

不動産や建築現場では、清掃対象や汚れの性質によって最適な洗浄剤を選ぶ必要があります。洗浄剤は大きく分けて水系、準水系、非水系の3つのカテゴリーに分類され、それぞれ得意とする汚れや使用環境が異なります。
参考)https://tokubai.co.jp/news/articles/2986
水系洗浄剤はアルカリ性、中性、酸性の3種類に分類されます。一般的には切削油の洗浄ではアルカリ性や中性が使われ、水で希釈して使用するため低コストです。安全性が高く毒性が低いため良好な作業環境を実現でき、ほとんどの樹脂に使用可能で様々な洗浄方法と組み合わせて使用できます。
参考)https://www.suzukiyushi.co.jp/washing_soap/about/
準水系洗浄剤は有機溶剤と水を組み合わせたタイプで、一般的に非鉱物油系の切削油洗浄に適しています。非可燃性洗浄剤として取り扱えることが多く、リンス工程も純水を用いることが可能です。油分溶解力が強くイオン性汚れの除去も可能で、多くの金属に対応できる特徴があります。
参考)https://okahata.co.jp/blog/material/cleaning-agent-type
非水系洗浄剤には炭化水素系、アルコール系、塩素系、フッ素系、臭素系などの種類があります。炭化水素系にはノルマルパラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系、芳香族系の4種類が存在し、油汚れに対して洗浄力が高く金属への腐食酸化の影響が少ないのが特徴です。
参考)https://www.juntsu.co.jp/senjou/senjou_top.php
洗浄剤は液性(pH)によってアルカリ性、中性、酸性に分類され、汚れの性質と反対の液性を選ぶことが基本原則です。汚れにも油汚れなどの酸性汚れ、水あかなどのアルカリ性汚れがあり、基本的に洗剤を使う際は「汚れと反対の性質をもつもの」を使うとよく落ちます。
参考)https://alcot-recruit.jp/media/media-20240628
アルカリ性洗浄剤は酸性の汚れを得意としていて、主に動植物油の洗浄に適しています。アルカリ性が高いほど洗浄力が強くなっていきますが、安全性は低くなりゴム手袋を着用するなどの対策が必要です。換気扇やグリル、ガスコンロなどのキッチン周りのしつこい油汚れに効果的で、建築現場でも機械油や作業油の除去に活用されます。
参考)https://arco8.net/knowledge/041001/
酸性洗浄剤はアルカリ性の汚れを得意としていて、主に水アカなどの洗浄に適しています。他にもアンモニアの消臭などに使用され、洗浄剤としてはトイレ用のものが多く販売されています。ただし酸性洗剤は塩素系と併用して使用すると有毒ガスが発生するため、絶対に混ざらないようにする必要があります。
参考)https://www.monotaro.com/note/productinfo/tokuchou_tyuiten/
中性洗浄剤は洗浄力は強くはありませんが、素材を傷める心配が少なく肌にも他の液性よりは優しい洗浄剤です。毎日の軽い汚れを取る日常のお掃除に使うなら中性洗剤がぴったりで、食器、シンク、お風呂、トイレ、ドアや机に付いた皮脂汚れなども日常的な汚れであれば中性洗剤で十分対応できます。
洗浄剤の種類と特徴 | 産業洗浄剤ガイド
各洗浄剤の詳細なメリット・デメリットや使用上の注意点について、技術的な観点から詳しく解説されています。
| 汚れの分類 | 具体的な汚れ例 | 適した洗浄剤種類 |
|---|---|---|
| 水溶性汚れ | 水溶性インク、食べ物や飲み物の汚れ、汗や尿などの分泌物 |
水系、準水系、アルコール系 |
| 油性汚れ | 油性インク、塗料、非水溶性切削油、潤滑剤 | 準水系、炭化水素系、アルコール系、塩素系、臭素系 |
| 固体汚れ | 物質の破片・切粉、食品カス、砂、ホコリ | 準水系、炭化水素系、フッ素系、塩素系 |
| 粒子汚れ | 研磨剤、ハンダくず、金属粉、ガラス粉、樹脂粉 | 水系、準水系 |
不動産や建築現場で発生する汚れは、その成分や性質によって最適な洗浄剤が異なります。洗浄剤を選定する時には、①汚れの種類や性質を確認し、②状態をチェック、③洗うものの材質を確認する、④洗浄剤を選択といった手順を踏むことが重要です。
水溶性汚れには水系洗浄剤や準水系洗浄剤が効果的で、水溶性インクや食べ物の汚れ、汗や尿などの分泌物を効率的に除去できます。建築現場の作業員の汗汚れや食堂エリアの汚れなど、日常的に発生する水溶性の汚れには、コストパフォーマンスに優れた水系洗浄剤が最適です。
