方と進捗管理の詳細な解説があります