
ワイヤーロープの規格は、日本工業規格(JIS)によって体系的に定められています。主要な規格として以下が存在します:
これらの規格は、機械、エレベーター、建設、船舶、漁業、林業、鉱業、索道などに用いる一般用ワイヤーロープについて詳細に規定しています。
ワイヤーロープの種別は、切断荷重のクラス別によって分類され、E・G・A・Bの4種に区分されています。各種別の特徴は以下の通りです:
種別 | 切断強度 | 適用範囲 | 表面処理 |
---|---|---|---|
E種 | 1320N/mm²級 | 汎用 | 裸・めっき |
G種 | 1470N/mm²級 | 中負荷 | めっき |
A種 | 1620N/mm²級 | 高負荷 | 裸・めっき |
B種 | 1770N/mm²級 | 最高負荷 | 裸のみ |
この分類により、使用環境と負荷条件に応じた最適な選択が可能となります。
破断荷重の算定は、素線の断面積と切断強度に基づいて行われます。JIS規格では、公称径に対する標準断面積が明確に定められており、例えば6×19構成の場合:
実際の使用においては、安全係数を6以上確保することが一般的です。これにより、動的荷重や環境要因による劣化を考慮した安全性を確保しています。
構成記号は、ワイヤーロープの内部構造を表す重要な識別子です。主要な構成記号と用途は以下の通りです:
構成記号の読み方として、「6×19」は6本のストランドがあり、各ストランドに19本の素線が配置されていることを意味します。
特に建築現場では、玉掛け作業用として6×24O/O構成が広く使用されており、その理由は適度な柔軟性と強度を併せ持つためです。
材質による分類では、炭素鋼線とステンレス鋼線の二つが主流です。ステンレス製ワイヤーロープ(SUS304製)の規格体系:
興味深いことに、最新の研究では、ワイヤーロープの破断モードが従来の予想と異なり、高速衝撃荷重下では「破断、摩耗、腐食、幾何学的破壊、熱破壊」という5つの典型的な破損形態が観察されています。これは、従来の静的荷重試験だけでは予測できない複雑な破損メカニズムを示唆しており、規格策定においても動的要素の考慮が重要になっています。
建築業界における規格選定では、単なる破断荷重だけでなく、曲げ特性も重要な要素です。特に3×7 19mm径のワイヤーロープでは、モーメント-曲率関係が明確に定義されており、プリストレッチングの効果も考慮された特性評価が行われています。