

実は日本製トイレに慣れたあなたが欧州製を選ぶと工事費が2倍以上になる可能性があります。
ヨーロッパのトイレメーカーは世界市場で大きな存在感を持っています。世界シェアでは1位がアメリカのKOHLER(18.90%)ですが、7位にスペインのRoca(4.47%)、8位にスイスのGeberit(2.83%)、9位にドイツのVilleroy & Boch(2.52%)、10位にドイツのDuravit(1.45%)と、上位10社のうち4社を欧州勢が占めています。
欧州メーカーの特徴は、地域ごとに強固な地盤を持っている点です。ドイツではデュラビットとビレロイ&ボッホが強く、北欧ではサニテック(フィンランド)、南欧では業界最大手のロカが圧倒的、東欧はポーランドのセルサニットがシェアを握っています。地域によって支配的なブランドが異なるということですね。
日本企業のTOTO(10.61%)やLIXIL(13.59%)も世界2位・3位に入っていますが、欧州市場では苦戦しています。TOTOのドイツ市場での便器シェアはわずか2%程度で、欧州での売上高は40億円規模ながら営業赤字が続いている状況です。
欧州のトイレで最も特徴的なのが、タンクを壁の中に埋め込む「ビルドイン方式」です。日本のタンクレストイレとは異なり、便器の後ろの壁内部に貯水タンクが隠されているため、トイレ空間がすっきりと美しく見えます。
デザインは洗練されています。
参考)https://www.tform.jp/pdf/velis_leaf.pdf
この埋め込み式タンクで圧倒的なシェアを持つのがスイスのGeberit(ゲベリット)です。ゲベリットは1874年創業の老舗で、「インサイドウォール」と呼ばれる埋め込みタンク技術と、水量をコントロールする「ダブルフラッシュトイレ」で業界をリードしています。欧州の工事会社は3万〜4万社に及び、ゲベリットのシステムを採用している業者が多いため、「トイレ業界のインテル」とも呼ばれるほどです。
ただし、このシステムには注意点があります。水の流れが悪くなっても自分で直すことができず、必ず専門業者を呼ぶ必要があります。
つまり修理コストが高くなるということです。
一度設置すれば修理やサービスで安定した収益が見込めるため、メーカー側にもメリットがあります。
欧州を代表するトイレメーカーを具体的に見ていきましょう。
Roca(ロカ) 🇪🇸
スペイン本拠の衛生陶器メーカーで、南欧では圧倒的なシェアを誇ります。衛生陶器だけでなく配管や浴室付属品も製造し、世界シェア7位(4.47%)の実力を持っています。
Duravit(デュラビット) 🇩🇪
1817年創業のドイツの伝統企業です。フィリップ・スタルクをはじめとする国際的に著名なデザイナーとコラボレーションし、世界130カ国以上で製品を展開しています。洗練されたモダンデザインで多くの欧州デザイン賞を受賞しており、ブランド力に優れています。
参考)DURAVIT(デュラビット)|美しいデザインの洗面ボウルな…
Villeroy & Boch(ビレロイ&ボッホ) 🇩🇪
ドイツの高級陶磁器ブランドとしても知られるメーカーで、世界シェア9位(2.52%)です。ドイツ国内でデュラビットと並んで強い地位を持っています。
Geberit(ゲベリット) 🇨🇭
前述の通り、埋め込みタンクシステムで圧倒的な存在感を持つスイス企業です。便器そのものよりも、壁内の配管・タンクシステムで市場を支配しています。衛生陶器メーカーもゲベリットを無視して営業できない状況です。
GROHE(グローエ) 🇩🇪
ドイツで生まれた世界最大級シェアの水まわり製品メーカーです。2014年にLIXILのグループ会社となり、LIXILの技術とグローエの洗練されたデザインを融合した「センシア アリーナ」を日本でも販売しています。
参考)SENSIA ARENA
欧州製トイレの本体価格は、日本製と比べて高額になる傾向があります。例えばデュラビットの洗面ボウルだけでも6万円〜28万円、キャビネット付きだと22万円〜51万円程度です。これは洗面器の価格ですから、トイレ本体はさらに高額になります。
日本のトイレリフォーム費用相場は、便器交換のみで13万〜35万円、便器と内装込みで14万〜32万円が一般的です。タンクレストイレでも工事費込みで13万〜45万円程度が目安となっています。
