

中和滴定は、濃度が既知の標準溶液(標準液)を用いて、濃度未知の溶液のモル濃度を正確に求める分析手法です。この方法は酸と塩基の中和反応を利用しており、酸から放出される水素イオン(H⁺)と塩基から放出される水酸化物イオン(OH⁻)が等量で反応する点を利用します。
参考)https://www.try-it.jp/chapters-9049/sections-9140/lessons-9168/
中和滴定の核心となる原理は「酸由来のH⁺の物質量=塩基由来のOH⁻の物質量」という関係式にあります。この等式が成立する点を中和点と呼び、指示薬の色変化によって判別することができます。
参考)https://rikeilabo.com/neutralization-titration
建築現場では、コンクリートの品質管理や排水処理の際に酸性・アルカリ性の測定が必要となる場面があります。中和滴定の原理を理解することで、これらの化学的な品質管理をより正確に実施できるようになります。
参考)https://www.kenken.go.jp/japanese/research/prd/list/topics/hinshitsu2/Chapter4.pdf
中和滴定でモル濃度を求める際に使用する基本公式は acV/1000=a'c'V'/1000 です。この公式において、aは酸の価数、cは酸のモル濃度(mol/L)、Vは酸の体積(mL)を表し、a'は塩基の価数、c'は塩基のモル濃度(mol/L)、V'は塩基の体積(mL)を表します。
参考)https://www.hamajima.co.jp/rika/access/pr/h-ex032-2018.html
価数とは、1分子(または1イオン)が放出できるH⁺またはOH⁻の数を指します。例えば、塩酸(HCl)は1価の酸、硫酸(H₂SO₄)は2価の酸、水酸化ナトリウム(NaOH)は1価の塩基となります。
参考)https://www.rikelab.jp/post/12131.html
計算の際は、体積がmLで表されているため、Lに変換するために1000で割る必要があります。この公式を用いることで、未知の濃度を持つ溶液のモル濃度を正確に算出することが可能です。
参考)https://kou.benesse.co.jp/nigate/science/a13q08bb01.html
中和滴定では、正確な体積測定が不可欠であり、専用の実験器具を使用します。主要な器具には、メスフラスコ、ホールピペット、ビュレット、三角フラスコ(コニカルビーカー)の4種類があります。
参考)https://kimika.net/r4tyuwatekitei.html
主要器具の役割と使用方法
| 器具名 | 用途 | 洗浄方法 |
|---|---|---|
| メスフラスコ | 標準液を正確に調製する | 純水で洗浄→濡れたまま使用 ✓ |
| ホールピペット | 一定量の溶液を正確に計り取る | 純水で洗浄→共洗い→使用 🔄 |
| ビュレット | 溶液を滴下し体積を読み取る | 純水で洗浄→共洗い→使用 🔄 |
| 三角フラスコ | 標準液と未知溶液を反応させる | 純水で洗浄→濡れたまま使用 ✓ |
ホールピペットとビュレットは共洗いが必要です。これは、純水が残っていると溶液の濃度が変化してしまうためです。一方、メスフラスコと三角フラスコは、希釈や反応において物質量に影響を与えないため、共洗いは不要です。
参考)https://benesse.jp/kyouiku/teikitest/kou/science/basic_chemistry/k00545.html
ビュレットで目盛りを読み取る際は、液面のメニスカス(液体表面の湾曲部分)の最下部を読み取ることが重要です。この正確な読み取りが、測定精度を大きく左右します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/69/4/69_148/_pdf
中和滴定は以下の4つのステップで実施します。まず、メスフラスコを用いて標準溶液を調製します。標準溶液とは濃度が正確に分かっている溶液のことで、これを基準として未知濃度の溶液を測定します。
参考)https://www.nupals.ac.jp/n-navi/wp/wp-content/uploads/2024/05/28a16e3dc0560a176c29dcafc9e9f13e.pdf
次に、ホールピペットで標準溶液を正確に計量し、三角フラスコに移します。三角フラスコには指示薬を2~3滴加えておきます。指示薬は中和点を色の変化で知らせる重要な役割を果たします。
参考)https://www.try-it.jp/chapters-9049/sections-9140/lessons-9172/point-2/
