
アルミh鋼の規格は、日本工業規格JIS H4100に厳密に準拠しており、建築業界での使用において重要な品質基準となっています。この規格では、アルミニウム合金の化学成分、機械的性質、寸法許容差などが詳細に定められています。
主要規格項目
材質6063は、Al(アルミ)-Mg(マグネシウム)-Si(けい素)合金の代表的な押出用合金として位置づけられており、適度な強度を保ちながら鉄製H鋼の約1/3という軽量性を実現しています。この特性により、建築現場での取り扱いが格段に容易になり、施工効率の向上に大きく貢献します。
規格品の品質管理では、化学成分の含有量が厳格にコントロールされています。マグネシウム0.45-0.9%、シリコン0.2-0.6%の範囲で調整されることで、押出成形時の流動性と最終製品の機械的性質のバランスが最適化されています。
アルミh鋼の標準サイズは、建築用途に応じて細かく規格化されています。以下の表は、最も使用頻度の高いサイズ規格をまとめたものです。
標準サイズ規格一覧
幅(H) | 高さ(B) | ウェブ厚(t) | フランジ厚(t2) | 断面積(cm²) | 単位重量(kg/m) |
---|---|---|---|---|---|
50 | 50 | 3.0 | 4.0 | 5.8 | 1.58 |
60 | 60 | 4.0 | 5.0 | 8.4 | 2.29 |
75 | 75 | 5.0 | 6.0 | 13.1 | 3.57 |
100 | 50 | 5.0 | 7.0 | 14.0 | 3.81 |
100 | 100 | 6.0 | 9.0 | 21.6 | 5.89 |
125 | 125 | 6.5 | 9.0 | 30.0 | 8.18 |
150 | 100 | 6.0 | 8.0 | 25.2 | 6.87 |
150 | 150 | 7.0 | 10.0 | 39.7 | 10.8 |
断面性能の計算では、アルミニウムの比重2.7を基準として単位重量が算出されています。これは鉄鋼(比重7.85)と比較して約65%軽量であることを意味し、高層建築物での上部構造の軽量化に特に有効です。
意外な特性として、アルミh鋼は温度変化による線膨張係数が鉄鋼の約2倍(23.1×10⁻⁶/K)であるため、長スパン構造では熱伸縮を考慮した接合部の設計が重要になります。
材質6063は、押出用アルミ合金として最も汎用的に使用される規格で、その機械的特性は建築構造材として十分な性能を有しています。
機械的特性値
6063合金の特筆すべき特性は、熱処理によって強度調整が可能なことです。T5処理(人工時効硬化)により、引張強度は最大250N/mm²まで向上させることができ、より高い荷重を要求される構造部材への適用が可能になります。
耐食性においても優れた性能を発揮し、一般的な大気環境では25年以上の耐久性が期待できます。特に海岸地域でも塩害に対する抵抗力が高く、メンテナンスコストの削減効果が顕著に現れます。
溶接性についても良好で、TIG溶接、MIG溶接ともに適用可能です。ただし、溶接後は熱影響部の強度低下(約30-40%)を考慮した設計が必要となります。
アルミh鋼の表面処理は、規格上大きく分けて生地材とアルマイト処理材の2種類が標準化されています。
表面処理の種類と特性
アルマイト処理の膜厚は、建築用途では通常15-20μmが標準仕様となっています。この処理により、耐食性は生地材の約3-5倍向上し、美観の持続性も大幅に改善されます。
興味深い特性として、アルマイト処理を施したアルミh鋼は、紫外線による劣化がほとんど発生しません。これは有機塗装と大きく異なる点で、長期間にわたって初期の外観品質を維持できます。
耐久性試験では、JIS H 8601に基づく促進耐候性試験において、アルマイト処理材は2000時間後でも変色度ΔE<2を維持することが確認されています。これは実環境での20-25年相当の暴露に匹敵する性能です。
従来の建築材料選定では初期コストのみが重視されがちですが、アルミh鋼の真価はライフサイクルコスト(LCC)分析で明確になります。
LCC分析の構成要素
独自分析として注目すべきは、「重量削減による基礎工事コストへの影響」です。アルミh鋼を主構造に採用した場合、建物全体重量が15-25%削減されるため、基礎工事の規模縮小が可能になります。
具体的な試算例では、5階建て事務所建築(延床面積2000m²)において、アルミh鋼採用により基礎工事費が約8-12%削減され、これが全体コストの3-5%に相当することが分かっています。
さらに、炭素税導入の動向を考慮すると、アルミニウムの製造エネルギーは高いものの、リサイクル率95%以上という特性により、将来的な環境負荷コストの優位性が期待されます。
定期的な塗装メンテナンスが不要なことも大きな経済効果をもたらし、50年間の総保有コストでは鉄鋼比85-90%程度に収束するケースが多く報告されています。