
ブレーカーは電気設備における重要な保護機器であり、過電流や漏電から配線や機器を守る役割を果たします。主な種類として、安全ブレーカー(配線用遮断器)、漏電ブレーカー(漏電遮断器)、主幹ブレーカー、配線用遮断器(NFB)の4つが挙げられます。
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安全ブレーカーは一般住宅や小規模施設で使用される小型の配線用遮断器で、10A~30Aの回路を保護します。各部屋やエリアごとに設置され、過電流が流れた際に該当回路のみを遮断するため、停電範囲を最小限に抑えられます。建築現場では分電盤の分岐回路用として多用され、キッチンやリビングなどエリア別の電力管理に適しています。
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漏電ブレーカーは漏電を検知して自動的に回路を遮断する機能を持ち、感電や火災を防止します。内部の零相変流器が行きと帰りの電流差を検知し、15~30mA程度の漏電電流で素早く遮断する仕組みです。水回りや屋外設備など漏電リスクが高い場所では、10mAや15mAの高感度タイプが推奨されます。
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配線用遮断器(NFB)は国際的にはMCCBと呼ばれ、三菱電機が開発した商品名がNFBとして広く定着しました。短絡や過負荷から電路や電線を保護する働きがあり、工場や商業施設など大容量が必要な現場で使用されます。反限時特性により、電流値に応じて動作時間が変化し、始動電流などの瞬間的な大電流では不要動作しない設計となっています。
参考)配線用遮断器の構造、性能、保護協調について
ブレーカーの極数(P)は接続する電源線の本数を示し、素子数(E)は過電流検出機構の数を表します。この組み合わせにより、単相や三相など異なる電源方式に対応したブレーカーが選定できます。
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2P1Eタイプは単相2線式100V回路に使用され、1極のみで過電流を検出します。家庭用コンセント回路や照明回路など、一般的な100V回路の保護に適しており、「N」または「W」と表示された端子に中性線を接続します。建築現場では一般電源回路の分岐ブレーカーとして最も多く使用される仕様です。
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2P2Eタイプは単相2線式200V回路や単相3線式のL1-L2間200V回路に使用され、2極で過電流を検出します。エアコンやIHクッキングヒーターなど200V機器の専用回路に必要で、両極で異常を検知できるため安全性が高まります。商業施設や住宅の高容量機器回路には必須の仕様となっています。
参考)ブレーカーの種類と役割をわかりやすく解説!
3P3Eタイプは三相3線式回路に対応し、3極すべてで過電流を検出します。工場の動力設備や業務用空調機器など三相電源を使用する機器の保護に使用され、各相のバランスを監視しながら保護動作を行います。建築現場では電動工具用の仮設動力盤や昇降機などの設備に採用されます。
参考)配線用遮断器・漏電遮断器の機能と選定
極数と素子数の選定を誤ると、適切な保護が行えず機器の故障や火災につながる恐れがあります。電源方式と負荷の種類を正確に把握し、適合する仕様のブレーカーを選定することが建築事業者に求められる基本的な知識です。
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ブレーカーの動作原理は種類によって異なり、保護対象とする異常の種類に応じた検知メカニズムを持っています。安全ブレーカーと配線用遮断器は主に過電流を、漏電ブレーカーは電流の漏洩を検知して動作します。
参考)TERASU辞書
安全ブレーカーは熱動作式と電磁式の2つの遮断機構を内蔵しています。熱動作式はバイメタルの熱膨張を利用し、定格電流を超える電流が一定時間流れ続けると動作します。一方、電磁式は短絡などによる急激な電流増加に瞬時に反応し、電磁力で接点を開放します。この二重の保護機構により、過負荷と短絡の両方に対応できる設計となっています。
漏電ブレーカーは零相変流器(ZCT)による電流差検知が特徴です。正常時は行きと帰りの電流が同じため零相変流器に電圧は発生しませんが、漏電が起きると電流差によって二次側に電圧が誘起されます。この信号を電子回路で増幅し、設定感度(15~30mA)を超えた時点で電磁装置を駆動して遮断器を開放する仕組みです。数十ミリ秒以内の高速動作により、感電事故を未然に防ぎます。
