tpys規格配管用ステンレス鋼管選定ガイド

tpys規格配管用ステンレス鋼管選定ガイド

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tpys規格配管選定

tpys規格配管の基本情報
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TPY規格概要

配管用溶接大径ステンレス鋼管の規格で350A以上に適用

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TPS規格概要

シームレスパイプ(継ぎ目なし)の配管用ステンレス鋼管

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JIS規格基準

JIS G 3468とJIS G 3459による厳格な品質管理

tpys規格基本概要と特徴

tpys規格は、配管用ステンレス鋼管において重要な位置を占める規格体系です。この規格は主にTPY(Tube Pipe Yousetsu)とTPS(Tube Pipe Seamless)の2つの主要カテゴリに分類されます。

 

TPY規格は「配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管」として定義され、主に350A以上の大径配管に使用されます。一方、TPS規格はシームレスパイプ(継ぎ目のないパイプ)として製造され、高い信頼性が要求される配管システムに採用されています。

 

これらの規格の最大の特徴は、以下の点にあります。

  • 耐食性の優秀さ - ステンレス鋼特有の耐腐食性能
  • 高温・低温対応 - 幅広い温度範囲での使用が可能
  • 高圧対応 - 圧力配管での安全性確保
  • 衛生性 - 食品・薬品分野での衛生管理対応

金属加工従事者にとって重要なのは、これらの規格が単なる寸法規定ではなく、材質特性や製造方法まで包含した総合的な品質基準であることです。

 

tpys規格JIS規格詳細仕様

tpys規格の根幹となるJIS規格について詳しく解説します。

 

JIS G 3468(SUS-TPY)
TPY規格の基準となるJIS規格で、配管用溶接大径ステンレス鋼管の仕様を定めています。この規格では以下の項目が詳細に規定されています。

  • 化学成分の範囲
  • 機械的性質の基準値
  • 寸法許容差
  • 表面仕上げ品質
  • 試験方法

JIS G 3459(SUS-TP)
TPS規格の根拠となる規格で、配管用ステンレス鋼管全般を対象としています。特にシームレス管(TPS)と溶接管(TPA)の区別が明確に定められています。

 

興味深い事実として、同じ呼び径・スケジュールでもTPSとTPAでは肉厚が微妙に異なります。例えば32Aスケジュール40の場合。

  • SUS304TPS:外径42.7mm×肉厚3.6mm
  • SUS304TPA:外径42.7mm×肉厚3.5mm

この0.1mmの差は製造方法の違いによるもので、シームレス管の方がわずかに肉厚となっています。

 

認証と検査体制
JIS規格品には必ず認定マークが付与され、製造ロットごとの材料証明書(ミルシート)が発行されます。これにより品質の追跡可能性が確保されています。

 

tpys規格材質選定ポイント

tpys規格における材質選定は、使用環境と要求性能に基づいて慎重に行う必要があります。

 

主要材質の特性比較
SUS304系。

  • 最も汎用的なオーステナイト系ステンレス鋼
  • 優れた耐食性と加工性
  • 給水・給湯配管に最適
  • コストパフォーマンスが良好

SUS316系。

  • モリブデンを添加した高耐食性ステンレス鋼
  • 海水や酸性環境での使用に適している
  • 化学プラントや海洋構造物で採用
  • SUS304比で約1.5倍のコスト

SUS315J1/J2系。

  • 温水配管専用に開発された材質
  • 高温での長期安定性に優れる
  • 給湯システムでの採用実績が豊富

選定時の重要な判断基準
🔍 使用温度範囲の確認

  • 常温~80℃:SUS304で十分
  • 80℃~150℃:SUS315J1/J2を推奨
  • 150℃以上:SUS316または特殊合金を検討

🔍 腐食環境の評価

  • 一般大気:SUS304
  • 工業地帯・海岸部:SUS316
  • 化学物質接触:材質適合性データ要確認

🔍 圧力条件の検討

  • 低圧(0.7MPa以下):薄肉管(5S、10S)
  • 中圧(1.0MPa以下):標準管(20S、40S)
  • 高圧(1.0MPa超):厚肉管(80S以上)