ボリュームゾーンは15〜50万円です。
しかし欧州製の埋め込み式タンクを採用する場合、壁の内部工事が必要になります。壁を開けてタンクを埋め込み、配管を接続し、また壁を閉じる作業が発生するため、通常の便器交換よりも大幅に工事費が増えます。専門的な知識を持つ業者が少ない日本では、対応できる施工業者を探すこと自体が困難です。
また、ゲベリットのような埋め込みタンクは、一度設置すると交換が容易ではありません。修理も専門業者を呼ぶ必要があり、長期的なメンテナンスコストも考慮する必要があります。
初期費用だけで判断しないことが大切です。
欧州製トイレを日本の住宅に導入する際には、いくつかの重要な注意点があります。
洗浄便座(ウォシュレット)との相性問題
日本では普及率82.5%に達する温水洗浄便座ですが、欧州ではほとんど普及していません。
理由は複数あります。
まず欧州の水質はカルシウムなどミネラル分が多く、ノズルが目詰まりしやすいという問題があります。配管や衛生面への懸念、コンセント位置の問題も指摘されています。
参考)https://www.haikanbuhin.com/blog/post-437/
そのため欧州製便器に日本の洗浄便座を後付けしようとしても、形状が合わない、電源の位置が適切でない、といった問題が発生する可能性があります。洗浄便座の使用を前提とするなら、事前に互換性を確認することが必須です。
住宅設備の専門性の違い
欧州の住宅設備メーカーは、トイレや台所など専門分野に特化した企業が多く、TOTOやLIXILのような「総合型」は少ない傾向です。つまり便器はA社、タンクはB社、配管はC社というように、複数のメーカーを組み合わせる必要があるケースもあります。日本の施工業者がこうした組み合わせに慣れていない場合、施工トラブルのリスクが高まります。
バスルーム全体としての設計思想
欧州ではトイレを単体で考えるのではなく、バスルーム空間全体の一部として捉える文化があります。衛生陶器というカテゴリーではなく、インテリアや家具と同じ感覚で選ばれます。そのため、便器だけを欧州製にしても、周囲の洗面台や浴室設備とのデザイン統一が取れず、中途半端な仕上がりになる可能性があります。トイレ単体ではなく、バスルーム全体での調和を考える必要があるということですね。
参考)TOTOのトイレ製品、欧州で狙う「華麗な地位」 - 日本経済…
トイレ・便器メーカー8社の比較一覧
日本で施工可能な国内外メーカーの詳細比較情報が掲載されています。
欧州製トイレに興味があっても、すべてが日本で入手できるわけではありません。ただし一部のブランドは日本に正規代理店があり、購入・施工が可能です。
GROHE(グローエ)のセンシアアリーナ
LIXILグループのため、日本でも正規に購入できます。ドイツの美意識と日本の技術が融合したモデルで、洗浄便座機能も搭載されています。グローエ製品なら施工可能な業者も比較的見つけやすいでしょう。
Duravit(デュラビット)製品
セラトレーディング社が日本の正規代理店として扱っています。洗面ボウルやキャビネットは比較的入手しやすく、公式サイトで価格も確認できます。トイレ本体についても問い合わせれば対応可能な場合があります。
KOHLER(コーラー)
アメリカのメーカーですが、株式会社JPKが日本正規代理店として販売しています。「目に見えるものは、すべて美しく」というテーマで、世界中のデザイナーが美を追求した製品を提供しています。
施工を依頼する前に、必ず業者が該当ブランドの施工経験を持っているか確認してください。経験のない業者に依頼すると、納期遅延や施工不良のリスクが高まります。見積もり時に過去の施工実績を尋ねるのが賢明です。
デュラビット公式サイト(日本語)
ドイツ製デザイナーズバスルームブランドの製品情報と取扱店が確認できます。
欧州製トイレは確かに魅力的なデザインと品質を持っていますが、日本の住宅事情や施工体制との相性を十分に検討する必要があります。初期費用だけでなく、長期的なメンテナンスコスト、洗浄便座の有無、施工可能な業者の有無など、総合的に判断することが後悔しないリフォームにつながります。