
アームストッパー金具は取り付け方法によって大きく2つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
面付型アームストッパー
面付型は扉の表面に直接取り付けるタイプで、最も一般的な形式です。取り付けが比較的簡単で、既存のドアにも後付けが可能という利点があります。価格帯は2,150円~5,500円程度と幅広く、材質や機能によって差があります。
埋め込み型(掘込型)アームストッパー
埋め込み型は上框に彫り込んで取り付けるタイプで、デザイン性を重視する場合に選ばれます。ドアを閉めた状態では金具が完全に隠れるため、室内の美観を損ないません。
高受式アームストッパー
高受式は特殊な構造で、狭いスペースでも取り付けが可能です。戸当たりスペースが限られている場合に重宝されます。
アームストッパー金具の材質は主にステンレスSUS304が使用されており、耐食性と強度を兼ね備えています。一部には鉄製もありますが、屋内用途に限定されることが多いです。
扉の開き角度は100°以内で任意に設定可能で、使用環境に応じて最適な角度に調整できます。この調整機能により、風の強さや使用頻度に合わせた細かな設定が可能になります。
建築現場でよく混同されるのがアームストッパーとドアクローザーです。これらは見た目が似ていますが、機能は正反対です。
アームストッパー金具の機能
ドアクローザーの機能
重要な点として、アームストッパーとドアクローザーは同一のドアに併用できません。機能が相反するため、どちらか一方を選択する必要があります。
選択の判断基準としては、ドアを開いたままにしておく必要がある場所(風通しを良くしたい場所、頻繁に出入りする場所)にはアームストッパーを、自動的に閉じる必要がある場所(防音、空調効率、セキュリティ)にはドアクローザーを選択します。
アームストッパー金具の取り付けは、タイプによって手順が異なります。正しい取り付けにより、長期間の安定した動作が確保されます。
面付型の取り付け手順
埋め込み型の取り付け手順
埋め込み型は事前の加工が必要です。掘り込み寸法は24mm程度の幅が一般的で、深さは11~11.5mmです。
取り付け時の注意事項
取り付け作業では必ず手袋を着用し、手回しドライバーを使用してください。電動ドライバーの使用は製品の変形や破損の原因となります。
また、本製品は屋内軽量扉専用で、屋外や重量扉(無垢扉等)には使用できません。一般家庭用として設計されているため、不特定多数が使用する公共施設や店舗では使用を避けてください。
取り付け寸法は丁番の種類やサイズによって変化するため、実際の扉に合わせて位置を決定することが重要です。標準的な寸法表はありますが、現場での確認作業は欠かせません。
アームストッパー金具の価格は種類とメーカーによって大きく異なります。適切な予算設定のため、主要メーカーの価格帯を把握しておきましょう。
価格帯別の分類
エコノミーグレード(2,000円~3,000円台)
スタンダードグレード(3,000円~4,000円台)
プレミアムグレード(5,000円以上)
主要メーカーの特徴
ベスト(BEST)
ラインナップが豊富で、面付型から埋込型まで幅広く展開。価格帯もエコノミーからスタンダードまでカバーしており、建築現場での使用実績が多い。
清水株式会社
ステンレス製に特化し、SUS304を使用した高品質な製品を提供。掘込薄型タイプでは金具が見えない美しい仕上がりが特徴。
カワジュン
デザイン性と機能性を両立した製品づくりで知られ、高受式などの特殊形状も得意とする。
ATOM(アトム)
精密な加工技術により、薄型タイプでも確実な動作を実現。ヘアーライン仕上げなど表面処理にもこだわっている。
価格選定の際は、使用頻度と要求される耐久性を考慮することが重要です。頻繁に使用される箇所や屋外に近い環境では、初期投資は高くても長期的にコストパフォーマンスの良いプレミアムグレードを選択することが推奨されます。
アームストッパー金具の選定では、カタログスペックだけでは判断できない現場特有の要因を考慮する必要があります。経験豊富な建築業従事者が重視する選定ポイントを解説します。
環境要因の詳細検討
強風地域では標準仕様のアームストッパーでは不十分な場合があります。特に海岸部や高層建築では、風圧計算に基づいた強化タイプの選択が必要です。また、塩害地域ではステンレス製でもSUS316を検討するなど、材質選定により慎重さが求められます。
建具との適合性確認
扉の重量と材質は選定の重要な要素です。一般的な軽量扉用として設計されているため、無垢材扉や防火扉などの重量扉には適用できません。また、アルミサッシとの組み合わせでは、熱膨張係数の違いによる経年変化も考慮する必要があります。
メンテナンス性の事前検討
埋め込み型は美観に優れますが、故障時の交換作業が困難です。特に賃貸物件や商業施設では、将来のメンテナンス性を重視して面付型を選択するケースが多いです。また、可動部の潤滑や調整作業の容易さも長期使用において重要な要素となります。
設置環境別の最適選択
住宅の勝手口では頻繁な開閉と風の影響を受けやすいため、高受式で調整機能付きのモデルが適しています。一方、室内のトイレドアなど使用頻度が限定的な場所では、コストを重視したエコノミーグレードでも十分な性能を発揮します。
施工業者との連携ポイント
アームストッパーの取り付けは建具工事と密接に関連するため、早期の段階で建具業者との打ち合わせが必要です。特に埋め込み型では、建具製作時の加工精度が製品性能に直結するため、詳細図面の共有が欠かせません。
想定外のトラブル対応
現場では図面通りにいかないケースが多々あります。配管や配線との干渉、既存建具の寸法誤差、施工誤差などにより、当初予定していたタイプが使用できない場合の代替案を事前に検討しておくことが重要です。特に改修工事では、現地調査を入念に行い、複数の選択肢を準備しておくことが成功の鍵となります。
これらの要因を総合的に判断することで、長期間にわたって安定した性能を発揮するアームストッパー金具の選定が可能になります。