
アクリルリシン吹付けとは、アクリル樹脂を原料の一つとして製造されたリシンを専用のリシンガンで壁に吹き付けて仕上げる工法です。リシンには砂や石などの「骨材」が混ぜられており、これが独特のテクスチャーを生み出します。
骨材が細かいため、吹き付けた後の表面は小さな砂がまぶしてあるようなボコボコとした質感になります。この質感が、艶の少ない落ち着いた雰囲気を演出し、和風住宅などに重厚感と高級感をもたらします。
アクリルリシン吹付けは、セメントを結合材とした「セメントリシン」と、合成樹脂エマルションを結合材とした「樹脂リシン」に大別されます。現在では樹脂リシンがコンクリート造外壁に最も多く使用されています。
この工法は比較的安価で施工できることから、90年代前半までは国内の木造住宅における一般的な外壁仕上げとして広く採用されていました。
アクリルリシン吹付けの施工は、以下のような手順で行われます。
施工に必要な主な道具は以下の通りです:
吹付け機には、材料自体に強い圧力をかけて飛散させる「エアレス方式」と、コンプレッサーで圧縮された空気によって材料を飛散させる「エアースプレー方式」の2種類があります。どちらの方法でも材料のミストが周辺に飛散するため、周囲への配慮が必要です。
アクリルリシン吹付けには、仕上げ方法によっていくつかの種類があります。主な仕上げ方法は以下の2つです。
また、表面の模様や質感によっても種類が分かれます:
さらに、原料の配合によっても種類が分かれます:
これらの種類から、建物の特性や好みに合わせて最適な仕上げ方法を選ぶことができます。
アクリルリシン吹付けには、様々なメリットとデメリットがあります。施工を検討する際は、これらをよく理解した上で判断することが重要です。
メリット
デメリット
これらのメリット・デメリットを踏まえ、建物の用途や立地条件、予算、メンテナンス計画などを総合的に考慮して、アクリルリシン吹付けが適しているかどうかを判断することが大切です。
アクリルリシン吹付けと他の代表的な外壁仕上げ工法を比較することで、それぞれの特徴をより明確に理解できます。
1. アクリルリシン吹付け vs スタッコ仕上げ
スタッコ仕上げもリシン同様に吹き付け工法ですが、使用する骨材がリシンよりも大きいため、より凹凸の激しい表面になります。
項目 | アクリルリシン吹付け | スタッコ仕上げ |
---|---|---|
表面の質感 | 小さな砂粒状の凹凸 | より大きな凹凸感 |
コスト | 比較的安価 | アクリルリシンより若干高め |
耐久性 | 6〜10年 | 8〜12年程度 |
汚れやすさ | やや汚れやすい | より汚れが溜まりやすい |
2. アクリルリシン吹付け vs 吹付タイル
吹付タイルは「タイル」という名前がついていますが、一般的なタイル外壁とは異なります。セメント・顔料・合成樹脂などを混ぜ合わせた塗料を吹き付け、最後に上塗り塗料を2回塗装して仕上げます。
項目 | アクリルリシン吹付け | 吹付タイル |
---|---|---|
表面の質感 | ざらざらとした質感 | より滑らかな質感 |
骨材 | 含む | 含まない、または少量 |
防汚性 | やや劣る | 優れている |
耐久性 | 6〜10年 | 上塗り材に左右される |
3. アクリルリシン吹付け vs 一般的な塗装仕上げ
一般的な塗装仕上げは、ローラーや刷毛を使って塗料を塗る方法です。
項目 | アクリルリシン吹付け | 一般的な塗装仕上げ |
---|---|---|
施工方法 | スプレーガンで吹き付け | ローラーや刷毛で塗装 |
表面の質感 | 凹凸がある | 平滑 |
通気性 | 良い | やや劣る |
コスト | 比較的安価 | 工法による |
耐久性 | 6〜10年 | 塗料による(8〜15年程度) |
4. アクリルリシン吹付け vs タイル貼り
タイル貼りは、セラミックタイルなどを接着剤で壁面に貼り付ける工法です。
項目 | アクリルリシン吹付け | タイル貼り |
---|---|---|
初期コスト | 安価 | 高価 |
耐久性 | 6〜10年 | 20年以上 |
メンテナンス | 定期的な塗り替えが必要 | ほとんど不要 |
重量 | 軽い | 重い |
デザイン性 | 落ち着いた質感 | 多様なデザイン |
これらの比較から、アクリルリシン吹付けは初期コストを抑えつつ、通気性の良い落ち着いた質感の外壁を実現したい場合に適していることがわかります。一方で、長期的な耐久性や防汚性を重視する場合は、他の工法を検討する必要があるでしょう。
アクリルリシン吹付けの外壁を美しく保ち、できるだけ長持ちさせるためには、適切なメンテナンスが欠かせません。ここでは、具体的なメンテナンス方法と長持ちさせるためのコツをご紹介します。
定期的なメンテナンスの重要性
アクリルリシン吹付けの耐用年数は一般的に6〜10年程度ですが、適切なメンテナンスを行うことで、この期間をできるだけ延ばすことができます。定期的なメンテナンスは、見た目の美しさを保つだけでなく、建物自体の保護にも繋がります。
主な劣化症状と対処法
日常的なケアのポイント
長持ちさせるためのコツ