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配線用遮断器(NFB)は反限時特性を持ち、電流値によって動作時間が変化します。定格電流の1倍未満では動作せず、大電流ほど瞬間的に動作する特性により、電動機の始動電流や突入電流では不要動作しません。建築現場では電動工具の使用時など、一時的な高負荷でブレーカーが落ちないよう、瞬時引外し特性を17倍前後に設定した製品が選ばれます。
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各ブレーカーの動作原理を理解することで、トラブル発生時の原因特定や適切な復旧手順の判断が可能になります。建築事業者は現場の電気設備特性に応じて、最適な保護機構を選定する必要があります。
国内の主要メーカーは用途や容量に応じた多様なブレーカー製品を展開しており、建築事業者は現場の要求仕様に合わせて適切な機種を選定する必要があります。パナソニック、三菱電機、河村電器、日東工業などが代表的なメーカーです。
参考)電源ブレーカ メーカー17社 注目ランキング【2025年】
パナソニックのBJS4032Nは漏電ブレーカーの代表機種で、一般住宅から商業施設まで幅広く対応します。優れた安全性と信頼性を持ち、多様なアンペア設定が可能なため、建築現場での汎用性が高い製品です。小型漏電ブレーカーやケースブレーカーなど、用途に応じた豊富なラインナップも特徴となっています。
参考)ブレーカーの種類
三菱電機のNV-Cシリーズは配線用遮断器(NFB)の定番製品で、工場や商業用設備に適した長寿命と安定した遮断能力を誇ります。反限時特性による始動電流への対応力が高く、動力設備の多い建築現場で重宝されます。三菱電機は国内で初めてノーヒューズブレーカーを開発したメーカーであり、NFBという名称も同社の商品名が一般化したものです。
参考)ノーヒューズブレーカーについて
河村電器のKECシリーズは電子ブレーカーで、電子制御による高精度な保護機能と省スペース設計が特徴です。分電盤や集合住宅での使用に適しており、コンパクトな筐体ながら高い信頼性を実現しています。日東工業のELB30シリーズは安全ブレーカーの高信頼性モデルで、住宅や小規模事業所向けに省エネ設計を採用しています。
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メーカー選定時は、容量、定格電流、遮断方式といった仕様だけでなく、アフターサービスや部品供給体制も考慮すべきです。建築プロジェクトの規模や期間に応じて、長期的な保守性を見据えた製品選択が求められます。
建築現場での適切なブレーカー選定には、負荷容量の計算、環境条件の考慮、保守計画の策定が不可欠です。選定ミスは過負荷による頻繁なトリップや、逆に保護不足による事故リスクを招きます。
負荷容量の計算では、同時使用率と起動電流を考慮した余裕率の設定が重要です。電動機回路では定格電流の10~15倍の始動電流が流れるため、配線用遮断器は瞬時引外し特性が始動電流曲線と交差しない容量を選びます。商業施設や工場では複数機器の同時稼働を想定し、幹線ケーブルの許容電流と整合した定格電流の設定が必要です。
環境条件として、設置場所の湿度や粉じんの影響を評価します。屋外や水回りでは耐環境性の高い製品や高感度漏電ブレーカー(10mA)の採用が推奨されます。仮設電源や工事現場では防塵・防水規格に適合した製品を選定し、養生や定期清掃による保護も重要です。
参考)ブレーカーの長所と寿命を知り安全性と省エネを両立する選び方
ブレーカーの寿命は一般的に8~13年程度で、10年前後が交換時期の目安とされています。頻繁なトリップ、異音や異臭、発熱、焦げ跡などの異常が見られた場合は、寿命に関わらず早期交換が必要です。定期点検では端子部の緩みや変色、動作テストによる機能確認を実施し、漏電ブレーカーはテストボタンによる動作確認を月1回程度行うことが推奨されます。
参考)漏電遮断器の構造、動作原理、性能、保護協調、保守点検について…
建築事業者は竣工後の保守契約やメンテナンス計画の中で、ブレーカーの点検・交換スケジュールを明確化する必要があります。特に商業施設や集合住宅では、定期的な専門業者による診断を受け、予防的な交換を行うことで安全性を維持できます。寿命管理を適切に行うことで、電気火災や感電事故のリスクを大幅に低減し、長期的な設備の信頼性向上につながります。
参考)TOTAL SOLUTION
ブレーカーの種類と安全な復旧手順の詳細解説
配線用遮断器の動作特性と保護協調の技術資料
ブレーカー交換時期の判断基準と点検方法