
モノマーとは「一つ」を意味する単量体のことで、化学的に小さな分子単位を指します。一方、ポリマーは「多数」を意味し、多くのモノマーが繰り返し結合してできた高分子化合物で、重合体とも呼ばれます。モノマーの分子量は小さく単純な構造をしていますが、ポリマーは非常に高い分子量を持つ複雑な分子です。
参考)ポリマーとモノマーの違いを徹底解説!基礎から学ぶ化学の世界 …
具体例として、エチレンというモノマーが多数結合することで、ポリエチレンというポリマーが形成されます。この構造の違いにより、モノマーは液体やガスとして存在しやすく反応性が高い一方、ポリマーは固体として存在し高強度や高耐久性などの特性を示します。
参考)モノマーとポリマーの違いとは?分かりやすく解説!
語源的には、モノマーの「モノ」は「一つ」を、ポリマーの「ポリ」は「たくさん」を意味しており、この言葉の由来からも両者の違いが理解できます。モノマーが基礎単位としてポリマーを形成し、その性質や用途に多大な影響を与える関係性があります。
参考)【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第1回 モノマー・ポリ…
モノマーは比較的単純な化学構造を持ち、一つの化学単位から成ることが多い物質です。分子量が小さいため、常温で液体やガス状態で存在することが一般的で、化学的に非常に反応性が高い性質を持っています。
モノマーは一つまたは複数の反応性官能基を持ち、これが他のモノマーとの化学結合を可能にします。例えば、二重結合を持つエチレンやアクリル酸などが、ポリマー化によく使われる代表的なモノマーです。この反応性の高さにより、モノマーは容易に化学反応を起こして重合反応を進行させることができます。
参考)モノマーの基礎から応用まで: 化学と工業の橋渡し
建築材料として使用される塩化ビニルモノマーなどは、高濃度で曝露されると麻酔作用による健康影響が懸念されるため、取り扱いには注意が必要です。モノマーの化学構造と反応性は、最終的なポリマーの性質を大きく左右する重要な要因となります。
参考)https://www.env.go.jp/council/toshin/t07-h1503/mat_02-2.pdf
ポリマーは長鎖状の分子で構成され、単位となる小さな分子が繰り返し結合した構造を持っています。この分子鎖の長さや結合の様式によって、耐久性や柔軟性といった物理的特性が大きく変化します。
ポリマーの化学構造は、モノマーが繰り返し結合してできたもので、異なる種類のモノマーを用いることで多様な性質を持つことが可能です。例えば、ポリエチレンはエチレンモノマーの繰り返し単位からなるポリマーで、軽量かつ柔軟性があります。また、ポリプロピレンは耐熱性があり、包装材料や家庭用品に利用されています。
高分子であるポリマーはマクロな分子で、モノマーより強く化学薬品には比較的弱い傾向があります。プラスチックやゴム、ナイロンなどのポリマーは日常生活でも広く使用され、様々な形状や性質を持つ製品の基盤となっています。
重合とは、モノマーと呼ばれる小分子が繰り返し結合し、ポリマー(高分子化合物)を形成する化学反応です。この過程により、化学的および物理的特性が大幅に異なる材料が生成されます。
参考)重合体 - Wikipedia
重合反応は主に2つのタイプに分類されます。
参考)重合 (Polymerization) の技術と製造業での利…
重合の基本原理は、複数のモノマーが化学結合を通じて連結し、長い分子鎖を形成することです。一般的には、モノマーは二重結合や三重結合などの不飽和結合を持ち、それが開裂して新たな化学結合を作ります。この連鎖反応により、ポリマーが形成されます。
建築業界では、ポリマーを主成分とする接着剤やシーリング材が幅広く使用されています。シーリング材の主要な種類として、シリコーン系、変成シリコーン系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系などがあります。
参考)https://www.nite.go.jp/data/000010751.pdf
ポリウレタン系接着剤やコーティングは、優れた特性と多様性により高品質な材料の製造に広く使用されています。具体的には、靴底の接着、木材(床材)とコンクリート(下地材)の接着、自動車部品の接着、風力発電のローターブレードなどの大面積接着に活用されています。
参考)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.1c02558
建築用シリコーンシーリング材は、耐久性、耐候性、接着性に優れた弾性シーリング材で、紫外線やオゾンによる劣化がほとんどありません。超高層ビル、一般住宅、土木工事、クリーンルーム、水槽などの各種目地に幅広く使用され、地震や台風による建物の動きにも追従する性能を備えています。
参考)信越シリコーン|建築用シリコーンシーリング材
材料種類 | 主な用途 | 特徴 |
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ポリウレタン系 | 塗装下地処理、ALC板の目地充填 | 塗装性良好だが、屋外使用時は上塗り塗装が必要 |
シリコーン系 | 超高層ビル、住宅、土木工事の目地 | 耐久性、耐候性、接着性に優れる |
エポキシ樹脂系 | コンクリート下地への木材接着 | 耐水性、接着性に優れる |
アクリルウレタン樹脂系 | 軽作業~重作業場所の床材 | 2種類の樹脂の利点を併せ持つ |
