

FRP用ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステル系)は、硬化剤(有機過酸化物など)が分解してラジカルが発生し、樹脂側とモノマー側の不飽和基が共重合して三次元網目になって固まる、という「反応そのもの」が品質を支えています。混ぜ方が雑だと、樹脂の一部は十分に反応せず、別の一部は局所的に反応が進みすぎるため、強度・密着・外観が同時に崩れます。反応を“均一に起こす”ことが、建築補修の信頼性に直結します。
現場で最重要なのは「促進剤と硬化剤を直接混ぜない」ことです。促進剤(コバルト系など)と硬化剤(MEKPOなど)を直混合すると爆発的反応の危険があるため、必ず“樹脂に促進剤を混ぜてから、最後に硬化剤を入れる”という順序を守ります。ここを守るだけで、事故リスクと失敗率が大幅に下がります。
参考)https://www.featherfield.co.jp/frp/B01000.html
3液性(樹脂・促進剤・硬化剤)を扱う場合の考え方はシンプルで、「促進剤で反応のスイッチを入れやすくして、硬化剤で実際にラジカルを出す」です。樹脂によって標準添加量は異なりますが、促進剤の目安として0.4%程度とする説明があり、製品ごとの指示を最優先にすべきとされています。指示値から外して“体感で調整”を始めると、冬場の硬化遅れ・夏場の暴走(急激な発熱)・表面欠陥の原因になります。
硬化剤投入後は、可使時間(ゲル化までの時間)が急に短くなります。大量に一括で作るほど発熱がこもって硬化が早くなる、という現象も起きるため、補修や防水のように段取りが多い作業では「小分けにして回す」方が結果的に安定します。実務的にも、500g〜1kgに小分けして硬化剤1%相当を加え、短時間で塗布工程を進める例が示されています。
参考)https://frp-plamare.com/?mode=f16
「固まったのに表面がベタベタする」現象は、FRP用ポリエステル樹脂では珍しくありません。大きな理由は、空気(酸素)があると表面付近の反応が阻害され、表面が完全硬化しにくいと説明されています。ここを知らないと、研磨や上塗り以前に“いつまで経っても触ると張り付く”状態で工程が止まります。
この対策として、空気硬化剤(パラフィン)を最終層に使うという考え方があります。樹脂にパラフィンを約5%程度添加すると、硬化中にパラフィンが表面へ浮き、酸素を遮断する被膜を作って表面を完全硬化させる目的で使う、と説明されています。つまり「積層を続けたい途中層」はノンパラ、「塗り収め・最外層」はインパラ(またはパラフィン添加)という整理にすると、現場で判断が速くなります。
ただし、最外層をパラフィンで“カラッと”硬化させると、表面がコーティング状態になり、その上に別の樹脂や塗料が乗りにくくなる注意点も示されています。上塗りや二次接着を前提とする場合は、最終層の仕様(ノンパラか、研磨して足付けするか、別工法にするか)を最初に決めておく必要があります。ここは段取りミスがクレームに直結しやすいポイントです。
参考)樹脂の種類、ゲルコートとトップコートの違い
意外に見落とされるのが、ゲルコートとトップコートの違いが「パラフィンが入っているかどうか」という整理で説明されている点です。ゲルコートはノンパラで、塗って放置すると硬化後もべたつくため、一般塗装用途ではパラフィン入りのトップコート(インパラ)を使う、というFAQ形式の解説もあります。材料名が違うから別物、と覚えるより「最外層の酸素遮断の有無」という機能差で理解すると、材料手配や仕様書作成が楽になります。
参考)https://frp-plamare.com/?mode=f4
FRP用ポリエステル樹脂は、化学反応で固める材料なので、SDS(安全データシート)に書かれている“禁止事項”を守ることが品質以前に必須です。例として、熱・火花・裸火などの着火源から遠ざける、容器の接地(アース)、防爆型機器の使用、火花を発生しない工具、静電気放電の予防措置などが並んでいます。建築現場では電動工具・延長コード・養生シートなど静電気や火花の要因が多いので、施工班の安全手順に落とし込む価値が高い項目です。