油性汚れに対しては準水系、炭化水素系、アルコール系などの洗浄剤が高い効果を発揮します。建築機械の潤滑剤や作業油、塗料などの油性汚れは、油分溶解力が強い炭化水素系洗浄剤を使用すると短時間で除去できます。炭化水素系洗浄剤は錆や腐食への耐性が大変高く、毒性が低く人体への影響もほとんどありません。
参考)https://oil-star.jp/blog/?p=169
固体汚れや粒子汚れには、浸透性が高く細部まで洗浄できる洗浄剤が求められます。建築現場で発生する研磨剤や金属粉、ガラス粉などの粒子汚れには、水系や準水系洗浄剤が適しており、物質の破片や切粉などの固体汚れには準水系や炭化水素系が効果的です。
洗浄剤の種類を徹底解説!汚れ別に効果的な洗浄剤も紹介
汚れの分類ごとに最適な洗浄剤の組み合わせについて、実践的な選定方法が詳しく紹介されています。
水系洗浄剤のメリットは、水で希釈して使用するため低コストであること、安全性が高く毒性が低いこと、良好な作業環境を実現できること、非危険物であること、ほとんどの樹脂に使用可能なことです。また様々な洗浄方法と組み合わせて使用でき、酸化膜などの汚れ除去が可能でイオン性汚れを溶解除去できる点も大きな利点です。
参考)https://www.juntsu.co.jp/senjou/senjou_kaisetsu03.php
一方、水系洗浄剤のデメリットとしては、被洗浄物に対する腐食や酸化のリスクがあること、乾燥速度が遅いこと、再生利用ができず排水処理対策が必要なこと、油分溶解力が小さいこと、金属には防錆対策が必要なことが挙げられます。特に建築現場では乾燥時間が作業効率に影響するため、天候や湿度を考慮した作業計画が必要です。
参考)https://www.degree.co.jp/column/waterbased-cleaning
準水系洗浄剤のメリットは、非可燃性洗浄剤として取り扱えること、リンス工程も純水を用いることが可能なこと、油分溶解力が強いこと、イオン性汚れの除去が可能なこと、多くの金属に対応できること、毒性が低いことです。建築設備や機械部品の洗浄において、水系と非水系の利点を併せ持つバランスの良い選択肢となります。
準水系洗浄剤のデメリットには、再生利用ができず排水処理対策が必要なこと、乾燥が遅くリンス時の酸化・腐食対応が必要なこと、被洗浄物が金属の場合防錆対策が必要なこと、洗浄剤コストと排水処理コストが高いこと、可燃物のものは消防法上の対応が必要なこと、非可燃物のものは水分管理が必要なことがあります。
非水系洗浄剤(炭化水素系)のメリットは、油汚れに対して洗浄力が高いこと、金属への腐食酸化の影響が少ないこと、蒸留再生可能なこと、水系や準水系と比べて乾燥性が良いこと、油分溶解力が強いこと、浸透性がよく細部の洗浄が可能なこと、毒性が低いことです。建築現場の精密機器や金属部品の洗浄に特に適しています。
参考)https://evort.jp/article/hydrocarbon-type
炭化水素系洗浄剤のデメリットとしては、可燃性物質のため防爆構造などの対応が必要なこと、製品によっては「有機溶剤中毒予防規則」への対処が必要なこと、固形物汚れの除去には不向きなこと、イオン性汚れに対する溶解力が低いこと、一部の樹脂やゴムなどを腐食する場合があることが挙げられます。
💡 環境負荷低減のポイント
近年、産業分野における洗浄技術では、安全性や環境への対応が求められるとともに、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも産業洗浄のあり方が見直されています。環境負荷の低減に加え、安全性や資源の循環利用を考慮した技術開発が求められており、不動産や建築業界でもこの流れに対応する必要があります。
参考)https://www.aion-kk.co.jp/column/senjyo-abstergent/
水系洗浄剤の最大の特徴は、その環境負荷の低さです。主成分が水であるため、有機溶剤のような大気汚染や地球温暖化への影響が極めて少なく、オゾン層破壊の心配もありません。また生分解性の高い界面活性剤を使用することで、排水処理後の環境への影響も最小限に抑えることができます。
参考)https://www.zestron.com/jp/know-how/sdgs
VOC(揮発性有機化合物)の排出量が少ないため、大気汚染防止法などの環境規制にも対応しやすく、企業の環境負荷低減活動にも貢献します。有機化合物を基材とした工業用洗浄剤は全てVOCに該当し、大気中での光化学反応や物理反応等によって人体へ悪影響を与えるおそれがあるため、水系洗浄剤への移行が推奨されています。
参考)https://www.juntsu.co.jp/qa/qa1208.php
🛡️ 安全性管理の重要性
洗浄剤の使用においては、法令遵守と安全対応が不可欠です。特定化学物質障害予防規則(特化則)や有機溶剤中毒予防規則(有機則)など、様々な法規制に対応する必要があり、作業者の健康と安全を守るための適切な管理体制が求められます。
