アスファルトルーフィング下葺材の施工方法と種類を詳解

アスファルトルーフィング下葺材の施工方法と種類を詳解

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アスファルトルーフィング下葺材の基本知識

アスファルトルーフィング下葺材の重要性
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防水の要となる下葺材

屋根材の隙間から侵入する雨水を確実に防ぎ、建物の長寿命化に直結する重要な建材

優れた釘穴シール性

ステープルや釘穴を自己癒着で封止し、施工後の防水性能を長期間維持

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JIS規格による品質保証

JIS A 6005規格に基づく厳格な品質管理で、安定した性能を実現

アスファルトルーフィング下葺材の種類と特徴

屋根下葺材として使用されるアスファルトルーフィングは、基材とアスファルトの組み合わせによって複数の種類に分類されます。最も基本的なアスファルトルーフィングは、原紙にアスファルトを浸透・被覆させ、両面に鉱物質粉粒を付着させた製品です。

 

標準的なアスファルトルーフィングの構成

  • 基材:原紙(フェルト)
  • 含浸材:アスファルト
  • 表面材:鉱物質粉粒
  • 耐用年数:15~20年程度

近年では、従来のアスファルトに課題があった高温時の軟化や低温時の割れを改善するため、ポリマーを添加した改質アスファルトルーフィングの使用が増加しています。改質アスファルトは「ゴムアスファルト」とも呼ばれ、広い温度範囲で安定した性能を発揮します。

 

改質アスファルトルーフィングの優位性

  • 高温でダレにくい特性
  • 低温で割れにくい柔軟性
  • 優れた弾性と耐久性
  • ステープル穴に対する高いシール性

さらに高機能な製品として、改質アスファルトルーフィングの裏面に粘着層を設けた粘着層付改質アスファルトルーフィングも展開されており、施工性の向上を図っています。

 

建材メーカー各社からは、用途に応じた多様な製品が提供されています。田島ルーフィングのマスタールーフィングシリーズでは、改質アスファルトを使用した高品質な下葺材が20m×1m、厚さ1.3mm、重量22kgの仕様で展開されています。

 

アスファルトルーフィング下葺材の規格と基準

アスファルトルーフィング下葺材の品質と性能は、明確な規格によって定められています。標準的なアスファルトルーフィングはJIS A 6005(日本産業規格)に準拠しており、改質アスファルトルーフィングについては日本防水材料協会規格(ARK 04 s)が適用されます。

 

JIS A 6005規格の主な要求事項

  • 引張強度の最低基準値
  • 伸び率の規定範囲
  • 耐熱性試験での性能維持
  • 低温曲げ試験での柔軟性確認
  • 釘穴シール性の評価基準

これらの規格は、製品の長期性能を保証するための重要な指標となっており、施工業者は規格適合品を選定することで、確実な防水性能を確保できます。

 

屋根下葺材の性能評価において特に重要なのが釘穴シール性です。この特性により、ステープルや釘で固定した際の穴が自然に閉まり、そこからの雨水侵入を防ぐことができます。アスファルト系ルーフィングがこの特性に特に優れているため、屋根下葺材として長年の実績を誇っています。

 

意外に知られていない事実として、アスファルトは古代エジプトのピラミッド建設時代から防水材として使用されてきた歴史があります。石材の隙間を埋めて水の浸入を防ぐ目的で用いられており、現代の建築材料としてのアスファルトルーフィングも、この長い歴史に裏打ちされた信頼性を継承しています。

 

アスファルトルーフィング下葺材の施工手順と重要ポイント

アスファルトルーフィング下葺材の適切な施工は、建物の防水性能を決定する極めて重要な工程です。施工は必ず軒先から棟に向かって行い、一定の重ね幅を確保しながら進めることが基本となります。

 

基本的な施工手順

  1. 谷部への先張り(幅1000mm程度の増し張り)
  2. 軒先部から1段目の施工(一定方向に張り進める)
  3. 2段目以降の順次施工
  4. 棟部まで張り上げ
  5. 棟部への増し張り(必要に応じて)

重ね幅については、上下(流れ方向)100mm以上、左右(長手方向)200mm以上を標準とし、この寸法を厳守することで確実な防水性能を実現できます。

 