同じくSDSでは、保護手袋・保護眼鏡(保護面)などの着用、取扱い後の洗浄、蒸気・ミストの吸入回避など、個人防護具と換気が繰り返し強調されています。臭気が強い作業ほど「慣れ」で換気が甘くなりがちですが、屋外または換気の良い場所でのみ使用、といった注意も見られます。特に室内・ピット・水槽周りなどでは、送風と排気の配置まで含めて“換気計画”として扱うべきです。
参考)https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/datasheet/262939_3421__SDS.pdf
また、SDSの成分欄にスチレンが含まれる例が示されており、PRTR法の通知物質としての扱いが書かれているものもあります。現場によっては近隣への臭気苦情や、工程中の立入制限など「衛生+近隣対応」も施工品質の一部になります。材料の缶を開ける場所、混合する場所、廃棄物を置く場所を分けるだけでも、トラブルは減らせます。
参考)https://content.misumi-ec.com/image/upload/v1/p/pdf/sds/MJP_JPN_MDM00016488930_01.pdf
硬化しない・固まらないトラブルは、施工者の技能というより「条件が揃っていない」ケースが多いです。基本として、樹脂・促進剤・硬化剤の“どれが不足しても硬化しない”という説明があり、特に促進剤入りかどうかの確認が重要とされています。缶のラベルや仕様書を見ずに“いつもの感覚”で硬化剤だけ入れると、そもそも反応が進まない設計の樹脂だった、という事故が起こりえます。
温度も硬化に強く影響します。熱硬化性の性質から、気温が高いほど硬化が早く、低い冬ほど硬化が遅いという整理が示されています。建築補修では、日陰・北面・躯体が冷えている朝一など、同じ現場でも温度差が大きいので、作業位置と時間帯を織り込んだ配合・段取りが必要です。
参考)硬化剤・促進剤についてパート2 - FRP 自作 DIY 相…
さらに、樹脂にはスチレンが含まれていて、硬化後も微量ずつ揮発していく、というQ&Aもあります。硬化直後に臭いが残る理由を「硬化失敗」と誤認して過剰に研磨・溶剤拭きをするより、換気と養生(近接作業との干渉回避)で工程を組む方が合理的な場合があります。特に建築の居住・稼働中施設では、臭気・VOC対策を工程管理に入れることが、結果としてクレーム抑止になります。
検索上位では「硬化剤〇%」の話が中心になりがちですが、建築従事者の実務で効くのは“二次作業の段取り”です。例えば、最外層をパラフィンで完全硬化させた場合は、表面がコーティングされて上から別の塗料や樹脂が塗布できない、という注意が明記されています。ここを知らずに「仕上げ塗装を後工程で入れる」計画を組むと、足付け・研磨・脱脂の追加が発生し、工期とコストが一気に膨らみます。
そこで実務的には、次のように“工程基準”として整理すると事故が減ります。
また、臭気の観点では「硬化後も微量揮発が続く」という説明があるため、硬化直後に密閉養生すると臭気が抜けにくく、別工事の職種(内装・設備)と衝突することがあります。施工ヤードの確保、換気ルート、硬化後の放置時間(臭気のピークを跨ぐ)を、材料仕様の一部として工程表に書いておくと、現場全体の摩擦が減ります。
安全と品質を両立するなら、「混合順序」「最外層の酸素遮断」「SDSの火気・換気・保護具」を“三点セット”で周知しておくのが現実的です。どれか一つだけ真面目でも、残りが穴だとトラブルが起きやすいので、朝礼のKYや作業手順書に落とす価値があります。misumi-ec+1
SDS(火気・換気・保護具の根拠、成分と注意点)
https://content.misumi-ec.com/image/upload/v1/p/pdf/sds/MJP_JPN_MDM00016488930_01.pdf
パラフィン(空気硬化剤)で表面ベタつきを止める考え方(最終層・トップコートの整理)
https://www.featherfield.co.jp/frp/B01000.html
ゲルコートとトップコートの違い(ノンパラ/インパラ、上塗り不可など実務注意)
樹脂の種類、ゲルコートとトップコートの違い