アスファルト・フェルト防水の規格と性能

アスファルト・フェルト防水の規格と性能

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アスファルト・フェルト防水の基礎知識

アスファルト・フェルト防水の重要ポイント
🏗️
規格と品質基準

JIS A 6005規格に基づく品質管理と改質アスファルトの性能向上

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施工技術と注意点

適切な下地処理とステープル留めの施工ポイント

📊
製品選択と耐久性

用途別の最適な製品選択と長期性能の評価基準

アスファルト・フェルトの規格と種類

アスファルト・フェルトの防水性能は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)規格によって厳格に定められています。この規格では、アスファルトフェルト430、アスファルトルーフィング940、アスファルトルーフィング1500という3つの主要カテゴリが規定されており、それぞれ異なる用途と性能特性を持っています。

 

最も注目すべき発展は、改質アスファルトフェルトの登場です。従来のアスファルトフェルト430よりも高品質な防水材料として開発されたこの製品は、住宅の長寿命化に対応するため、より厳しい性能基準をクリアしています。改質アスファルトフェルトでは、アルカリ処理後の引張強さ、留付け部のせん断強さ、低温時の耐折り曲げ性、加熱処理後の耐折り曲げ性、寸法安定性、ステープル穴シーリング性、防水性といった新たな品質項目が追加されています。

 

製品の多様性も特徴的で、ガムスター株式会社の「赤星印アスファルトフェルト430」、田島ルーフィング株式会社の「Pベストフェルト」、七王工業株式会社の「ツバメ印アスファルトフェルト430」など、各メーカーが独自の技術で製品化しています。これらの製品は、基本的な性能は規格で統一されていますが、施工性や耐候性において微細な違いがあります。

 

アスファルト・フェルト防水の施工方法と注意点

アスファルト・フェルトの防水施工において、最も重要なのは適切な下地処理です。木造建築鉄骨造建築の屋根や外壁の下地では、繊維のくずを混ぜたフェルトにアスファルトを染み込ませた防水材を正確に配置する必要があります。

 

外壁のモルタル仕上げにおけるアスファルトフェルトの施工では、雨水の侵入を防ぐ防水シートとしての機能が求められます。この際、シートの重ね幅や固定方法が防水性能を大きく左右します。ステープル留めによる固定では、穴部分からの水漏れリスクを最小限に抑えるため、改質アスファルトの自己シーリング性能を活用することが重要です。

 

施工上の注意点として、シーリング材や塩ビシートなど可塑剤を含むものとの接触を避ける必要があります。可塑剤の影響によりアスファルトが軟化し、防水性能に不具合が発生する可能性があるためです。また、気温条件も重要で、低温時には材料の柔軟性が低下するため、施工タイミングの調整が必要です。

 

温度管理については、アスファルトの特性上、高温で液体、低温で固体となる性質を理解した施工計画が不可欠です。特に改質アスファルトを使用した製品では、高温でダレにくく、低温で割れにくいという特性を最大限活用するため、適切な施工環境の確保が求められます。

 

アスファルト・フェルト耐久性と性能評価

アスファルト・フェルトの耐久性評価において、従来製品と改質アスファルト製品では大きな性能差があります。一般的なアスファルトルーフィングの耐用年数が10年程度であるのに対し、改質アスファルトルーフィングでは15~25年の長期耐久性を実現しています。

 

改質アスファルトフェルトの優れた性能特性として、温度変化への対応能力があります。高温から低温まで広い温度範囲で優れた特性を維持し、弾性を持つことでステープルや釘穴に対するシール性や耐久性に優れています。この特性により、建物の動きに対して追従する伸びがあり、高い寸法安定性を持つため、ステープル部が破れにくいという利点があります。

 

性能評価の具体的な測定項目では、アルカリ処理後の引張強さ、留付け部のせん断強さ、低温時の耐折り曲げ性、加熱処理後の耐折り曲げ性、寸法安定性、ステープル穴シーリング性、防水性が重要な指標となります。これらの項目は、従来のJIS A 6005では規定されていなかった新しい評価基準であり、より厳格な品質管理を可能にしています。

 

長期性能の維持において、材料の劣化要因の理解も重要です。紫外線、温度変化、機械的応力、化学的要因などの複合的な影響を受けるため、これらの要因に対する抵抗性能が耐久性を決定します。改質アスファルトの添加により、これらの劣化要因に対する抵抗性が大幅に向上しています。

 

アスファルト・フェルト廃止製品と代替品選択

2020年3月に日本防水材料協会により、アスファルトフェルトの一部製品が廃止されました。廃止対象となったのは、アスファルトフェルト8kg、アスファルトフェルト17kg、カラーフェルト各種(17kg・18kg・20kg・21kg品など)です。この決定は、品確法の施行や住宅瑕疵担保履行法の影響により、建設・建築関連建材の見直し・改良が進められた結果です。

 

代替品の選択基準として、廃止品目1、2については、アスファルトフェルト430適合品以上の使用が推奨されています。カラーフェルトについては、壁への使用の場合はアスファルトフェルト430適合品以上、屋根への使用の場合はアスファルトルーフィング940適合品以上が適切とされています。

 

代替品選択における重要な考慮事項は、用途に応じた性能要求の違いです。外壁下張材として使用する場合と屋根下葺材として使用する場合では、要求される防水性能が異なります。屋根用途では、より高い防水性能が必要であることから、より上位グレードの製品選択が推奨されています。

 

現在の製品ラインアップでは、田島ルーフィングの「マスタールーフィング」、「ライナールーフィング」シリーズ、「タディス」シリーズなど、改質アスファルトを使用した高性能製品が主流となっています。これらの製品は、従来の廃止製品と比較して、大幅に向上した性能を提供します。

 

アスファルト・フェルト防水の将来展望と技術革新

アスファルト・フェルト防水技術の将来展望において、最も注目される技術革新は粘着層技術の発達です。従来のステープル留めに加えて、粘着層による固定方法が普及しており、施工性の向上と防水性能の向上を同時に実現しています。田島ルーフィングの「タディスセルフアーマー」や「タディスセルフ」シリーズなどの粘着層製品は、遅延タイプの粘着層技術により、施工時の作業性を大幅に改善しています。

 

建築業界のデジタル化に対応した製品開発も進んでいます。建物情報モデリング(BIM)との連携を考慮した製品仕様の標準化や、IoT技術を活用した防水性能のモニタリングシステムの開発が検討されています。これにより、建物の維持管理段階での防水性能の継続的な評価が可能になると期待されています。

 

環境配慮型製品の開発も重要な技術革新の方向性です。リサイクル材料の活用や、製造過程でのCO2排出削減、使用後のリサイクル性向上などの環境負荷軽減技術が注目されています。また、太陽光発電システムとの組み合わせを考慮した防水システムの開発も進んでいます。

 

品質管理技術の高度化も将来の重要な要素です。AIを活用した品質検査システムの導入により、製品の均質性向上と不良品の早期発見が可能になると予想されています。さらに、現場での施工品質管理にもデジタル技術の活用が期待されており、ドローンによる施工状況の確認や、赤外線カメラによる防水性能の非破壊検査などの技術が実用化されつつあります。