ステープル留めの要点

  • ハンマー式タッカーを使用
  • 重ね合わせ部分に間隔300mm内外で固定
  • 要所要所でも適切に固定
  • 過度の打ち込みによる材料損傷を避ける

特殊部位の施工では、より細心の注意が必要です。谷部では水下側から施工し、谷を越えて250mm程度折り返すことが重要です。壁との取り合い部分では、立ち上げ長さを250mm以上、かつ雨押え包み板上端より50mm以上確保する必要があります。

 

日本防水材料協会のガイドラインでは、施工環境についても詳細な指針が示されています。強風時や雨天時の施工は避け、下地の乾燥を確認してから作業を開始することが推奨されています。

 

JWMAアスファルト防水部会による詳細な施工要領書
部位別の具体的な施工手順と注意点が図解付きで解説されています。

 

アスファルトルーフィング下葺材の耐久性と維持管理

アスファルトルーフィング下葺材の耐久性は、使用されるアスファルトの種類と基材の品質によって大きく左右されます。標準的なアスファルトルーフィングの期待耐用年数は15~20年程度ですが、改質アスファルトルーフィングではより長期間の性能維持が期待できます。

 

耐久性に影響する主要因子

  • 紫外線による劣化(屋根材による保護が重要)
  • 温度変化による熱膨張・収縮
  • 機械的応力(風圧・積雪荷重等)
  • 化学的劣化(酸性雨・大気汚染物質)

改質アスファルトルーフィングでは、ポリマー添加により温度特性が大幅に改善されています。高温時の軟化抑制と低温時の脆化防止により、厳しい気候条件下でも安定した性能を発揮します。

 

維持管理の観点では、下葺材は屋根材に覆われているため直接的な点検は困難ですが、屋根材の状態観察により間接的な評価が可能です。瓦のずれ、金属屋根の腐食、シーリング材の劣化などは下葺材への負荷増加につながるため、定期的な屋根点検が重要です。

 

長期性能維持のポイント

  • 適切な屋根勾配の確保
  • 屋根材の定期メンテナンス
  • 雨樋の清掃・機能維持
  • 棟部・壁際部の重点点検

田島ルーフィングの高品質製品では、独自の劣化防止層により外気をシャットアウトし、経年劣化を抑制する技術が採用されています。このような技術革新により、下葺材の長寿命化が着実に進んでいます。

 

アスファルトルーフィング下葺材選定時の注意点

アスファルトルーフィング下葺材の選定では、建物の用途、立地条件、屋根材の種類を総合的に考慮する必要があります。単純に価格だけで判断せず、長期的な性能とコストパフォーマンスを評価することが重要です。

 

選定時の重要な検討事項

  • 屋根勾配と排水能力の関係
  • 地域の気候条件(積雪・強風・高温等)
  • 屋根材との適合性
  • 施工性と作業効率
  • 総合的なライフサイクルコスト

意外に見落とされがちなのが、可塑剤を含む材料との接触による悪影響です。シーリング材や塩ビシートなどと直接接触すると、可塑剤の影響でアスファルトが軟化し、性能低下を引き起こす可能性があります。設計段階での材料配置検討が必要です。

 

地域特性への対応も重要な選定要因です。寒冷地では低温脆化抑制、温暖地では高温軟化抑制、沿岸部では塩害対策が特に重要となります。メーカー各社では地域限定仕様の製品も展開しており、適切な製品選択により地域特性に最適化された性能を実現できます。

 

施工業者側の留意点

  • 製品の保管条件の遵守
  • 施工環境の適切な管理
  • 重ね幅・固定間隔の厳格な管理
  • 特殊部位での詳細仕様の確認

近年の省エネ基準強化に伴い、断熱性能向上への要求も高まっています。アスファルトルーフィング自体には断熱性能はありませんが、断熱材との組み合わせにおける結露対策や透湿性の考慮が重要になってきています。

 

日新工業による屋根下葺材の技術解説
各種下葺材の特性比較と選定指針が詳細に解説されています。

 

最新の技術動向として、遮熱性能を付加した高機能アスファルトルーフィングの開発も進んでおり、建物の省エネ性能向上への貢献が期待されています。建築業従事者としては、これらの技術革新を積極的に取り入れ、顧客に最適なソリューションを提供することが求められています。