特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法と指定地域と対策事業

特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法と指定地域と対策事業

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特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法と指定

この記事の読みどころ
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法の目的と適用像

「災害防除」と「振興(農業生産力の向上)」を同時に進めるための枠組みを、建築・土木の実務に引き寄せて理解します。

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指定地域と土壌のクセ

台風・多雨×侵食されやすい特殊土壌という前提から、なぜ設計条件が厳しくなるのかを整理します。

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事業と優遇措置の勘所

治山・河川改修・砂防・かんがい排水等の対象事業と、国負担割合のかさ上げ等の“資金面の設計条件”を押さえます。

特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の目的と災害防除

特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法(通称:特土法)は、特殊土壌地帯に対して「適切な災害防除」と「農地改良対策」を樹立し、それに基づく事業を実施することで、地域の保全と農業生産力の向上を図るための法律です。
建築・土木の現場目線で見ると、この法律は「危険が高い地盤・地形条件がまとまって存在する地域に、国の計画と財政措置で継続的に手当てする」ための根拠になっています。
つまり、単に“土が弱い”のではなく、豪雨・台風にさらされやすい気象条件と、侵食を受けやすい土質(火山噴出物等)が重なり、斜面崩壊・土砂流出・河川の土砂堆積などが連鎖しやすい地域を想定している点が重要です。
建築従事者にとって直接の「条文適用」場面は少ないかもしれませんが、特土法に基づく事業が進む地域では、周辺インフラ(河川、砂防、治山、農地保全)が段階的に更新され、宅地・造成・道路計画の前提条件が変わることがあります。


さらに、災害防除に関する対象事業として、治山事業・河川改修事業・砂防事業などが例示されており、発注者側(国・自治体)が「この地域は特土法の文脈で説明できる」という状態を作りやすいのも実務上のポイントです。


設計協議の場では、計画高水や土砂移動の想定を“通常地域の経験則”だけで押し切らず、上流の治山・砂防計画、河道の改修方針などをセットで確認し、外力条件の妥当性を説明できるようにしておくと手戻りが減ります。


参考:法律の条文(目的・指定・計画・国土審議会などの全体像)
e-Gov法令検索:特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法

特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の特殊土壌と指定地域

特土法が想定する「特殊土壌地帯」は、①台風来襲等で雨量がきわめて多い、②特殊な火山噴出物等の土壌に覆われ侵食を受けやすい、結果として③災害が発生しやすく農業生産力が低い、という条件で説明されています。
総務省の概要資料では、全域指定県(島根・愛媛・高知・宮崎・鹿児島〔奄美除く〕)と、一部指定県(静岡・兵庫・鳥取・岡山・広島・山口・福岡・熊本・大分)が整理されています。
この「指定」の情報は、建築計画の初期段階(用途検討、造成難易度、盛土・切土の比率、排水計画の思想)で効いてきます。
たとえば、同じ斜面地でも、侵食されやすい土壌に豪雨が重なる地域では、裸地期間の管理(仮設排水、法面養生、沈砂池、濁水処理)の“要求水準”が実質的に上がり、工程・コスト・安全管理が連動して厳しくなります。


また、台風・多雨が前提の地域では、「雨が降ったら止める」ではなく「降っても破綻しない仮設を組む」方向へ発想を切り替える必要があり、現場の段取り(資材の先行手配、シート養生、切盛境界の処理)も変わります。


指定地域かどうかは、行政協議の会話の入口にもなるため、プロジェクトの説明資料の前提条件として明記しておくと、発注者・設計者・施工者の共通認識が作りやすくなります。


参考:指定県や対象事業、優遇措置の概要が1枚で把握できる資料
総務省:「特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法」の概要(PDF)

