
圧力容器は労働安全衛生法に基づき、規模や使用条件により「第一種圧力容器」「第二種圧力容器」「小型圧力容器」「簡易容器」の4つに分類されています。この分類は圧力容器の安全性確保と法的規制の適用範囲を明確にするために設けられており、それぞれ異なる設計基準、検査義務、製造許可制度が適用されます。
参考)第一種圧力容器と第二種圧力容器の違いとは?
各種類の圧力容器は、内容物の性質(液体または気体)、容器の規模(内容積や寸法)、使用圧力の大きさによって区別されており、特に第一種と第二種の違いは「飽和液を保有するか気体を保有するか」という根本的な違いがあります。建築業界では、空調設備、給湯システム、ボイラー設備などで圧力容器が広く使用されており、適切な分類による選定が重要となっています。
参考)基礎知識
第一種圧力容器は、大気圧における沸点を超える温度の液体を保有する容器として定義され、最も厳格な規制が適用される圧力容器です。具体的には、蒸気その他の熱媒を受け入れて固体や液体を加熱する容器、容器内の化学反応により蒸気が発生する容器、液体成分の分離のために液体を加熱し蒸気を発生させる容器などが該当します。
参考)第一種圧力容器(小型圧力容器)の適用区分
第一種圧力容器の製造には都道府県労働局による製造許可が必要であり、製造・輸入・設置の各段階で検査が義務付けられています。使用開始後も年1回の登録性能検査機関による性能検査が必要であり、最も厳しい安全管理が求められます。
しかし、ゲージ圧力0.1MPa以下で使用する容器で内容積が0.04m³以下または胴の内径が200mm以下かつ長さが1000mm以下の容器、および最高ゲージ圧力値と内容積の積が0.004以下の容器は除外されます。建築業界では化学プラントの反応器や大型ボイラーシステムなどがこの分類に該当し、特に高温・高圧環境での使用において重要な役割を果たしています。
参考)圧力容器とは?第一種、第二種圧力容器について違いを解説|MU…
第二種圧力容器は、ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を内部に保有する容器(第一種圧力容器を除く)として定義されており、内容積が0.04m³以上の容器または胴の内径が200mm以上かつ長さが1000mm以上の容器が該当します。この分類は第一種圧力容器と比較して比較的低圧で運用されることが多く、安全基準も相応の設計が許容されています。
参考)第二種圧力容器の適用区分
第二種圧力容器の特徴は気体の圧縮性流体としての性質にあり、圧力を加えると体積が変化しやすいため、液体を扱う第一種とは異なる安全上の配慮が必要です。製造時には個別検定の受検が義務付けられているものの、第一種圧力容器ほど厳格な製造許可制度は適用されません。
参考)第二種圧力容器、小型ボイラー、小型圧力容器について - ボイ…
建築業界では圧縮空気タンクや中小規模のガス供給システムなど、比較的安全性が確保しやすい用途で使用されることが多く、コスト面や設置のしやすさが優先される場面で選択されます。家庭用ガスボンベから工業用圧縮空気システムまで幅広い用途で活用されており、建築設備における重要な構成要素となっています。
参考)圧力容器の用途とは?撹拌・圧送・ろ過・などの実際の採用事例で…
小型圧力容器は第一種圧力容器の一部として位置付けられており、ゲージ圧力0.1MPa以下で使用する容器で内容積が0.2m³以下または胴の内径が500mm以下かつ長さが1000mm以下の容器、および最高ゲージ圧力値と内容積の積が0.02以下の容器が該当します。特にPV値(圧力×内容積)による分類基準が重要で、0.004以上0.02未満のPV値を持つ容器が小型圧力容器として区分されます。
参考)圧力容器区分について
小型圧力容器は小型ボイラー及び小型圧力容器構造規格に基づく製造が義務付けられており、製造時または輸入時に個別検定の受検、1年に1回の定期自主検査などが義務化されています。第一種圧力容器と比較して規模は小さいものの、液体の加熱や蒸気発生などの機能を持つため、適切な安全管理が必要です。
参考)小型圧力容器 |ユニコントロールズ株式会社
建築業界では小規模な給湯システム、局所的な加熱設備、実験室用の小型反応器などで使用されることが多く、設置スペースの制約がある建築物において重要な役割を果たします。PV値による明確な分類基準により、設計者は容器の規模と用途に応じて適切な圧力容器を選定することが可能になっています。
簡易容器は圧力容器の中でも最も規模の小さい分類に属し、PV値が0.004以下の容器として定義されています。この分類の容器は「簡易ボイラ等構造規格」に基づいて構造が規制されており、小型圧力容器よりもさらに緩やかな規制が適用されます。
参考)圧力容器の規定|お役立ち情報|住宅機器販売部|森永エンジニア…
簡易容器は建築設備における補助的な圧力保持装置として使用されることが多く、密閉型隔膜式膨張タンクなどがこの分類に該当します。特に建築物の空調システムにおいて、冷暖房の効率化や圧力調整のために重要な役割を果たしています。
参考)建築設備事業|事業と製品
建築業界における簡易容器の活用例としては、受水槽システムの圧力調整装置、小規模な温水供給システムの膨張タンク、空調設備の圧力バッファタンクなどがあります。これらの設備は建築物の快適性と安全性を確保するために不可欠であり、適切な容量設計と設置により、建築設備全体の性能向上に貢献しています。
圧力容器の設計にはJIS B 8265「圧力容器の構造-一般事項」およびJIS B 8267「圧力容器の設計」が主要な技術基準として適用されており、設計圧力30MPa未満の圧力容器の構造について詳細に規定されています。これらの規格は高圧ガス保安法、電気事業法、ガス事業法、労働安全衛生法の4つの法令における技術基準の解釈例として位置付けられています。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000004052.html
2024年の改正では水素社会の実現に向けた技術的対応として最低使用温度の導入が行われ、液体水素(-253℃)、液体窒素(-196℃)、液体ヘリウム(-269℃)などの極低温条件での使用に対応した材料基準が設定されました。この改正により、建築業界でも将来的な水素エネルギー活用に向けた設備設計が可能になっています。
圧力容器の安全管理では製造から使用まで一貫した検査体制が確立されており、第一種圧力容器では製造許可、個別検定、性能検査が義務付けられています。建築業界では労働安全衛生法の規制対象となる特定機械として扱われ、適切な設置・運用・保守が法的に義務付けられており、安全性の確保が最優先事項となっています。
参考)https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/001493234.pdf