
ボルトの首下長さ規格は、建築業界において構造強度と施工品質を左右する重要な要素です。JIS B 1180により明確に規定されており、特に六角ボルトにおいては首下長さによって全ねじと半ねじが自動的に決定されます。
JIS規格では、ボルトの首下長さを基準として、以下の要素が規定されています。
建築現場で使用される六角ボルトは、主に**等級B(中ボルト)**が標準的に採用されており、これは市場流通の約90%を占めています。等級Aは精密機械用、等級Cは一般構造用として位置づけられています。
ボルトの首下長さ規格は、使用材質によっても影響を受けます。**SS材(一般構造用鋼材)やSUS材(ステンレス鋼)**では、同一の首下長さでも要求される機械的性質が異なるため、適用される規格項目が変わります。
特に建築用途では、強度区分4.6から10.9まで幅広く規定されており、構造計算に基づいた適切な強度区分の選定が求められます。
JIS B 1180で規定される六角ボルトの首下長さは、M3からM48まで体系的に整備されています。以下に主要な規格寸法を示します:
ねじ径 | 首下長さ範囲 | 標準ピッチ | 対辺寸法 |
---|---|---|---|
M3 | 6~30mm | 0.5 | 5.5mm |
M6 | 10~60mm | 1.0 | 10mm |
M10 | 16~100mm | 1.5 | 16mm |
M16 | 25~160mm | 2.0 | 24mm |
M20 | 30~200mm | 2.5 | 30mm |
これらの首下長さは、建築構造計算における有効断面積や引張強度の算定基準となるため、設計段階での正確な理解が必要です。
興味深いことに、M8以下の細径ボルトでは、首下長さ50mm以下はすべて全ねじとなり、半ねじの製造は行われていません。これは製造コストと需要バランスを考慮した業界慣行です。
建築構造においてボルトの首下長さを決定する際は、以下の要素を総合的に考慮する必要があります:
締結部材厚の算定。
適正長さの計算式。
L = a + b + c
実際の建築現場では、M10ボルトでの締結例として、部材厚20mm、座金類10mm、余長5mmの場合、首下長さ35mmが標準的に選定されます。
ボルトの首下長さによる全ネジ・半ネジの区分は、JIS B 1180で明確に規定されています。この区分は建築施工における重要な選択基準となります。
半ネジのネジ部長さ規格。
例えば、M12×60mmのボルトの場合、12×2+6=30mmがねじ部となり、残り30mmが軸部(首下胴部)となります。
全ねじとなる首下長さ:
建築現場では、せん断力を受ける接合部には半ねじ、引張力主体の接合部には全ねじが選択される傾向があります。半ねじは軸部が平滑であるため、せん断荷重に対する強度が高く、ピン接合に適しています。
建築用ボルトの首下長さ規格は、表面処理仕様とも密接に関連しています。特に屋外使用や腐食環境下では、適切な表面処理の選定が構造物の長寿命化に直結します。
主要な表面処理と適用。
近年の環境規制により、従来の6価クロム処理から3価クロム化成処理への移行が進んでいます。この変更により、ボルト・ナットの摩擦係数が変化するため、トルク管理値の見直しが必要となっています。
建築現場では、海岸地域や融雪剤使用地域において、高ニッケル亜鉛合金めっき(ニッケル含有率15%)の採用が増加しています。これらの高耐食性処理では、首下長さの寸法精度がより重要となります。
意外な事実として、表面処理の膜厚により実質的な首下長さが変わるため、精密な締結部では処理後寸法での管理が必要です。特に溶融亜鉛めっきでは片側40μm程度の膜厚増加があり、ネジ部のかみ合いに影響する場合があります。