

エポキシ樹脂モルタル材は「材料の強さ」よりも、下地処理の丁寧さで結果が決まります。欠損部は脆弱部分をはつり取り、ほこり等を除去して“強固なコンクリート下地”を出すことが基本です。鉄筋が露出している場合は、ワイヤーブラシ等でケレンして錆を落とし、下地が濡れている場合は十分乾燥させる、という順序を徹底します。これは標準的な欠損部充てん工法でも明確に示されています。
現場で見落としがちなポイントは、清掃の「やったつもり」です。ディスクサンダー等で表面を整えた後でも、粉じんが残れば界面が弱くなります。特に天井面・垂直面で施工する場合、打設中の振動やコテ圧で粉が動き、局所的に“接着していない島”が生まれやすいです。標準工法にあるように、清掃と乾燥は工程として独立させ、写真記録で“完了条件”を見える化すると、後の不具合対応が一気に楽になります。
参考)https://www.j-cma.jp/j-cma-pics/10002441.pdf
また、材料側の特長として「20mm程度の厚さなら垂直面や天井面でもダレずに施工できるノンスランプ性」をうたう製品もありますが、これは下地が健全で、界面が成立している前提で活きる性能です。つまり、ダレない=万能ではなく、下地処理が不十分だと“剥がれずに垂れる”ではなく“付かずに落ちる”事故にもつながります。作業手順書に、下地処理(はつり・ケレン・清掃・乾燥)を必須チェック項目として入れるのが安全です。
エポキシ樹脂モルタル材の多くは、プライマー(エポキシ樹脂系)を先に塗布して界面を作ります。刷毛等で塗り残しが無いように塗布し、主剤・硬化剤は規定量を正確に計量して十分混練、そして「可使時間内に使い切る量」に限定する、というのが標準手順です。特に計量・混練は“だいたい”が許されにくく、配合ズレは硬化不良や接着不良の原因になります。
製品資料では、主剤:硬化剤=2:1(質量比)などの混合比が明示され、20℃・1kgで可使時間90±15分といった管理値が示される例があります。さらに「大量に混合すると発熱し、可使時間が短くなることがある」ため、使い切れる量だけ混ぜるよう注意書きが入っています。現場では、バケツ内で熱が回って急に硬化が進む“バケツ硬化”が典型トラブルなので、混練量を小分けにし、工程の山場(充てん・仕上げ)に合わせて分割混練するのが現実的です。
もう一つの重要点は、プライマーとモルタルの「タイミングの合わせ方」です。標準手順では“プライマーの粘着のあるうちに”エポキシ樹脂モルタルを押さえ込みながら充てんする、とされています。ここを守ると、界面が“機械的な引っかかり”だけでなく、“樹脂同士のなじみ”も期待でき、結果として剥離に強い納まりになります。逆に、プライマーが完全硬化してから乗せる場合は、メーカー仕様が許容するか必ず確認し、必要なら再塗布や表面処理を挟みます。
充てん作業は、「押さえ込み」と「成形」の2つを意識すると精度が上がります。標準工法でも、プライマーの粘着があるうちに、エポキシ樹脂モルタルを十分押さえ込みながら充てんし、最後は金ゴテ等で平滑に仕上げる流れが示されています。押さえ込みが弱いと、界面に空隙が残り、凍結融解や水分侵入の起点になりやすいです。
また製品資料では、最初に「5mm程度を目安にすりつけて密着させる」→「さらにのせて押さえ込む」という手順が記載される例があります。これは“最初の薄塗りで界面を作り、次で断面を作る”という発想で、断面修復の基本動作として覚えておく価値があります。天井・垂直面は特にこの“最初の密着層”が効き、施工直後は良さそうでも、数か月後に浮き・剥がれが出る差になって現れます。
型枠の使いどころも、経験差が出るポイントです。断面欠損が大きい場合や、エッジを通したい場合は、型枠を使って形状を決めた方が、仕上げの手戻りが減ります。資料にも「施工面の状況に応じて型枠を使用」といった記載があり、型枠をずらすように外す注意点まで触れられています。仕上げの見栄えだけでなく、かぶり確保や排水勾配など“性能に直結する形”を守る目的で、型枠を道具として割り切るのが合理的です。
エポキシ樹脂モルタル材は、硬化反応に温度の影響を強く受けるため、養生計画が施工品質の一部になります。標準工法では、硬化するまで(夏期15時間、冬期24時間以上)損傷・汚染を避け、雨水からも養生する、とされています。ここでいう“損傷”は人の接触だけでなく、振動・衝撃・水分が含まれるので、立入禁止や雨養生、近接作業の段取り替えまで含めて現場で設計します。
製品資料でも、仕上げ後は夏季12時間以上、冬季24時間以上の硬化養生が必要で、過度の振動・衝撃・水分を与えないよう注意する旨が示されています。工程が詰まっている現場ほど、硬化前に触ってしまう(足場材が当たる、養生テープがめくれる、雨だれが当たる)などの“小さい事故”が積み上がり、仕上がり不良や早期劣化に直結します。養生は「時間」だけでなく「環境(温度・水)」の管理であると、職長ミーティングで共有しておくと事故が減ります。
意外と見落とされるのが“低温で硬化が極端に遅れる”という材料特性です。資料では、原則として5℃以上の環境で使用する、5℃以下になると硬化が著しく遅れる、といった注意が明記されます。寒冷期の外壁・橋梁・高架下などでは、日中の気温だけで判断せず、夜間の冷え込みを含めて養生時間を延長する、仮囲い・ジェットヒーター等で施工環境を作るなど、現場側の工夫が必要です。
検索上位の解説は「手順」中心になりがちですが、実務で効くのは“不具合の前兆”を早期に拾う観察です。標準工法には、最後に「自主検査」として、仕上がり状態・硬化状態・後片付けを確認する、という工程が入っています。ここを形式で終わらせず、次のように“前兆チェック”に落とし込むと、再補修の芽をその場で摘めます。
チェック例(道具は目視+指触が基本)
さらに“前兆”が出たときの初動も決めておくと強いです。例えば「硬化が遅い」場合、気温・材料温度・混練量(発熱)・下地の湿りの有無をセットで疑い、むやみに触らず養生時間を延長する、という判断ができます。資料には温度条件(5℃以上推奨)や、混練量が多いと可使時間が短くなる注意があるため、現場記録(気温、混練開始時刻、バッチ量)を残すほど原因特定が早くなります。
下地処理・プライマー・混練・充てん・養生まで“できているつもり”が重なると、最終的に剥離や浮きとして現れます。だからこそ、自主検査は最終確認ではなく、次の不具合を未然に止める工程として位置づけるのが、エポキシ樹脂モルタル材を使いこなすコツです。
欠損部充てん工法の全体手順(下地処理〜養生〜自主検査)がまとまっている参考。
セメダイン:欠損部充てん工法(エポキシ樹脂モルタル)
混合比・可使時間・養生時間・注意事項(5℃以上など)の製品資料例。
日本接着剤工業会資料:コンクリート構造物補修用エポキシ樹脂モルタル(例)

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