

FRP防水樹脂材で一番トラブルを減らす近道は、「下地処理=乾燥工程」と捉え直すことです。下地が濡れていると密着不良の原因になり、施工後の剥離や浮きにつながるため、乾燥確認は最優先になります。特にコンクリート(モルタル)下地は、新設時にアク抜きとして一定期間置く考え方が紹介されており、拙速な工程短縮が後工程の全損に直結します。
下地処理で押さえる具体項目は、現場的には「水分・粉じん・不陸」の3点です。表面の汚れや古い層を除去し、乾燥させ、不陸があればパテやモルタルで平滑にする流れが一般的とされています。さらに、立上りと平場の接点、ジョイント、亀裂、剥離、水が溜まりやすい箇所は“漏水の起点”になりやすいので、工程に入る前にチェックリスト化して見落としを潰すのが安全です。
意外に効く小技として、「乾燥の見立て」を職人の勘だけに寄せすぎないことが挙げられます。雨上がり直後や、朝露が出やすい立地(北側・日陰)では、見た目が乾いていても含水が残りやすいです。工程短縮の圧が強い現場ほど、下地の“乾いたつもり”が残って、後日「空気が入ったようなふくらみ」「白化」「端部の剥がれ」として返ってきます。下地処理に時間を使った現場ほど、最終的に段取りが楽になり、クレーム対応も減ります。
プライマーは、FRP防水樹脂材と下地を“つなぐ接着層”で、ここが雑だと後の積層がどれだけ綺麗でも性能が落ちます。一般的な説明でも、プライマーは下地との密着性を高める材料として位置付けられ、ムラなく均一に塗る重要性が強調されています。さらに、モルタル面の吸い込みを見ながら、十分に染み込ませるように塗布する、という実務的な注意点も示されています。
現場で起きがちな事故は「塗ったのに効いていない」ケースで、原因は大きく2つあります。1つ目は下地側の問題で、粉が浮いている、研磨粉が残っている、油分がある、含水が残る、などでプライマーが“面で効かない”状態です。2つ目は塗布側の問題で、ローラー跡のムラ、端部の塗り残し、乾燥時間の読み違いが重なり、次工程が早すぎたり遅すぎたりします。
意外と見落とされるのが「プライマー後の放置」です。仕様によっては、プライマー塗布後に時間が経ちすぎたり、降雨などで水分に触れると接着力が低下するため、再サンディングや再塗布が必要になる、という注意事項が示されています。工程が詰まった現場ほど、他職の割り込みや天候で“待ち時間”が発生しやすいので、プライマーから先を連続で進められる段取り(人員・材料・養生)を先に固めるのが、品質面でもコスト面でも得です。
参考:ノンスチレン樹脂の特徴・「低臭気」「労働安全衛生法に該当しない」タイプの考え方(材料選定の章の根拠)
環境対応型FRP防水工法(ノンスチレン樹脂)資料
FRP防水は、ガラス繊維(ガラスマット)と樹脂で防水層を作る積層が核です。一般的な施工工程の説明では、ガラスマットを敷設して補強層を形成し、マットの重ね幅を確保することが重要とされています。重ね不足やズレは継ぎ目の弱点になりやすく、そこからクラックや浸水に発展するリスクがあるため、割付と重ね代の管理は“見た目以上に性能直結”です。
また、積層工程では「樹脂に規定量の硬化剤を混ぜ、ムラなく塗布する」「吸い込みが多い場合は再度塗り込む」といった、仕様再チェックと材料使用量の再確認が推奨されています。ここで重要なのは、単に塗る量だけでなく、下地の吸い込みや温度条件に応じて“同じ㎡でも挙動が変わる”点です。吸い込みが激しい面で無理に先へ進むと、後でピンホールや乾きムラとして現れ、トップコートだけでは埋まりません。
脱泡は「仕上げの美観」ではなく「欠陥の除去」です。樹脂中の気泡が残ると、硬化後に空隙として残り、そこが水の通り道になったり、歩行荷重で潰れて割れの起点になります。専用ローラーで気泡を抜く工程が挙げられているのは、FRP防水の性能が“積層の密実さ”に支配されるためです。
FRP防水樹脂材の失敗で多いのが硬化不良で、表面のべたつきや硬化遅れは、性能低下と手直しコストの両方を増やします。一般的な注意点として、主剤と硬化剤の混合比率が適切でない、気温が低すぎる/湿度が高すぎると完全に硬化しないことがある、と説明されています。現場では「混合比は合っていた」つもりでも、攪拌不足、容器の底に未反応が残る、可使時間超過、などで結果が変わります。
さらに厄介なのは、極端な暑さでも反応が素直に進まない事例が報告されている点です。ある施工事例では、猛暑を超えた酷暑期に樹脂の化学反応が遅れる事態が起き、経過観察の上で最終的には性能を発揮した、とされています。つまり「暑ければ早く固まる」「寒ければ遅い」という単純な話ではなく、材料と環境条件の組合せで反応がブレる可能性を前提に段取りする必要があります。
混合に関しては“入れすぎ”も危険です。硬化剤を過剰にすると粘度が上がり、均一な塗布や接着が困難になってムラや空洞ができる可能性がある、という指摘もあります。安全面でも、特定の促進剤と硬化剤の同時混合は厳禁で、直接触れると発火の危険があるため混合手順を守るべき、またウエスや軍手に付着した材料が発熱・着火する可能性があるため水に浸す、といった注意事項が示されています。施工品質だけでなく、火災リスクを現場で“ゼロに寄せる”観点でも、混合手順の標準化(計量器具の分離、混合順、残材処理)が重要です。
検索上位では施工手順や費用が中心になりがちですが、現場で実害が出やすいのは「臭気・VOC・近隣対応」です。FRP系防水用樹脂の成分としてスチレンが特有の臭気を発生し、施工時に周囲の人が異臭として感じる、とする資料もあり、苦情の導火線になりやすい点は無視できません。臭い問題は“我慢してもらう”ではなく、材料選定と工程計画で下げる余地があります。
たとえば、ノンスチレン樹脂の環境対応型FRP防水材は「低臭気」で、従来のポリエステル樹脂より臭気苦情を抑制できる旨が示されています。加えて、その資料では特定化学物質(スチレン・エチルベンゼン)や有機溶剤(トルエン・キシレン)等を含まないこと、そして性能・品質は従来のFRP防水用樹脂と変わらない、と説明されています。つまり、同じ「FRP防水樹脂材」でも“臭気が強い前提”から脱却できる選択肢が現場に出てきており、住宅密集地・学校・病院・商業施設などでは、材料そのものが安全管理とクレームの難易度を変えます。
臭気対策は材料だけで完結しません。換気が不十分な環境では健康影響のリスクがあるので、換気計画(局所排気・全体換気)、作業時間帯、養生の取り回しまで含めて「周囲に出る臭いのピーク」を設計します。低臭気材を使う場合でも、プライマーや洗浄溶剤など周辺材料が匂いの原因になることがあるため、セットで確認するのが実務的です。結果として、工程がスムーズになり、説明責任も果たしやすくなります。
参考:FRP防水の基本工程(下地乾燥→プライマー→補修→積層→配合比の再チェックなど、工程設計の根拠)
FRP防水の施工工程について(森本防水)