

つや消し仕上げ塗料は、光沢が低いぶん「粗」が隠れると思われがちですが、実際は下地の吸い込み差や微細な凹凸が仕上がり(艶ムラ、色ムラ)として出やすいタイプです。
そのため、最初に確認するべきは“下地が均一に塗料を受け止める状態か”で、ここが曖昧なまま上塗りだけ丁寧にしても限界があります。
下地確認で外せないのは「粉化(チョーキング)」「吸い込みの強弱」「巣穴・不陸」「含水率」「アルカリ(pH)」です。関西ペイントのつや消し系仕上塗材の資料では、モルタル・コンクリート素地は pH10以下、含水率10%以下などの条件を示したうえで施工するよう注意しています。特に“吸い込みが著しい下地”や“巣穴の目立つ下地”は置換発泡が出る可能性があるため、シーラーを必ず塗装する旨も明記されています。
つまり、つや消し仕上げ塗料のトラブルは「上塗りの腕」より先に「下地の状態と下塗りの選択」で決まりやすい、という整理が実務的です。
一方で“シーラーレス”を謳う製品もあります。日本ペイントの軒天専用つや消し塗料では、改修塗装で旧塗膜が活膜の場合に限り、シーラー工程を省けるとされています。
ただし同ページ内でも、粉化している場合や吸い込みが著しい場合は水性カチオンシーラーを必ず使用する、と明確に条件が付けられています。ここを読み飛ばすと「仕様上OKのはずが、現場ではNG」というズレが起きます。
現場向けに、判断を早くするための目安を箇条書きにします。
参考:モルタル・コンクリートのpH/含水率条件、吸い込み・巣穴での置換発泡注意など(施工条件の根拠)
https://asset.kansai.co.jp/uploads/products/decorative/fm/deco_pdf/AQBD02.pdf
つや消し仕上げ塗料の施工は、基本的に「撹拌→規定希釈→工程間の乾燥→塗り重ね」で、特別な魔法はありません。
ただ、つや消しは“光が拡散して見える”仕上げなので、ローラーの走らせ方・塗り継ぎ・膜厚差が、そのまま表情差(ムラ)になって残りがちです。
ローラー施工で効くのは「塗り継ぎ位置」「面の区切り」「同一条件の維持」です。例えば、製品情報として日本ペイントのつや消し塗料では、平滑仕上げは“はけ、ウールローラー”で希釈率0~2%と示され、工程ごとの使用量や乾燥時間も提示されています。
ここで重要なのは、希釈を増やして伸ばしてしまうと膜厚が落ちて下地の影響を拾いやすくなり、逆に厚付けで追い込みすぎるとローラーマークや肌が乱れて「艶の見え方」が変わる点です。
施工の“再現性”を上げるために、現場で決めておくと強いルールをまとめます。
参考:希釈率・乾燥時間・使用量など、施工条件を具体的に確認したいとき(仕様組み・見積根拠)
https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/178/
つや消し仕上げ塗料で一番クレームになりやすいのは「艶ムラ」「擦れ跡(バーニッシュ痕)」「補修痕」ですが、ここに“白化(曇り)”が加わると見た目のダメージが大きくなります。
白化は、湿度や温度などの条件で塗膜表面が曇ったように見える現象として知られ、低温・高湿度側で出やすい傾向があります。
実務で役立つのは「現象を“材料”だけで片付けず、条件と手順に分解する」ことです。関西ペイントの資料では、気温5℃以下・湿度85%RH以上など条件が悪い場合は塗装中止とされ、塗り替え時は高圧水洗後に1日乾燥などの注意が示されています。
つまり、艶ムラや白化を「塗料のせい」にする前に、湿度・素地乾燥・洗浄後乾燥・インターバル・換気(通風)を点検するのが近道です。
現場でのチェックリスト(朝礼レベルで回せる形)に落とすとこうなります。
「意外なポイント」として、つや消しは“汚れが目立たない”より“反射が少ないのでムラが見えにくい角度もある”が正確です。照明が斜めに当たる通路・階段・長い廊下では、艶ムラが帯状に浮くことがあるので、試し塗りは現場照明条件で確認した方が安全です。
検索上位の一般解説は「艶消し=落ち着いた質感」「外壁でも人気」といった話が中心になりがちですが、施工者目線で差が出るのは“つや消し剤(フラットベース等)での艶調整”をどう扱うかです。
既存塗料に艶消し剤を混ぜて艶を落とすと、在庫の活用や特注回避に役立つ一方、配合の考え方を間違えると耐候性や外観が不安定になります。
例えば日本ペイントの自動車補修向けのつや消し剤(フラットベース系)では、つや消し程度に応じて混入量を調整すること、加温でつや消し効果がなくなる点、クリヤーに多量混合すると環境条件によって耐候性低下の可能性がある点など、注意が明示されています。
建築でも「艶を落としたいから多めに入れる」という発想は危険で、艶の設計は“製品として設計されたつや消し仕上げ塗料”を優先し、艶調整は最終手段として扱うのが事故を減らします。
また、艶調整の落とし穴は“施工直後の見え方”と“硬化後の見え方”がずれることです。マット成分の分布、乾燥条件、塗膜のレベリングの差で、翌日に艶が揃って見えることもあれば、逆にムラが育つこともあります。
そのため艶調整を使う現場では、次の運用が現実的です。
参考:つや消し剤の混入量調整、加温で効果がなくなる注意、耐候性低下の可能性(艶調整のリスク管理)
https://www.nipponpaint.co.jp/products/automotive/62/
✅ 現場での実装としては、「下地(含水率・pH・粉化)→シーラー要否→同一条件での塗り重ね→気象管理→補修設計」の順に固めると、つや消し仕上げ塗料のトラブルはかなり減らせます。