ボルト首下長さ規格と使い分け解説

ボルト首下長さ規格と使い分け解説

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ボルト首下長さ規格の基本

ボルト首下長さ規格 - 基本知識
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JIS規格の基本構造

日本工業規格により首下長さとねじ部長さが明確に規定されています

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全ネジと半ネジの区分

首下長さにより全ねじと半ねじが自動的に決まります

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建築現場での重要性

適正な首下長さが構造強度と施工効率を左右します

ボルトの首下長さ規格は、建築業界において構造強度と施工品質を左右する重要な要素です。JIS B 1180により明確に規定されており、特に六角ボルトにおいては首下長さによって全ねじと半ねじが自動的に決定されます。

ボルト首下長さの規格体系

JIS規格では、ボルトの首下長さを基準として、以下の要素が規定されています。

  • 首下長さの許容差:製造精度を保つための寸法公差
  • ねじ部長さ:首下長さに応じた標準的なねじ切り長さ
  • 部品等級:A、B、Cの3等級による品質区分

建築現場で使用される六角ボルトは、主に**等級B(中ボルト)**が標準的に採用されており、これは市場流通の約90%を占めています。等級Aは精密機械用、等級Cは一般構造用として位置づけられています。

首下長さと材質の関係

ボルトの首下長さ規格は、使用材質によっても影響を受けます。**SS材(一般構造用鋼材)SUS材(ステンレス鋼)**では、同一の首下長さでも要求される機械的性質が異なるため、適用される規格項目が変わります。
特に建築用途では、強度区分4.6から10.9まで幅広く規定されており、構造計算に基づいた適切な強度区分の選定が求められます。

ボルト首下長さ規格表の詳細解説

JIS B 1180で規定される六角ボルトの首下長さは、M3からM48まで体系的に整備されています。以下に主要な規格寸法を示します:

ねじ径 首下長さ範囲 標準ピッチ 対辺寸法
M3 6~30mm 0.5 5.5mm
M6 10~60mm 1.0 10mm
M10 16~100mm 1.5 16mm
M16 25~160mm 2.0 24mm
M20 30~200mm 2.5 30mm

これらの首下長さは、建築構造計算における有効断面積引張強度の算定基準となるため、設計段階での正確な理解が必要です。
興味深いことに、M8以下の細径ボルトでは、首下長さ50mm以下はすべて全ねじとなり、半ねじの製造は行われていません。これは製造コストと需要バランスを考慮した業界慣行です。

ボルト首下長さと締結部設計の関係

建築構造においてボルトの首下長さを決定する際は、以下の要素を総合的に考慮する必要があります:
締結部材厚の算定

  • 主材+副材の合計厚み
  • 座金・ワッシャーの厚み
  • ナット厚み+3ピッチ分の余長

適正長さの計算式
L = a + b + c

  • a:部材厚の合計
  • b:座金・ナット厚
  • c:ナットから3ピッチ分の突出し

実際の建築現場では、M10ボルトでの締結例として、部材厚20mm、座金類10mm、余長5mmの場合、首下長さ35mmが標準的に選定されます。

ボルト首下長さ規格の全ネジ・半ネジ区分

ボルトの首下長さによる全ネジ・半ネジの区分は、JIS B 1180で明確に規定されています。この区分は建築施工における重要な選択基準となります。
半ネジのネジ部長さ規格

  • 首下129mm以下:ネジ径×2+6mm
  • 首下130~219mm:ネジ径×2+12mm
  • 首下220mm以上:ネジ径×2+25mm

例えば、M12×60mmのボルトの場合、12×2+6=30mmがねじ部となり、残り30mmが軸部(首下胴部)となります。
全ねじとなる首下長さ

  • M6:18mm以下
  • M8:22mm以下
  • M10:26mm以下
  • M12:30mm以下
  • M16:38mm以下

建築現場では、せん断力を受ける接合部には半ねじ、引張力主体の接合部には全ねじが選択される傾向があります。半ねじは軸部が平滑であるため、せん断荷重に対する強度が高く、ピン接合に適しています。

ボルト首下長さ規格と表面処理の関係

建築用ボルトの首下長さ規格は、表面処理仕様とも密接に関連しています。特に屋外使用や腐食環境下では、適切な表面処理の選定が構造物の長寿命化に直結します。
主要な表面処理と適用

  • 電気亜鉛めっき:一般建築用、膜厚5~15μm
  • 溶融亜鉛めっき:重防食用、膜厚45~85μm
  • 3価クロム化成処理:環境規制対応型
  • ステンレス:高耐食性が要求される用途

近年の環境規制により、従来の6価クロム処理から3価クロム化成処理への移行が進んでいます。この変更により、ボルト・ナットの摩擦係数が変化するため、トルク管理値の見直しが必要となっています。
建築現場では、海岸地域や融雪剤使用地域において、高ニッケル亜鉛合金めっき(ニッケル含有率15%)の採用が増加しています。これらの高耐食性処理では、首下長さの寸法精度がより重要となります。
意外な事実として、表面処理の膜厚により実質的な首下長さが変わるため、精密な締結部では処理後寸法での管理が必要です。特に溶融亜鉛めっきでは片側40μm程度の膜厚増加があり、ネジ部のかみ合いに影響する場合があります。