防火対象物用途一覧と種類別分類の基本

防火対象物用途一覧と種類別分類の基本

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防火対象物用途一覧

この記事の要点
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消防法施行令別表第一による分類

防火対象物は1項から20項まで用途別に細かく区分され、不動産の防火管理に直結します

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特定と非特定の違い

不特定多数が利用するか、避難困難者がいるかで特定防火対象物となり厳格な基準が適用されます

⚖️
複合用途の判定方法

複数の用途が混在する建物は16項イまたはロに分類され、各用途部分ごとに設備基準が決定されます

防火対象物の基本的な用途区分一覧

 

消防法施行令別表第一では、防火対象物を1項から20項までの用途に分類しています。この分類は火災予防行政の基本となり、各用途の火災リスクや避難の難易度に応じて消防設備の設置基準や防火管理体制が定められています。
参考)https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento094_10_sanko03.pdf

主要な用途区分として、1項には劇場・映画館・公会堂、2項にはキャバレー・遊技場・カラオケボックス、3項には飲食店・料理店が含まれます。4項は百貨店やマーケットなどの物品販売店舗、5項は旅館・ホテル・共同住宅、6項は病院・診療所・老人ホーム・保育所などの福祉施設です。
参考)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000043207.pdf

7項は学校、8項は図書館・博物館、9項は公衆浴場、10項は停車場・発着場となっています。11項は神社・寺院、12項は工場・作業場、13項は自動車車庫、14項は倉庫、15項は前各項に該当しない事業場です。16項は複合用途防火対象物、16項の2は地下街、17項は文化財、18項はアーケードという構成になっています。
参考)https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento255_05_sankou1_1.pdf

消防庁の防火対象物用途区分表(PDF)
防火対象物の全用途区分の正式な一覧表が掲載されており、用途判定の基礎資料として活用できます。

 

防火対象物における特定用途と非特定用途の違い

防火対象物は「特定用途」と「非特定用途」に大別され、この区分が防火管理者の選任基準や消防設備の設置要件に大きく影響します。特定防火対象物とは、不特定多数の人が出入りする建物、または火災発生時に避難が困難な人が利用する施設を指します。
参考)https://kyubou.co.jp/column/%E9%98%B2%E7%81%AB%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%80%85%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E9%98%B2%E7%81%AB%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E7%82%B9%E6%A4%9C%E6%99%82%E6%9C%9F/

具体的には、劇場・映画館・キャバレー・遊技場・百貨店・飲食店・ホテル・旅館などの商業施設が特定防火対象物に該当します。また、病院・診療所・老人ホーム・幼稚園・保育所・身体障害者福祉施設なども、利用者が自力避難困難という特性から特定防火対象物として扱われます。特定防火対象物では収容人員30人以上(老人ホームなど入所型施設では10人以上)で防火管理者の選任が義務付けられます。
参考)https://www.info.city.tsu.mie.jp/www/contents/1477387879909/simple/reibeppyou.pdf

一方、非特定防火対象物は、勤務する従業員が限定される工場・事務所・学校・図書館・公衆浴場・倉庫・駐車場などが該当します。これらは建物内の人員がある程度限定されており、利用者が建物構造や避難経路に慣れていることから、避難リスクが相対的に低いと判断されます。非特定防火対象物では収容人員50人以上で防火管理者の選任が必要となり、特定防火対象物より基準が緩やかです。
参考)https://offi-cos.co.jp/column/p1808396/

💡 意外な事実として、学校は生徒数が多くても非特定防火対象物に分類されます。これは生徒が日常的に在籍し建物に習熟しているため、避難計画が立てやすいと判断されるためです。
参考)https://hagimotomasashi.net/archives/444

特定防火対象物と非特定防火対象物の違いの詳細解説
各分類の具体例や防火管理者選任基準の違いについて、実務的な観点から詳しく説明されています。

 