経験上、材質選定で最も見落とされがちなのが「将来の使用条件変更」です。初期投資を抑えるために過小仕様で設計し、後に配管交換が必要になるケースが散見されます。

 

tpys規格サイズ肉厚一覧表

tpys規格における寸法体系は、呼び径とスケジュール番号の組み合わせで表現されます。

 

呼び径表示方法

  • A呼び:20A、25A、32A(ミリメートル系)
  • B呼び:3/4B、1B、1-1/4B(インチ系)

主要サイズの寸法一覧

呼び径 スケジュール 外径(mm) 肉厚TPS(mm) 肉厚TPA(mm)
32A 40S 42.7 3.6 3.5
50A 40S 60.5 3.9 3.9
80A 40S 89.1 5.5 5.5
100A 40S 114.3 6.0 6.0
150A 40S 165.2 11.0 12.0
200A 40S 216.3 8.2 8.2

スケジュール番号と圧力等級
スケジュール番号が大きいほど肉厚が厚くなり、使用可能圧力が高くなります。

  • Sch5S: 最薄肉、低圧用途
  • Sch10S: 薄肉、一般配管用
  • Sch20S: 標準肉厚、中圧対応
  • Sch40S: 厚肉、高圧対応(最も一般的)
  • Sch80S: 極厚肉、超高圧用途

重量計算の実用公式
配管重量(kg/m) = (外径 - 肉厚) × 肉厚 × 0.02491 × 比重
SUS304の比重は7.93なので、例えば32A-40Sの場合。
(42.7 - 3.6) × 3.6 × 0.02491 × 7.93 = 27.8kg/m
この計算は施工計画や運搬計画において重要な基礎データとなります。

 

在庫管理のコツ
実務では以下のサイズが高頻度で使用されるため、優先的に在庫確保することを推奨します。

  • 25A、32A、50A、80A(Sch40S)
  • 100A、150A(Sch40S、Sch80S)

tpys規格独自加工技術活用法

tpys規格配管を用いた独自の加工技術について、現場で培われた実践的なノウハウを紹介します。

 

🔧 プレハブ加工での品質向上テクニック
従来の現場溶接に対し、工場でのプレハブ加工を活用することで、tpys規格配管の性能を最大限に引き出すことが可能です。特に以下の技術が有効です。

  • 自動溶接による均一品質: TIG自動溶接機を使用し、溶接部の機械的性質を母材と同等レベルまで向上
  • 熱処理の最適化: 溶接後の応力除去焼鈍により、長期耐久性を向上
  • 非破壊検査の全数実施: 浸透探傷試験やX線検査による品質保証

🛠️ 特殊環境対応の表面処理技術
tpys規格配管に対する独自の表面処理により、さらなる性能向上が期待できます。
電解研磨仕上げ

  • 表面粗さRa0.1μm以下を実現
  • 清浄性が要求される医薬品・食品分野で威力発揮
  • 汚れの付着を劇的に低減

パッシベーション処理

  • 酸洗処理により不働態皮膜を強化
  • 初期耐食性を標準品の約1.5倍に向上
  • 海洋環境や化学プラントでの採用事例増加

⚡ 溶接技術の革新的アプローチ
tpys規格配管の溶接において、以下の先進技術が注目されています。
パルスTIG溶接

  • 熱入力を30%削減し、変形を最小化
  • 薄肉配管での溶接品質が飛躍的に向上
  • 自動化との相性も良好

レーザー溶接の応用

  • 高速溶接による生産性向上
  • 狭開先溶接による材料節約
  • 溶接変形がほぼゼロ

🎯 コスト最適化の実践手法
tpys規格配管を用いたプロジェクトでのコスト管理において、以下の手法が効果的です。

  • 材質グレードダウン検討: 過剰仕様の見直しにより最大30%のコスト削減
  • サイズ統一による購買効率化: 調達ロットの集約で単価10-15%削減
  • 端材活用システム: 切断端材のデータベース化により材料歩留まり向上

これらの技術は一般的な教科書には記載されていない、現場の実践から生まれた貴重なノウハウです。特に大型プロジェクトにおいては、これらの技術の活用により、品質向上とコスト削減を同時に実現することが可能になります。

 

tpys規格配管の真の価値は、単に規格を満たすことではなく、これらの応用技術と組み合わせることで初めて発揮されます。金属加工従事者として、常に新しい技術動向に注目し、自社の競争力向上につなげていくことが重要です。