特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の対策事業と事業計画

特土法は、国が定める事業計画に基づいて公共事業を進める枠組みであり、対策の対象として「災害防除(治山・河川改修・砂防等)」と「農地改良(かんがい排水、畑作振興等)」が整理されています。
建築従事者が押さえるべきは、「個別現場の対策(擁壁・排水・杭・地盤改良)」だけで完結しないという点です。
上流の治山、途中の砂防、下流の河川改修、さらに農地・水路・ため池等の保全整備が進むと、流域全体で土砂・水の挙動が変化し、結果として宅地側のリスク評価や維持管理計画もアップデートが必要になります。
実務的には、次のような確認が“後から効く”ことが多いです。


  • 計画地の上流に、砂防堰堤や治山ダムなどの整備が予定・進行しているか(完成時期も含む)。
  • 河川改修の方針(掘削・拡幅・護岸更新)が周辺の排水放流条件に影響しないか。
  • 農地改良や排水路整備が、濁水処理計画や仮設排水のルートに影響しないか。

特土法の世界観は「農地のための法律」と誤解されがちですが、実際には“流域の土砂災害リスク”を抑える公共事業群がパッケージ化されているため、建築計画でも外せない前提になり得ます。


特に造成を伴う案件では、行政が説明責任を果たすための根拠として、特土法の計画や指定の話が引用されることがあり、協議資料の論点整理がしやすくなります。


特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の国の負担割合と優遇措置

総務省の概要資料では、特土法に基づく公共事業に対して、国の負担割合のかさ上げ等が措置されることが示されています。
具体的には「後進地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律」の適用による国負担の嵩上げや、地方交付税の特例(例:農地保全整備のシラス対策事業)などが挙げられています。
ここは建築従事者にとって“設計計算”そのものよりも、事業化・予算化のロジックとして効くポイントです。
なぜなら、インフラの防災対策は「必要性があっても予算が付かず遅れる」ことが現場のリスクになりますが、特土法の枠組みがある地域では、計画→事業→財源措置の説明線が通りやすく、整備が継続しやすい構造があるからです。


民間工事でも、周辺公共事業(道路・河川・砂防・排水路)の整備時期に合わせて、仮設計画や搬入計画、土量計画を再設計できれば、施工リスクとコストの両方を抑えられる場合があります。


また、発注者が自治体の場合は、補助制度や交付税措置をにらんだ事業スキームの中で工事が組まれるため、工期設定や出来高の考え方にも影響が出やすい点は、施工計画段階で共有しておくと安全です。


特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法と施工計画の独自視点

検索上位の解説は「法律の目的・指定・制度概要」に寄りがちですが、現場に効く独自視点としては、“特土法は地盤の弱さを理由に、仮設を強く作る言い訳を与えてくれる”という点が挙げられます。
つまり、台風・多雨と侵食されやすい特殊土壌が前提の地域では、仮設排水や濁水処理、法面養生、残土置場の雨水対策を厚くしても「過剰」と言われにくく、説明責任を果たしやすい土台になります。
設計変更や追加費用の協議でも、単なる現場都合ではなく「地域特性(指定地域の前提条件)に適合させるため」という整理ができ、合意形成が進むケースがあります。
実務で使える“考え方の型”を、あえて手順化すると次の通りです。


    1. 計画地が指定地域に該当するかを早期に確認し、社内のリスク評価シートに反映する。
    1. 仮設計画の重点を「雨水」「土砂」「濁水」に置き、裸地期間を短縮する工程(先行植生・早期舗装・段階開放)を検討する。
    1. 外力条件(豪雨時の流入・越流・洗掘)を“最大級”で一度当て、破綻モード(崩れる場所・溢れる場所)を先に潰す。
    1. 近隣説明では、指定地域の前提(台風・多雨×侵食されやすい土壌)を踏まえた濁水・騒音・安全対策として語り、理解を得る。

「法律を知ること」が直接の設計基準になるとは限りませんが、現場の安全と品質を守るための“説明可能な根拠”を増やすことは、施工管理・設計監理の両面で効いてきます。


特に、台風シーズンの工程管理や、法面の保護工をどこまで先行するかの判断で迷ったとき、特土法の想定する地域像に立ち返ると、意思決定がブレにくくなります。