防火対象物の複合用途判定と16項分類の実務

複合用途防火対象物とは、一つの建物内に2つ以上の異なる用途が存在する防火対象物を指します。例えば1階が飲食店、2階が事務所、3階が住宅というように異なる用途が混在する雑居ビルが典型例です。
参考)https://shoubou.tokyo.jp/category1/entry21.html

消防法施行令別表第一の16項では、複合用途防火対象物を「イ」と「ロ」に分類しています。16項イは、1項から4項、5項イ、6項、9項イの特定用途が一部に含まれる複合用途防火対象物で、より厳格な基準が適用されます。16項ロは、16項イ以外の複合用途防火対象物で、特定用途を含まない組み合わせ(貸事務所と貸倉庫、事務所付き住宅など)が該当します。
参考)https://www.fesc.or.jp/sp_navi/list02/

複合用途の判定では、原則として棟ごとに用途を決定しますが、従属的な用途は主たる用途に包含して扱うことができます。また、一般住宅部分と令別表対象物用途が混在する場合、令別表対象物の床面積合計が50㎡を超えると複合用途防火対象物として扱われます。複合用途防火対象物では、各用途部分ごとに消防設備の設置基準が適用されるため、用途判定の正確性が重要です。
参考)https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000062754.pdf

防火対象物の用途判定における実務上の注意点

用途判定では、他法令の届出名称だけで判断せず、防火対象物の実際の使用形態、管理状況、火災時の危険性を総合的に考慮する必要があります。例えば、登記上は事務所でも実態が飲食を伴う営業であれば3項の飲食店として判定されます。
参考)https://shoubou.tokyo.jp/category1/entry13.html

同一敷地内に複数の建物が存在する場合、原則として各棟ごとに用途判定を行いますが、主たる用途に従属的に使用される建物は主たる用途として一括判定できます。この「従属的用途」の考え方は、無用な用途区分の細分化を避け、防火管理をシンプルに運用するための重要な概念です。
参考)https://hagimotomasashi.net/archives/296

また、用途変更が発生した場合は速やかに消防署への届出が必要です。テナントの入れ替わりや事業内容の変更により防火対象物の項別が変わると、必要な消防設備や防火管理体制も変更になる可能性があります。不動産従事者は賃貸借契約時や物件管理時に、現在の用途と消防法上の分類が一致しているか確認することが重要です。​
東京消防庁の消防法施行令別表第1(PDF)
用途判定の正式な基準となる政令別表の全文が確認でき、実務での判定作業に必須の資料です。

 

防火対象物用途判定が防火管理者選任と設備設置に与える影響

防火対象物の用途判定は、防火管理者の選任義務と資格要件に直結します。特定防火対象物で延べ面積300㎡以上または収容人員30人以上の場合、甲種防火管理者の選任が必要です。非特定防火対象物では延べ面積500㎡以上または収容人員50人以上で、甲種または乙種防火管理者の選任が求められます。
参考)https://sol.kepco.jp/useful/anpis/w/bokakanrisya/

消防設備の設置基準も用途によって大きく異なります。例えば自動火災報知設備は、特定防火対象物では延べ面積300㎡以上、非特定防火対象物では500㎡以上で設置義務が生じます。スプリンクラー設備については、特定用途の種類や階数、床面積によって詳細な設置基準が定められています。
参考)https://fire.co.jp/document/law/

複合用途防火対象物では、各用途部分ごとに当該用途の基準に従って消防設備を設置する必要があります。また、特定用途部分の床面積合計が一定規模以上になる階では、より厳格な設備基準が適用される場合があります。これらの要件を満たさない場合、消防法違反として是正命令や使用停止命令の対象となり、最悪の場合は罰則が科される可能性もあります。
参考)https://www.nohmi.co.jp/product/pdf/cms/rqim3400000002y6-att/syoukas.pdf

不動産従事者としては、物件の売買・賃貸・管理において、現状の用途と消防法上の分類を正確に把握し、必要な防火管理体制と消防設備が整っているかを確認することが法令遵守とトラブル回避の鍵となります。用途変更時には事前に消防署と協議し、必要な届出と設備改修を確実に実施する体制を整えることが重要です。​