モーター規格と効率基準の設定手順

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モーター規格の効率基準設定

モーター規格の効率基準設定
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効率クラス分類

IEC規格に基づく効率クラス(IEコード)の理解と選定基準

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トップランナー制度

国内規制対応と適用範囲の詳細

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国際規格対応

各国の高効率法規制と認証要件

モーター規格の効率クラス(IEコード)体系

モーター規格における効率クラス(IEコード)は、国際電気標準会議(IEC)が定める重要な指標です。効率クラスは以下のように分類されます:

  • IE1(標準効率): 従来型の効率レベル
  • IE2(高効率): 標準効率より高い性能
  • IE3(プレミアム効率): 現行の高効率規制対応レベル
  • IE4(スーパープレミアム効率): 次世代の高効率レベル
  • IE5(ウルトラプレミアム効率): 最高水準の効率レベル

建築業界では、三相誘導電動機の効率分類において、JIS C 4034-30「回転電気機械─第30部:単一速度三相かご形誘導電動機の効率クラス(IEコード)」を基準として使用します。この規格は、モーターの性能評価と選定において不可欠な指標となっています。
効率クラスの選定には、建築物の用途や設置環境、運転条件を総合的に考慮する必要があります。特に、継続運転を行う空調設備や換気設備においては、より高い効率クラスの選択が長期的な省エネ効果をもたらします。

 

モーター規格のトップランナー基準適用範囲

日本国内では、2015年度よりトップランナー制度によるモーター規制が開始され、建築設備における三相誘導電動機の高効率化が義務化されました。トップランナーモータの適用範囲は以下の通りです:
基本条件

  • 定格周波数:50Hz±5%、60Hz±5%、または両周波数共用
  • 単一速度仕様
  • 定格電圧:1,000V以下
  • 定格出力:0.75kW以上375kW以下
  • 極数:2極、4極、6極
  • 三相かご形誘導電動機

建築業界においては、0.75kW以上がプレミアム効率モータ(トップランナーモータ)の対象となり、0.2kW・0.4kWは標準効率モータとして扱われます。この規制により、建築設備の新設・更新時には、決められた効率クラスのモータを使用することが法的に義務付けられています。
トップランナーモータへの更新時には注意が必要で、同じ負荷条件で運転すると速度が上がり消費電力が増加する傾向があります。そのため、既存システムとの適合性を十分に検討する必要があります。
国内トップランナー規制とモータ効率 IEC 規格の詳細資料

モーター規格の国際認証対応要件

建築業界では、海外プロジェクトや輸入機器の使用において、各国の高効率規制への対応が不可欠です。主要な国際規格と認証要件は以下の通りです:
米国EISA法対応

  • UL規格(UL1004-1)への準拠
  • リード本数:3.7kW以下は9本、5.5kW以上は12本(ラグ式)
  • レコベナイズド・コンポネントマーク対応

欧州規格対応

  • EN規格によるCEマーキング
  • 欧州統一規格(CEN、CENELEC、ETSI)への適合
  • 単一定格200V 50Hzも製作可能

中国・韓国・ベトナム規制対応
各国の高効率規制に対応した専用品の選定が必要
建築プロジェクトでは、使用地域の規制に応じて適切な認証を取得したモーターを選定することが重要です。特に、大型建築物や海外展開を行う案件では、複数国の規格に対応可能な汎用性の高いモーターの採用を検討するべきです。

 

モーター規格の種類別特性と用途分類

建築設備で使用されるモーターは、電源の種類と構造により詳細に分類され、それぞれに適した用途があります:
DCモーター分類

  • ブラシ付モーター: 永久磁石を使用する標準的なタイプ
  • スロット型:一般的な産業用途
  • スロットレス型:低振動が要求される用途
  • コアレス型:高速応答が必要な制御用途
  • ブラシレスモーター: メンテナンス性に優れ、長寿命
  • ステッピングモーター: 正確な位置制御が可能
  • VR型:回転角度の細かい調整が可能
  • PM型:高トルク・小型化に適している
  • HB型:VR型とPM型の長所を併せ持つ

ACモーター分類

  • 誘導モーター: 建築設備で最も多用される汎用タイプ
  • 同期モーター: 一定速度制御に優れる

建築業界では、用途に応じた適切なモーター選択が省エネ性能と運用コストに大きく影響します。空調機器にはブラシレスDCモーターが、エレベーターには同期モーターが、換気ファンには三相誘導電動機が多用されています。

 

モーター規格における独自視点:建築ライフサイクル対応設計

建築業界特有の視点として、建物のライフサイクル全体を考慮したモーター規格の選定が重要です。一般的な設備選定とは異なり、建築物は50年以上の長期使用が前提となるため、将来の規格変更や技術進歩に対応できる拡張性を持つモーター選択が求められます。

 

ライフサイクル対応の重要ポイント

  • 将来規制対応: 現行のIE3基準から将来のIE4、IE5への移行を見据えた選定
  • メンテナンス計画: 建築物の大規模修繕サイクル(12〜15年)と連動した更新計画
  • 技術継続性: メーカーの技術サポート継続性と部品供給体制の確保

建築設備では、モーターの効率向上だけでなく、システム全体の最適化を図ることが重要です。例えば、ファンシステムでは、モーター効率向上とファン形状改善、制御プログラム最適化を組み合わせることで、製品レベルでの高効率化を実現します。
また、建築物の用途変更や設備増設に対応するため、定格出力に余裕を持たせた設計や、インバーター制御との組み合わせによる可変速運転対応も検討すべき要素です。これにより、建築物の長期運用における柔軟性と省エネ性能の両立が可能となります。

 

高効率モータのシステム設計に関する詳細情報