電力回路と制御回路の違い:動力盤や配線の基本

電力回路と制御回路の違い:動力盤や配線の基本

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電力回路と制御回路の違い

この記事のポイント
電力回路(主回路・動力回路)

機械や設備に大きな電力を供給して動かすための回路です

🎛️
制御回路

電力回路のオン・オフや動作条件を管理するための回路です

🏢
建物管理での重要性

適切な配線分離と保守点検が安全な建物運営に不可欠です

電力回路(主回路)の基本的な役割

 

電力回路は「主回路」や「動力回路」とも呼ばれ、機械や設備の各動力部に電気を供給して実際に動かすための回路です。制御回路からの操作量の指示を受けて、電力変換を実行する役割を担っています。例えば、ビルの空調設備やエレベーター、給水ポンプなど、大きな電力を必要とする機器に電気を送り届けます。
参考)https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1201/17/news011_2.html

動力回路はブレーカや電磁開閉器を介してモータなどを動かす回路であり、三相3線式がそのままモータまで接続されている部分を指します。動力回路だけを集めた盤は「動力盤」と呼ばれ、不動産物件の機械室や電気室に設置されています。大規模な工場や高層ビルになると、電力消費が非常に大きくなるため、専用の電力室が設けられ、そこに大型の配電盤や制御盤が設置されます。
参考)https://www.eltec2016.com/news/489962.html

主回路は電流が流れ込む元となる回路であり、この回路が損傷すると各回路に電力を送り届けることができなくなります。電力回路は一つであることが原則で、電流が流れ込む起点が複数存在すると回路が複雑化し、電流同士がぶつかるという問題が生じます。
参考)https://meaning-dictionary.com/%E3%80%8C%E4%B8%BB%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E5%88%B6%E5%BE%A1%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%80%8D%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84/

制御回路の仕組みと機能

制御回路は主回路から得られる情報をもとに、電力をどのように変換するかを判断し、操作量を求める機能を受け持ちます。動力回路のスイッチやインバーターを意図したタイミングで動かすための回路であり、さまざまな入力信号を受け取って機械を動かすための条件付けをします。制御回路は単相で構成されているのが特徴です。
参考)https://blog.rittal.jp/1460

制御回路で使われる配線を「制御線」と呼び、機械や電子機器のオンオフ切り替えや、設定された値を出力する命令を出すための電線です。制御線は動力線と区別するため、多くの現場では色分けがされており、例えば動力回路は黒色、制御回路(交流)は黄色、制御回路(直流)は青色の電線を使用するなど、会社によって仕様が異なります。
参考)https://syouraibochibochi.com/seigyobann-shikumi-douryokukairo-seigyokairo-chigaitoha/

制御回路には「信号線」も含まれ、アナログやデジタルなどの信号を伝えるためのものです。信号線は機器間で状態や指示を伝達するために使用され、制御信号や状態信号を伝達し、基本的には一方向で機器の状態や動作を監視・指示するために用いられます。
参考)https://www.magtronics.co.jp/column/mono_seigyoban_haisen.html

電力回路と制御回路における配線の違い

制御盤における動力回路で使われる配線を「動力線」、制御回路で使われる配線を「制御線」と言います。動力線は機械や電子機器を作動させるために必要となる電力を供給するための電線で、非常に高電流を流すことが多いため、太いケーブルが必要で、適切な電流容量と安全設計が求められます。​
制御盤内では交流回路と直流回路を分離することが重要です。交流回路は電流が流れる際に磁界を発生させ、これがノイズの原因となります。主回路のモーター駆動電源などに使用される交流に対し、直流はセンサーなどの信号線に用いられることが多く、交流ノイズの影響を受けると誤作動や機器の破損につながる恐れがあります。
参考)https://seisan-system.com/blog/1551

配線の分離方法としては、交流線と直流線を別々のダクトに配線する、または同一ダクト内でも仕切り板などを使用して物理的に分離することが推奨されます。一般的に制御盤内では交流線の方が少ないことが多いため、ダクト内で分離する場合は交流回路をダクトの下側に配線すると、配線量の多い直流回路の変更作業が上面で行いやすくなるというメリットもあります。​

建築設備における動力盤と制御盤の使い分け

建物の規模によって設置される制御盤や配電盤は大きく変わります。小さな建物や住宅の場合、配電盤もシンプルに設計されており、家の中で使う電気は大体10回路くらいあれば十分なことが多いです。中規模のマンションやオフィスビルでは、電力の使用量が多く複雑な電気の分配が必要となるため、配電盤ももう少し大掛かりになり、いくつもの回路をまとめて管理できるように設計されています。​
動力盤には「動力分電盤」と「動力制御盤」の2種類があり、違いは制御回路が入っているかいないかです。制御回路が入っているのが動力制御盤で、制御回路が入っていないのが動力分電盤です。動力制御盤は開閉器と制御回路が入っており、負荷に近接した保守点検の容易な場所に設けられます。
参考)https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4170/documents/jissikeikaku7-5.pdf

各回路の動力負荷までの電路保護、負荷の自動運転及び保護のための各機器を集合させたものが動力制御盤です。動力設備は動力制御盤及び建築設備動力への電源設備とし、機器の監視は原則として中央制御室に設置した建築設備中央監視盤での集中監視とし、制御は各現場制御盤による分散制御とします。
参考)https://www2.panasonic.biz/jp/basics/electric/electricity/in-house-distribution/

電力回路と制御回路における安全管理のポイント

制御盤の配線作業が完了したら、必ず回路図と照らし合わせながら、テスターなどで電線間の導通確認を行います。これにより配線ミスや断線がないかを確認でき、端子台などのネジが緩んでいないかを確認し、必要に応じて増し締めを行うことで、接触不良によるトラブルを未然に防ぎます。​
不動産物件における電気設備の保守点検では、動力制御盤の位置と機能を正確に把握することが重要です。排水ポンプの液面制御や換気ファンの発停・故障警報など、建物の運用に直結する制御機能が集約されているためです。200V級11kW以上の電動機はスターデルタ始動とし、電流計は3.7kW以上の連続運転するファン、ポンプ等及び主要な電動機負荷に設置することが推奨されます。
参考)https://electric-facilities.jp/denki4/douryoku.html

通信ケーブルについても、ノイズ対策として他の動力線や制御線からできるだけ離して配線することが望ましいです。ダクトに入れる場合は最後に配線することで埋もれにくく、ノイズの影響を軽減できます。装置によっては動力線と制御線を分離して配線する工法を用い、装置を動かした時にノイズの悪影響で機器が正常に動作しない問題を防ぐことができます。
参考)https://www.osako-electric.co.jp/point/%E9%85%8D%E7%B7%9A%E3%81%AE%E5%88%86%E9%9B%A2%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%82%BA%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88/

制御盤の配線作業は一つ一つの手順に理由と根拠があります。基本的な手順と配線分離の原則を理解し実践することで、見た目にも美しく、機能的で信頼性の高い制御盤を製作することができ、建物の長期的な安全運用につながります。​