プール塗装には、耐水性・接着性に優れるエポキシ樹脂を主成分とした下塗材と、耐候性に優れ塩素系消毒剤による変色が少ないアクリルウレタン樹脂を主成分とした上塗材を組み合わせたシステムが使用されています。
参考)カラートップF(エポキシ樹脂(+アクリルウレタン樹脂)系塗料…
建築材料として重要なポリマーには、様々なモノマーから製造されるものがあります。メタクリル酸メチル(MMA)モノマーは、アクリル樹脂の原料としてだけでなく、塗料、接着剤、樹脂改質剤などの分野のコモノマーとしても多くの需要があります。
参考)https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/files/docs/20040200_30a.pdf
アクリル系ポリマーは、構造が類似したモノマーを原料としており、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリル繊維、ポリアクリル酸などが代表例です。これらは名前に応じて対応するモノマーを主原料としますが、ポリアクリル酸エステルなどもアクリル系に分類されます。
参考)アクリル樹脂(PMMA,アクリル繊維、ポリアクリル酸、ポリア…
ウレタンアクリレート(UA)は、ポリテトラヒドロフラン(PTMG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などの様々なジポリオールから合成され、塗料用のポリマーバインダーとして使用されます。PMMAとUAを混合することで、ネットワーク構造が形成され機械的特性が向上します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11125192/
ポリマーセメントモルタルの性能向上のため、アクリルエステル再分散性ポリマーが使用されており、乳化重合法からモノマー滴下添加法への重合方法の変更により、ポリマーの特性改善が図られています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11595522/
ポリマー材料は建築分野において、耐久性や機能性の向上に大きく貢献しています。特殊高耐久ポリマー「LSポリマー」を配合したシーリング材は、これまでにない耐久性と耐候性を実現した「超寿命シーリング材」として開発されています。
参考)オートンイクシード
ポリウレア(PU)コーティングは、その卓越した保護特性により、コンクリート建築の分野で実用的な用途に非常に適しています。ポリウレアコーティングは液体として塗布され、急速に硬化して滑らかで防水性があり、高い耐性を持つ被膜を形成します。引張強度、弾性、急速な硬化期間といった特性により、インフラ、石油・ガス、工業、商業建設など多くの産業分野でコンクリート建築プロジェクトに選ばれています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11004573/
液晶ポリマー(LCP樹脂)は、その優れた振動吸収能力により、車両の部品や建築材料としての使用に理想的です。精密機器の振動を減少させるためにも用いられ、機器の性能向上に貢献しています。
参考)LCP樹脂(液晶ポリマー)とは? 特徴・用途例・加工時のポイ…
ポリマー材料の発展とその建築分野への応用は、建築材料の機能を大きく向上させ、拡大させています。材料科学と技術の発展により、多くの機能性材料が開発され、ポリマー材料は無機材料と比較して多くの優れた特性を持ち、混合や各種添加剤(難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤など)の添加により機能特性を向上させることができます。
参考)https://downloads.hindawi.com/journals/ijps/2020/8838160.pdf
モノマーは化学的に非常に反応性が高く、ポリマーよりも化学的に活性です。この高い反応性により、取り扱いには特別な注意が必要となります。
プラスチックに使用されるポリマー自体は一般的に無害ですが、純粋な形で使用されることは稀です。ほとんどすべての商業用プラスチックでは、加工性能や最終使用性能を向上させるために、モノマー性の成分が「配合」されています。これらのモノマー性添加剤は、使用量の多い順に、強化繊維、充填材、カップリング剤、可塑剤、着色剤、安定剤(ハロゲン安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、生物学的防腐剤)、加工助剤(潤滑剤など)、難燃剤などに分類されます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1475198/
スチレンモノマーは、眼、皮膚、気道を刺激し、液体を飲み込むと肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがあります。中枢神経に影響を与え、吸入すると眩暈、嗜眠、頭痛などの症状が現れることがあります。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/100-42-5.html
塩化ビニルモノマーについては、職場での高濃度曝露による死亡事故の報告があり、これは麻酔作用による呼吸停止が大きく関わっていると考えられています。また、長期曝露により発がん性が確認されており、国際がん研究機関(IARC)ではヒトに対して発がんを示すものとしてGroup1に分類されています。建築現場でモノマーを含む材料を取り扱う際は、適切な換気と保護具の使用が重要です。