
グリーン購入法は平成13年4月に施行された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」であり、循環型社会の実現を目指した重要な法的枠組みです 。この法律は、再生品等の供給面だけでなく需要面からのアプローチを重視し、①環境物品等の調達の推進と②環境物品等への需要の転換を促進することを目的としています 。
参考)https://www.nilim.go.jp/lab/pbg/theme/theme2/green/green.pdf
建設業界においては、日本の建設活動に投入される資材が全産業の約4割を占めるという重要な位置を占めています 。このため、建設資材のグリーン調達は環境負荷低減において極めて大きな影響力を持っており、公共工事では金額の大きさと国民経済への影響力から、特に積極的な取り組みが求められています 。
参考)グリーン調達
グリーン購入法の適用により、建築業界では事業ごとの特性を踏まえつつ、必要とされる強度や耐久性、機能の確保、コスト等に留意しながら環境配慮型の調達を推進することが義務付けられています 。
参考)技術調査:グリーン調達 - 国土交通省
グリーン調達と従来の調達方式の最も大きな違いは、価格・機能・品質だけでなく「環境」の視点を重視し、環境への負荷ができるだけ少ないものを選んで優先的に調達する点です 。従来の調達では主にコストと品質が判断基準でしたが、グリーン調達では製品のライフサイクル全体における環境負荷を考慮します 。
参考)【わかりやすく解説】グリーン購入法とは|対象や建設業界への影…
建設業界における具体的な違いとして、資材面では再生資源を活用した建材の使用が促進されており、コンクリート廃材のリサイクル品や再生アスファルト、再生木材などの採用が増加しています 。施工方法においても、省エネルギー型の技術や低排出ガス型の建設機械の導入が推奨され、工事中の温室効果ガス排出量削減が図られています 。
環境評価では、資源採取から廃棄に至るライフサイクル全体について地球温暖化、廃棄物・資源、有害化学物質、生物多様性など多岐にわたる環境負荷低減分野を包括的に捉えて評価を行います 。
グリーン購入法では、特定調達品目として重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類を定めており、建設関連では現在66の品目が指定されています 。これらの品目は、判断の基準と呼ばれる環境負荷低減の観点から設定された基準を満たす必要があります 。
技術評価基準では、品質評価として以下の条件のいずれかに該当する場合に要件を満たすものとされています:①JIS、JASの公的基準に適合していること、②構造物に関する国等の技術基準類に適合していること、③自社基準や協会基準が明文化されており、実際と同等の条件下での実績により品質上問題がないことが十分検証・確認されていることです 。
普及評価では、検討する品目が普及途上にあり、指定を行うことによって普及が促進されるかについて評価を行い、供給量と調達量の関係による社会的な影響も留意されます 。経済性評価では、コストが通常品に比べ著しく高いものは除外され、現在割高でも普及とともに比較対象と同程度になる見込みがあるかを確認します 。
公共工事におけるグリーン購入法の対象品目は、環境負荷低減効果が発揮される段階によって体系的に分類されています 。施工段階で効果を発揮する品目として、資材55品目(高炉セメントなど)、工法6品目(建設汚泥再生処理工法など)、建設機械2品目(低騒音型建設機械など)があります 。
供用・維持管理段階で効果を発揮する目的物として3品目(屋上緑化など)が指定されています 。これらの品目は、地球温暖化、廃棄物・資源、有害化学物質、生物多様性などの環境分野において、ライフサイクル全体で環境負荷低減効果を発揮します 。
主要な特定調達品目の環境負荷低減効果として、廃棄物・資源に関するもの(特にリサイクル)が多く、高炉セメントでは地球温暖化と廃棄物・資源の両分野で効果があり、再生加熱アスファルト混合物では地球温暖化と廃棄物・資源分野で効果を発揮します 。国土交通省の調達実績では、平成19年度のグリーン調達により約1,063万トンの廃棄物削減を実現し、これは産業廃棄物の最終処分量の48%に相当する大きな成果となっています 。
建築業界におけるグリーン購入の独自の評価システムとして、グリーン購入ネットワーク(GPN)による地方公共団体の取り組みランキング制度があります 。このランキングは自治体のグリーン購入への取り組み状況を評価・公表するものであり、自治体間の競争を促進しています 。
大手建設会社では独自のグリーン調達ガイドラインを策定しており、大成建設では2001年に「大成建設グリーン調達ガイドライン」を制定し、2023年度は109品目を採用しています 。建築設計時のグリーン調達品目の採用について目標管理を実施し、2023年度のグリーン調達品目は平均で13.7品目となっています 。
評価システムでは、環境保全活動への寄与として省エネルギー・省資源の推進、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進、有害化学物質の使用抑制、周辺環境・生態系の保全の6つの観点から総合的に評価されます 。これにより、資源の循環利用だけでなく、省エネルギー、CO2排出量の削減、省資源、有害物質の不使用、自然環境の保全などの効果を実現しています 。