参考)https://www.kaken-tech.co.jp/trouble/1-3/
水系洗浄剤は大半を水が占めているため、引火性がなく安全面・環境面に配慮された洗浄剤として評価されています。一方で、強酸性や強アルカリ性を持つ洗浄剤の廃液は特別管理産業廃棄物として扱う必要があり、適切な中和処理や廃棄方法を遵守することが重要です。
参考)https://www.monotaro.com/note/productinfo/senjyouzai_type/
建築現場や不動産物件のメンテナンスでは、作業環境の換気や保護具の着用、混合禁止の徹底など、基本的な安全対策を怠らないことが事故防止の鍵となります。特に酸性洗剤と塩素系漂白剤の混合は有毒ガスを発生させるため、絶対に避けなければなりません。
参考)https://www.lionhygiene.co.jp/problem_category/food_factory/article_02/
洗浄剤における法令遵守(環境、安全対応)
洗浄剤使用時の法規制や安全対策について、特化則や有機則などの具体的な対応方法が詳しく解説されています。
🏢 ビルメンテナンスにおける用途別選定
不動産や建築物のメンテナンスでは、清掃箇所や汚れの種類に応じた洗浄剤の使い分けが作業効率と品質に直結します。ビルメンテナンス・ハウスクリーニングの現場では、高い洗浄力と高い機能を兼ね備えた洗浄剤が求められ、希釈倍率を変えて使用することでコスト削減が可能です。youtube
参考)https://osouji-mochiduki.com/cat_blog/3253/
リビングエリアでは、じゅうたん・カーペット・床・フロアタイル・エアコン・窓ガラスなど多様な素材に対応できる中性から弱アルカリ性の洗浄剤が適しています。キッチンエリアでは換気扇、コンロ、壁、流し(ステンレス水垢)などの油汚れと水垢の両方に対応できる洗浄剤が必要で、アルカリ性濃縮洗剤が効果的です。youtube
浴室・洗面・トイレエリアでは、浴槽・床(水垢・石鹸)、洗面台・トイレの陶器・カラン(光沢出し)、排水口(臭い低減)などに対応する洗浄剤が求められます。酸性系の除去剤は尿石や水垢に効果的で、除菌・消臭効果を持つ製品を選ぶことで衛生管理も同時に実現できます。
参考)https://www.sanes.jp/buildg/buildg-meinte/
youtube
床の定期洗浄やセラミックタイルの日常洗浄・ロウ取りには、すすぎ(リンス)作業まで考慮した洗浄剤選定が重要です。コンクリート(廊下・駐車場)のタイヤ痕やオイル染み除去、ノンスリップシートのヒール痕・タイヤ痕除去など、特殊な汚れにも対応できる多目的洗浄剤の活用が作業効率化につながります。
参考)https://miyaki.com/?mode=f7
youtube
🔧 建築設備・機械部品の洗浄における実践ポイント
建築現場で使用される機械や設備の洗浄では、汚れの種類だけでなく被対象洗浄物の大きさや素材なども考慮して選ぶことが大切です。洗浄液は汚れの種類やワークの材質により選定し、油分・フラックス・研磨剤・離型剤・微粒子などの汚れ対象と、金属(鉄、アルミ、ステンレスなど)の材質を確認します。
参考)https://www.monotaro.com/note/productinfo/senjyouzai_choice/
機械部品の洗浄では、洗浄・すすぎ・乾燥の3段階工程が一般的で、各工程での所要時間や効率を考慮した洗浄剤選定が重要です。洗浄装置では洗浄剤が溶解した水溶液に機械部品を入れ、超音波による外力などを併用して表面の切粉や油分を除去します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/66/7/66_295/_article/-char/ja/
自動車部品や建築機械の洗浄では、加工工程で使用される脱脂剤が重要な役割を果たします。部品の種類や前工程の加工方法により汚れの種類が異なるため、それに合わせた最適な洗浄方法や洗浄剤を都度選定する必要があり、洗浄後に残留し得る洗浄剤成分についても後工程での影響を十分に考慮します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/69/9/69_390/_article/-char/ja/
近年は建築機械の軽量化のためアルミ等の軽金属や樹脂を採用する部品種が大幅に増えており、これらの素材を侵さずに従来の洗浄性能を満足する洗浄剤が提供されています。また電動化に伴い導電部品等も増えており、洗浄工程に求められる性能も変わりつつあるため、最新の技術動向を把握した洗浄剤選定が求められます。