積算基準及び歩掛表で正確な工事費用と労務費を算出する方法

積算基準及び歩掛表で正確な工事費用と労務費を算出する方法

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積算基準及び歩掛表の基本と活用方法

積算基準及び歩掛表の重要ポイント
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正確な工事費用算出の基礎

積算基準及び歩掛表は、公共工事や民間工事における適正な価格設定の根拠となる重要な資料です。

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定期的な改定

多くの自治体では毎年10月1日に改定が行われ、最新の市場状況を反映しています。

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労務費算出の指標

歩掛は「人工(にんく)」という単位で表され、1人の作業員が1日(8時間)でできる作業量を示します。

積算基準及び歩掛表の定義と役割

積算基準及び歩掛表とは、建設工事における工事費用を適正に算出するための基準となる資料です。積算基準は工事費用の算出方法や考え方を示し、歩掛表は各作業に必要な労務・材料・機械の数量を標準化したものです。

 

公共工事においては、国土交通省や各自治体が定めた積算基準及び歩掛表が用いられます。例えば、愛知県では「愛知県建設局積算基準及び歩掛表」が使用されており、令和6年10月1日の改定から内容が変更されました。これまで国土交通省の積算基準を準用していた箇所については、国土交通省の積算基準をそのまま使用することとなり、県の「積算基準及び歩掛表」には総則と県独自歩掛のみが掲載されるようになりました。

 

積算基準及び歩掛表の主な役割は以下の通りです。

  • 工事費用の適正な算出
  • 発注者と受注者間の公平性の確保
  • 工事の品質確保
  • 予算管理の効率化

これらの資料を正しく理解し活用することで、建設工事の計画段階から完成に至るまで、適正な価格設定と品質管理が可能となります。

 

積算基準及び歩掛表における労務費の計算方法

歩掛を用いた労務費の計算は、建設工事の積算において非常に重要なプロセスです。歩掛とは、1つの作業にかかる「手間」を数値化したもので、工事費用の見積りを出す際に必要となる積算作業の重要な要素です。

 

労務費を算出する基本的な計算式は以下の通りです。

労務費 = 歩掛(人工) × 労務単価

ここで、人工(にんく)は1人の作業員が1日(8時間)でできる作業量を表し、以下の式で求められます。

人工 = (人数 × 必要作業時間)÷ 8時間

例えば、作業員1人で4時間かかる作業の場合。

(1人 × 4時間)÷ 8時間 = 0.5人工

となります。

 

労務費を正確に算出するための3つのステップは以下の通りです。

  1. 歩掛を適切に把握する:「公共建築工事標準単価積算基準」などの標準歩掛を参考に、自社の状況に合わせて調整します。
  2. 人工を計算する:上記の計算式を用いて、必要な人工を算出します。
  3. 労務単価を乗じる:公共工事設計労務単価などを参考に、適切な労務単価を乗じて労務費を算出します。

なお、労務単価は「公共工事設計労務単価」によるものとされていますが、所定労働時間外の作業や特殊条件による作業等については、労務単価の割増しを行うことができます。

 

積算基準及び歩掛表の最新改定情報と適用時期

積算基準及び歩掛表は、建設業界の状況や経済情勢の変化に対応するため、定期的に改定されています。最新の改定情報を把握することは、正確な積算を行う上で非常に重要です。

 

主な改定時期と最新情報:

  • 愛知県建設局:令和6年10月1日に改定が行われました。この改定では、「積算基準及び歩掛表」の掲載内容が変更され、国土交通省の積算基準を準用していた箇所については、国土交通省の積算基準をそのまま使用することとなりました。県の「積算基準及び歩掛表」には総則と県独自歩掛のみが掲載されるようになっています。
  • 国土交通省:国土交通省の土木工事標準積算基準書(共通編)は令和6年度版が2024年6月に発行されました。この基準書には、「国土交通省土木工事積算基準」を適切に運用していくための補足説明事項や、赤本単独の歩掛、土木工事標準単価、市場単価などが収録されています。
  • 神奈川県企業庁:水道工事積算基準及び標準歩掛表は令和6年7月に改正されました。次回の改正予定は未定とされています。
  • 大阪府:令和6年度建設工事積算基準が公開されています。適用時期や一部異なる部分の読替え規定については、「建設工事積算基準」や「市場単価及び土木工事標準単価の適用時期について」の資料を参照する必要があります。

多くの自治体では、積算基準の改定は原則として毎年10月1日に行われることが多いようです。ただし、国土交通省の4月改定の積算基準については、愛知県建設局では毎年10月1日に適用するとされています。

 

最新の積算基準及び歩掛表を入手するには、各自治体や国土交通省のウェブサイトを確認するか、一般財団法人建設物価調査会などから発行されている書籍を購入する方法があります。

 

積算基準及び歩掛表における端数処理と諸雑費の取り扱い

積算業務において、端数処理と諸雑費の取り扱いは非常に重要な要素です。これらの処理方法を正確に理解することで、積算の精度を高めることができます。

 

端数処理の基本ルール:

  1. 単価表の各構成要素:数量×単価=金額は小数第2位までとし、3位以下は切り捨てます。
  2. 内訳書の各構成要素:数量×単価=金額は1円までとし、1円未満は切り捨てます。
  3. 共通仮設費の率計上の金額:1,000円単位とし、1,000円未満は切り捨てます。
  4. 現場管理費の金額:1,000円単位とし、1,000円未満は切り捨てます。

