ワイヤーロープ規格とJIS基準の特徴・種別・破断荷重の解説

ワイヤーロープ規格とJIS基準の特徴・種別・破断荷重の解説

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ワイヤーロープ規格の基礎知識

ワイヤーロープ規格の重要性
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JIS規格による統一基準

建築現場での安全性確保と品質統一のための規格体系

破断荷重クラス分類

E・G・A・B種による強度レベルの明確な区分

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用途別構成種類

エレベーターから玉掛け作業まで幅広い用途への対応

ワイヤーロープ規格のJIS基準体系

ワイヤーロープの規格は、日本工業規格(JIS)によって体系的に定められています。主要な規格として以下が存在します:

  • JIS G 3525:一般用ワイヤーロープの基本規格
  • JIS G 3546:異形線ワイヤーロープ規格
  • JIS B 8817:ワイヤーロープスリング規格
  • JIS G 3557ステンレスワイヤーロープ規格

これらの規格は、機械、エレベーター、建設、船舶、漁業、林業、鉱業、索道などに用いる一般用ワイヤーロープについて詳細に規定しています。

ワイヤーロープ規格の種別分類システム

ワイヤーロープの種別は、切断荷重のクラス別によって分類され、E・G・A・Bの4種に区分されています。各種別の特徴は以下の通りです:

種別 切断強度 適用範囲 表面処理
E種 1320N/mm²級 汎用 裸・めっき
G種 1470N/mm²級 中負荷 めっき
A種 1620N/mm²級 高負荷 裸・めっき
B種 1770N/mm²級 最高負荷 裸のみ

この分類により、使用環境と負荷条件に応じた最適な選択が可能となります。

 

ワイヤーロープ規格の破断荷重計算と安全係数

破断荷重の算定は、素線の断面積と切断強度に基づいて行われます。JIS規格では、公称径に対する標準断面積が明確に定められており、例えば6×19構成の場合:

  • 公称径6mm:断面積14.3mm²、破断力G種18.1kN
  • 公称径10mm:断面積51.0mm²、破断力G種67.7kN
  • 公称径20mm:断面積204mm²、破断力G種271kN

実際の使用においては、安全係数を6以上確保することが一般的です。これにより、動的荷重や環境要因による劣化を考慮した安全性を確保しています。

 

ワイヤーロープ規格の構成記号と用途区分

構成記号は、ワイヤーロープの内部構造を表す重要な識別子です。主要な構成記号と用途は以下の通りです:

  • 6×7構成:鉱山巻上げ、索道、スキーリフト用
  • 6×19構成:巻上策、林業作業索用
  • 6×24構成:玉掛け用
  • 6×37構成:玉掛け用、巻上げ索用
  • 8×19構成:エレベーター用で柔軟性重視

構成記号の読み方として、「6×19」は6本のストランドがあり、各ストランドに19本の素線が配置されていることを意味します。

 

特に建築現場では、玉掛け作業用として6×24O/O構成が広く使用されており、その理由は適度な柔軟性と強度を併せ持つためです。

ワイヤーロープ規格の材質特性と環境適合性

材質による分類では、炭素鋼線とステンレス鋼線の二つが主流です。ステンレス製ワイヤーロープ(SUS304製)の規格体系:

  • 7×7構成:河川・鉄鋼・林業・レジャー用静索・動索
  • 7×19構成:玉掛け用途での使用
  • 7×37構成:高負荷環境での使用

興味深いことに、最新の研究では、ワイヤーロープの破断モードが従来の予想と異なり、高速衝撃荷重下では「破断、摩耗、腐食、幾何学的破壊、熱破壊」という5つの典型的な破損形態が観察されています。これは、従来の静的荷重試験だけでは予測できない複雑な破損メカニズムを示唆しており、規格策定においても動的要素の考慮が重要になっています。
建築業界における規格選定では、単なる破断荷重だけでなく、曲げ特性も重要な要素です。特に3×7 19mm径のワイヤーロープでは、モーメント-曲率関係が明確に定義されており、プリストレッチングの効果も考慮された特性評価が行われています。