その後、濃度未知の溶液をビュレットに入れ、ビュレットの初期目盛りを記録します。滴定開始後は、三角フラスコを軽く揺すりながら、未知溶液を少しずつ滴下していきます。終点に近づくと、滴下直後の色変化が消えにくくなるため、慎重に1滴ずつ加えます。
参考)https://www.nupals.ac.jp/n-navi/wp/wp-content/uploads/2023/07/7e0fac6b900969c35895e12f84a50771.pdf
youtube
代表的な指示薬の特性
中和点に達したら最終目盛りを読み取り、滴下量を計算します。精度を高めるため、同じ滴定を3~4回繰り返し、平均値を算出することが推奨されます。
参考)https://note.com/kagakunooomura/n/n2add4468a8d8
Try IT - 中和滴定の実験器具と手順について詳しく解説
実際の計算例を用いて、モル濃度の求め方を説明します。例えば、0.50mol/Lのシュウ酸水溶液10mLを中和するのに、濃度不明の水酸化ナトリウム水溶液25mLが必要だった場合を考えます。
シュウ酸は2価の酸であるため、放出するH⁺の物質量は「0.50mol/L × 10/1000 L × 2」となります。水酸化ナトリウムは1価の塩基なので、そのモル濃度をx mol/Lとすると、OH⁻の物質量は「x × 25/1000 L × 1」です。
中和の公式から「0.50 × 10/1000 × 2 = x × 25/1000 × 1」が成り立ち、これを解くとx = 0.40 mol/Lとなります。このように、価数と体積を正確に把握することで、未知濃度を算出できます。
中和滴定で誤差が生じる主な原因には、目盛りの読み取りミス、器具の不適切な洗浄、空気中の二酸化炭素の影響などがあります。特に水酸化ナトリウム溶液は空気中のCO₂と反応してしまうため、長時間放置せず、密栓保管することが重要です。
参考)https://www.metrohm.com/ja_jp/discover/blog/2024/avoid-titration-errors.html
また、指示薬の選択を誤ると正確な中和点を捉えられないため、滴定する酸と塩基の組み合わせに応じて適切な指示薬を選ぶ必要があります。実験操作の習熟度も精度に大きく影響するため、繰り返し練習することが推奨されます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssej/23/2/23_KJ00003721258/_pdf
化学のグルメ - 中和計算を一瞬で解く方法についての詳細解説
食酢の酢酸濃度測定では、原液を10倍に希釈してから滴定を行います。滴定で求めた希釈溶液の濃度に10を掛けることで、原液のモル濃度が算出できます。このとき、三角フラスコに水を追加しても、酢酸の物質量自体は変化しないため、計算結果には影響しません。
参考)https://www.nupals.ac.jp/n-navi/wp/wp-content/themes/new-n-navi/img/page/admission/file_form/ad_form014-2022.pdf
建築現場における実務応用として、コンクリート骨材の塩化物量試験では硝酸銀滴定という類似の手法が用いられます。また、排水処理施設での中和処理では、pH測定と組み合わせた滴定技術が活用されています。これらの応用例からも分かるように、中和滴定の原理は建築業務における品質管理の基盤となっています。
参考)https://www.niigata-ctc.or.jp/shiken/mamechishiki/
新潟薬科大学 - 中和滴定による食酢中の酢酸濃度測定の実験手順書(PDF)
より高精度な測定を目指す場合は、溶液調製を質量ベースで行ったり、pHメーターを用いて滴定曲線を作成する方法もあります。自動滴定装置を利用することで、視差誤差や人的ミスを削減し、客観的かつ精確な測定が可能になります。ただし、測定値の妥当性については使用者自身で検証する必要があります。
参考)https://bunseki.jsac.jp/wp-content/uploads/2023/07/p275.pdf
中和滴定の技術は一見単純に見えますが、実は非常に裾野が広く、正確な測定には基礎技術の習熟が不可欠です。研究室レベルでは、適切な手順を踏むことで10⁻²%オーダーの変動係数が得られることも報告されています。建築業従事者にとっても、この基本技術を理解することは、現場における化学的品質管理の精度向上に大きく貢献します。
参考)https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/backno6_pdf28.pdf

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