愛知県建設局における積算単価の端数処理については、専用の資料が公開されています。

 

諸雑費の定義と取り扱い:
諸雑費とは、当該作業で必要な労務、機械損料及び材料等でその金額が全体の費用に比べて著しく小さい場合に、積算の合理化及び端数処理を兼ねて一括計上するものです。

 

諸雑費の計上方法は以下の通りです。

  1. 歩掛表に諸雑費率があるもの:単位数量当りの単価表の合計金額が、有効数字4桁になるように原則として所定の諸雑費率以内で端数を計上します。
  2. 歩掛表に諸雑費率がなく、端数処理のみの場合:単位数量当りの単価表の合計金額が、有効数字4桁になるように原則として端数を計上します。
  3. 内訳表:諸雑費は計上しません。

これらの端数処理と諸雑費の取り扱いは、積算基準によって細かく規定されており、正確な積算を行うためには、これらのルールを厳密に守る必要があります。

 

積算基準及び歩掛表の公表方法と閲覧方法の地域差

積算基準及び歩掛表の公表方法や閲覧方法は、自治体によって異なります。各地域の特性や方針によって、情報へのアクセス方法が変わってくるため、自分の地域や関心のある地域の公表方法を把握しておくことが重要です。

 

主な地域の公表・閲覧方法:
愛知県の場合:
愛知県建設局では、積算基準・設計単価(土木)に関する情報をウェブサイトで公開しています。令和6年10月1日の改定より「積算基準及び歩掛表」の掲載内容が変更され、国土交通省の積算基準を準用していた箇所については、国土交通省の積算基準をそのまま使用することとなりました。県の「積算基準及び歩掛表」には総則と県独自歩掛のみが掲載されています。

 

神奈川県の場合:
神奈川県企業庁では、工事積算に使用している積算基準書や単価表を公表しています。以下のような形で情報が整理されています。

基準書の名称 販売 閲覧 ホームページ 最終改正 次回改正予定
水道工事積算基準及び標準歩掛表 × 新旧、訂正 令和6年7月 未定
利水関係積算基準 × 新旧、訂正 平成29年2月 未定
電気・機械工事標準積算基準書 × 新旧、訂正 令和6年7月 未定

大阪府の場合:
大阪府では、令和6年度建設工事積算基準をPDFファイルで公開しています。適用時期や一部異なる部分の読替え規定については、「建設工事積算基準」や「市場単価及び土木工事標準単価の適用時期について」の資料を参照する必要があります。

 

国土交通省の場合:
国土交通省の土木工事標準積算基準書(共通編)は、一般財団法人建設物価調査会から発行されています。令和6年度版は2024年6月に発行され、書籍として購入することができます。ただし、書店での取り扱いはなく、専門の販売ルートを通じて入手する必要があります。

 

各自治体や機関によって、積算基準及び歩掛表の公表方法(ウェブサイト掲載、閲覧可能、販売など)が異なるため、必要な情報にアクセスする際は、該当する自治体や機関の公表方針を確認することが重要です。また、最新の改定情報を把握するためにも、定期的に各機関のウェブサイトをチェックすることをお勧めします。

 

愛知県の積算基準・設計単価(土木)に関する詳細情報
神奈川県企業庁における工事積算基準等の公表方法の詳細

積算基準及び歩掛表を活用した施工パッケージ型積算方式の導入効果

近年、公共工事の積算方法として「施工パッケージ型積算方式」が導入されています。この方式は従来の積上げ型積算方式と比較して、積算の効率化や透明性の向上などの効果をもたらしています。

 

施工パッケージ型積算方式とは:
施工パッケージ型積算方式は、直接工事費の積算において、複数の基本単価(材料費、労務費、機械経費)をまとめて一つの単価(施工パッケージ単価)として設定する方式です。愛知県建設局では、平成26年10月1日より「施工パッケージ型積算方式」を導入しています。

 

主な導入効果:

  1. 積算業務の効率化

    複数の基本単価をまとめることで、積算作業の手間が大幅に削減されます。これにより、発注者側の業務効率が向上するだけでなく、受注者側も見積りの作成が容易になります。

     

  2. 積算の透明性向上

    施工パッケージ単価は標準化されているため、積算の透明性が高まります。これにより、発注者と受注者の間での価格に関する認識の差が少なくなり、より公平な入札・契約環境が整備されます。

     

  3. 地域特性への対応

    施工パッケージ単価は、地域ごとの特性(労務単価や材料単価の違いなど)を反映させることができるため、より実態に即した積算が可能になります。

     

  4. 積算精度の向上

    標準化された単価を用いることで、積算者による差異が少なくなり、積算精度が向上します。

     

施工パッケージ型積算方式の資料入手方法:
施工パッケージ型積算方式に関する資料(標準単価表等)は、国土技術政策総合研究所のWebページに掲載されています。愛知県建設局のウェブサイトからもリンクが提供されており、最新の情報を入手することができます。

 

この積算方式は、積算基準及び歩掛表を効果的に活用した新しいアプローチであり、今後もさらなる改良や普及が期待されています。建設業に携わる方々は、この方式の特徴や活用方法を理解し、効率的な積算業務に役立てることが重要です。

 

国土技術政策総合研究所の施工パッケージ型積算方式に関する情報