
JIS B 1111は、日本で最も広く使用される十字穴付き小ねじの規格です。2017年の改正により、従来のJIS B 1111:2006から内容が更新され、現在の工業標準化法第19条第1項に基づくJISマーク表示認証に対応しています。
この規格は、一般に用いる鋼製の十字穴付き小ねじ(鋼小ねじ)とステンレス鋼製の十字穴付き小ねじ(ステンレス小ねじ)の両方を対象としています。建築業界では構造材の接合、製造業では機械部品の組み立てに欠かせない基本的なファスナーとして位置づけられています。
💡 規格の重要性
JIS B 1111では、頭部の形状によって5つの種類に区分されています:
主要な頭部形状
これらの中でも、なべ小ねじは「ねじの代名詞」と呼ばれるほど使用頻度が高く、パソコン、自転車、電気機器など身近な製品に幅広く使用されています。
十字穴の種類は、H形(Phillips型)とZ形(JIS型)の2種類が規定されています。H形は国際的に広く使用される標準的な十字穴で、Z形は日本独自の規格として開発されました。
材質区分と強度区分
十字穴の番号は、ねじの呼び径に応じて0番から設定されており、一般的なJIS B 1111では1番から記載されています。M2以下の精密用途では0番小ねじ(マイクロネジ)が使用されます。
🔍 意外な事実
十字穴付きねじの歴史は1930年代のアメリカで始まり、自動車産業の大量生産ニーズから生まれました。日本では戦後復興期に導入され、JIS規格として体系化されたのです。
2017年改正のJIS B 1111では、製造ロット番号の表示が義務化されました。これは品質管理の向上と不具合時のトレーサビリティ確保を目的としています。
表示必要事項
この制度により、建設現場や製造ラインでの品質問題発生時に、迅速な原因究明と対策が可能となりました。製造業者は登録商標を略号として使用することが推奨されており、ブランド保護にも配慮されています。
検査項目と品質保証
十字穴の検査はJIS B 1012に基づき、ゲージ沈み深さと食い付き検査が実施されます。特に食い付き検査では、小ねじが自重によって脱落しないことが要求され、実用性を重視した規格となっています。
建築業界におけるJIS B 1111のネジの活用は、構造材の接合から仕上げ工事まで多岐にわたります。特に木造建築では、金物接合部分や設備機器の取り付けで重要な役割を果たしています。
建築現場での選定ポイント
意外な応用事例
近年注目されているのが、免震構造における制振ダンパーの取り付けです。JIS B 1111のステンレス小ねじは、長期間の耐久性と点検時の取り外し容易性から、重要構造部材の補助的固定に採用されています。
また、BIM(Building Information Modeling)との連携により、ねじ1本単位での数量管理と品質履歴の記録が可能となり、建築物のライフサイクル全体を通じた品質管理の新たな手法として注目されています。
🏗️ プロフェッショナルTips
建築現場では、ねじの締め付けトルクが構造安全性に直結します。JIS B 1111のねじでは、材質と十字穴番号に応じた適正トルク値の管理が、長期耐久性確保の鍵となります。