厚板鋼板規格基準とサイズ材質性能

厚板鋼板規格基準とサイズ材質性能

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厚板鋼板規格基準

厚板鋼板規格の概要
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JIS規格による分類

SS400、SM490、SN材など用途別に細分化された規格体系

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寸法許容差管理

板厚・幅・長さそれぞれに厳格な許容差規定を設定

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品質保証体系

材質・機械的性質・溶接性の総合的な性能保証

厚板鋼板の規格は、日本工業規格(JIS)を中心とした体系的な基準により管理されています。厚板とは通常、板厚6mm以上の鋼板を指し、建築・土木・造船などの幅広い分野で使用される重要な構造材料です。
厚板鋼板の主要な規格として、一般構造用圧延鋼材(SS)溶接構造用圧延鋼材(SM)、**建築構造用圧延鋼材(SN)**があります。これらは用途や要求性能に応じて使い分けられ、それぞれ異なる化学成分や機械的性質の基準が設けられています。

 

規格選定においては、使用環境、荷重条件、溶接の有無などを総合的に検討する必要があります。特に近年では、耐震性能の向上を目的としたSN材の採用が増加しており、建築構造物の安全性確保に重要な役割を果たしています。

厚板鋼板のJIS規格体系

厚板鋼板のJIS規格は、JIS G3101(一般構造用圧延鋼材JIS G3106(溶接構造用圧延鋼材)、**JIS G3136(建築構造用圧延鋼材)**の3つの主要規格で構成されています。
**SS400(一般構造用鋼材)**は、建築に限らず最も広く使用される基本的な鋼材です。引張強度400N/mm²以上を保証し、汎用性が高く価格も比較的安価です。溶接を行わない構造部材や、軽微な溶接部材に適用されます。

 

**SM材(溶接構造用鋼材)**は、SS材よりも化学成分の規定が厳しく、溶接性を重視した鋼材です。炭素当量(Ceq)が制限されており、溶接割れの発生リスクを抑制できます。SM400A、SM400B、SM400Cのように、材質記号の後に続くアルファベットにより溶接性のグレードが区別されています。

 

近年注目されている**SN材(建築構造用鋼材)**は、1994年にJIS規格化された比較的新しい鋼種で、耐震性向上に主眼を置いた設計となっています。降伏点のばらつきを抑制する規定があり、塑性変形性能と溶接性を両立した高性能鋼材です。

厚板鋼板の寸法許容差規格

厚板鋼板の寸法許容差は、**JIS G3193「熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差」**により詳細に規定されています。
板厚の許容差は、板厚と幅により細分化された表により管理されています。例えば、板厚6.30mm以上10.0mm未満、幅1600mm未満の場合、許容差は±0.55mmとなります。板厚が厚くなるほど、また幅が広くなるほど許容差は大きくなる傾向があります。
幅の許容差は、ミルエッジとカットエッジで異なる基準が適用されます。カットエッジでは通常の切断方法(A)、再切断・精密切断(B)、スリット切断(C)の3段階に分類され、より精密な加工ほど厳しい許容差が適用されます。
長さの許容差は、鋼板の長さに応じて段階的に設定されており、一般的にプラス公差のみが認められています。長さ6000mm以上8000mm未満の場合、許容差は+40mm/-0mmとなります。
道路橋示方書では、「鋼板の厚さはJIS G3193の表5を適用し、かつ、マイナス側の許容差が公称板厚の5%以内でなければならない」と規定されており、構造物の安全性確保のため、より厳しい基準が求められています。

厚板鋼板の材質規格と性能

厚板鋼板の材質規格は、化学成分、機械的性質、内部品質の3つの観点から規定されています。特にSN材では、使用部位に応じてA種、B種、C種の3段階に分類され、それぞれ異なる性能要件が設定されています。
**A種(SN400A、SN490A)**は、溶接のない補助部材に適用される最も基本的なグレードです。化学成分の規定は比較的緩やかで、引張強度と降伏点のみが規定されています。

 

**B種(SN400B、SN490B)**は、塑性変形性能と溶接性を確保し、耐震上主要な構造部材に適用されます。降伏比の上限値(80%以下)が規定され、炭素当量(Ceq)または溶接割れ感受性組成(Pcm)が制限されています。また、シャルピー衝撃試験による靭性評価も義務付けられています。

 

**C種(SN400C、SN490C)**は、B種の性能に加えて板厚方向の特性が規定されており、厚さ方向の絞り値25%以上が要求されます。超音波探傷試験による内部欠陥の検査も実施され、耐ラメラテア性能に優れた高品質鋼材です。
機械的性質では、引張強度、降伏点、伸び、衝撃値などが規定されており、板厚により異なる基準値が設定されています。例えば、SN400Bの25mm厚では、降伏点235N/mm²以上、引張強度400~510N/mm²、伸び21%以上が要求されます。

厚板鋼板の溶接性能と規格対応

厚板鋼板の溶接性能は、化学成分、板厚、溶接条件により大きく左右されるため、規格では詳細な規定が設けられています。特に大入熱溶接では、熱影響部(HAZ)の組織粗大化による靭性低下が課題となるため、専用の成分設計が重要です。
**炭素当量(Ceq)**は溶接割れ感受性の指標として広く使用されており、SN材では0.38%以下(板厚25mm)に制限されています。また、**溶接割れ感受性組成(Pcm)**も併用され、より精密な溶接性評価が可能となっています。
低温靭性は、寒冷地や低温環境での使用を考慮した重要な性能指標です。日本溶接協会規格**WES3003「低温構造用鋼板判定基準」**により、使用温度に応じた衝撃試験温度と要求靭性値が規定されています。
予熱・後熱温度は、板厚と化学成分に基づき決定されます。厚肉材では溶接時の冷却速度が速くなるため、適切な予熱により硬化組織の生成を抑制し、割れを防止する必要があります。
近年では、NK-HIWELなどの高性能鋼材により、フリー窒素の低減による靭性向上技術が実用化されており、大入熱溶接条件下でも優れた靭性を確保できるようになっています。これにより、厚肉構造物の溶接施工性が大幅に向上し、建設工期の短縮とコスト削減に貢献しています。

厚板鋼板規格の最新動向と特殊用途

厚板鋼板の規格は、建築技術の進歩や環境要求の高度化に対応して継続的に改善されています。特に**耐候性鋼(SMA材)**は、表面に緻密な安定さびを形成することで腐食進行を抑制する画期的な鋼材として注目されています。
レーザー切断用鋼板では、微量元素の活用と特殊圧延技術により、切断面の品質向上を図った専用規格が制定されています。これにより、後加工工程での品質安定化とコスト削減が実現されています。
極厚材(板厚150mm超)では、従来の圧延技術では対応困難な寸法領域において、受渡当事者間の協定による特別仕様での供給が行われています。大型構造物や重機械部品など、特殊用途での需要に対応しています。
環境対応型鋼材として、リサイクル性の向上や製造時CO₂排出量の削減を考慮した成分系の開発も進んでいます。持続可能な社会の実現に向けて、鋼材規格も環境性能の観点から見直しが進められています。
デジタル技術の活用により、品質トレーサビリティシステムの導入も進んでおり、製造から施工まで一貫した品質管理体制の構築が可能となっています。これにより、規格適合性の証明がより確実かつ効率的に行えるようになり、建設プロジェクトの品質保証レベルが向上しています。