発熱量測定JISで建築材料の防火性能を正しく知る方法

発熱量測定JISで建築材料の防火性能を正しく知る方法

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発熱量測定とJISで知る建築材料の防火性能

発熱性試験に合格した材料でも、取付け構法を誤ると認定が無効になり違法建築扱いになります。


この記事のポイント
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発熱量測定とJIS規格の関係

建築材料の防火性能は「燃焼熱試験(JIS M 8814)」と「発熱性試験(ISO 5660-1 / JIS A 1316)」の2種類で評価されます。目的が異なるため、どちらの試験が必要かを正確に把握することが重要です。

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不燃・準不燃・難燃の判定基準

不燃材料は「総発熱量8MJ/m²以下・20分間」、準不燃材料は「10分間」、難燃材料は「5分間」という時間基準の違いがあります。数字を正確に押さえておかないと、認定申請が通りません。

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構法・施工条件と認定の関係

発熱性試験に合格しても、現場での施工条件(下地・構法・複合材の組み合わせ)が試験体条件と異なると、認定の適用外になるリスクがあります。建築業者が見落としがちな重要ポイントです。


発熱量測定の基礎:建築分野で使われるJIS規格の全体像

建築材料の発熱量測定には、大きく分けて「燃焼熱試験」と「発熱性試験」という2つのアプローチがあります。この2つを混同したまま試験依頼をすると、必要な認定が取れずに工期が大幅に遅れるリスクがあります。


燃焼熱試験(ボンブカロリーメーター法)は、試験体をボンベ内で完全燃焼させ、水温の上昇から発熱量を算出します。適用規格は「JIS M 8814」(石炭類及びコークス類のボンブ熱量計による総発熱量測定)に準拠した方法で、1g程度の少量サンプルで測定できるのが特徴です。試験体の単位質量あたりの発熱量(J/g)が得られます。これはいわゆる「燃焼熱」と呼ばれる値です。


一方、発熱性試験(コーンカロリーメーター法)は、実際の火災シナリオに近い試験です。ISO 5660-1に準拠し、日本では「JIS A 1316:2022(コーンカロリーメーターによる建築材料の発熱速度及び煙生成速度測定方法)」として規格化されています。こちらは単位面積あたりの発熱速度(kW/m²)と総発熱量(MJ/m²)を算出します。建築基準法における防火材料(不燃・準不燃・難燃)の大臣認定には、こちらの発熱性試験が使われます。


つまり目的が異なります。JIS M 8814は材料の化学的な燃焼エネルギー量を知るためのもの、JIS A 1316は実際の建物火災での燃え方を評価するものと理解しておくと整理しやすいです。


2000年の建築基準法改正以前は、防火材料の評価に「JIS A 1321(表面燃焼試験法)」が使われていました。改正後はISO 5660準拠の発熱性試験に切り替わっています。旧規格の試験結果しか手元にない場合は、現行評価法で再評価が必要になる場合があります。これは見落としがちな点ですね。


一般財団法人日本建築総合試験所:建材の発熱性能①発熱量と発熱速度(燃焼熱試験・発熱性試験の仕組みを図解付きで解説)


発熱量測定のJIS試験体条件と実際の現場の落とし穴

発熱性試験(コーンカロリーメーター法)の試験体は、縦横99mm×99mm、厚さ50mm以下の小片です。ハガキの横幅が約148mmなので、それより一回り小さなサイズと覚えておくとイメージしやすいです。50kW/m²の輻射熱を試験体に照射し、スパーク点火器で着火・燃焼させて排気ガス中の酸素濃度を測定します。


ここで建築業者が特に注意すべき点があります。認定を取得した建材は、試験時と同一の材料構成・施工条件で使うことが前提です。試験体が「せっこうボード+壁紙」という複合構成で認定を取得した場合、現場で異なる接着剤を使用したり、下地材を変更したりすると、認定の適用外となってしまいます。


さらに見落とされがちなのが「複合材のサンプリング方法」です。JIS A 1316では複合材の試験体について規定が設けられており、表面仕上げ材と下地材の構成ごとに試験が必要です。たとえば化粧ボードを不燃材料として使う場合、その化粧層に含まれる有機質量が200g/m²を超えると、追加でガス有害性試験や模型箱試験が必要になることがあります。


実際の研究例でも、有機質化粧材の割合が約15%の試験体(試験体D)は発熱性試験では合格したものの、不燃性試験では不合格になったケースが報告されています。発熱性試験だけ通っていれば大丈夫、は危険な思い込みです。




























材料等級 試験時間 総発熱量基準 最大発熱速度
不燃材料 20分間 8MJ/m²以下 200kW/m²超を10秒以上継続しないこと
準不燃材料 10分間 8MJ/m²以下 200kW/m²超を10秒以上継続しないこと
難燃材料 5分間 8MJ/m²以下 200kW/m²超を10秒以上継続しないこと


不燃・準不燃・難燃の違いは「試験時間だけ」という点が原則です。総発熱量8MJ/m²という基準は三等級共通であることを覚えておけばOKです。亀裂・貫通の有無も判定基準に含まれており、直径0.5mm以下のピンホールが発生した場合でも、裏面に50mm以上の空気層を設けるなどの条件付きで合格となる場合があります。


日本建築総合試験所:内装材料における不燃性試験及び発熱性試験の比較(有機質量と試験結果の関係を詳細に解説)


酸素消費法とは何か:発熱量測定の原理を建築業者向けに解説

コーンカロリーメーター法の核心は「酸素消費法」という測定原理にあります。一見複雑ですが、理解しておくと試験結果の読み方が変わります。


原理はシンプルです。有機材料が燃焼する際に消費される酸素の量と、そのとき発生する熱量の比率は、材料の種類に関わらず「酸素1kgあたり約13.1MJ」とほぼ一定です。木材でも壁紙でも、プラスチック系の内装材でも、この比率は大きくは変わりません。この法則を使えば、排気ガス中の酸素濃度を測定するだけで発熱量を算出できるわけです。


つまり直接炎の温度を測らなくていいということですね。これが従来の表面燃焼試験法(JIS A 1321)と最大に異なる点です。従来法は材料の表面温度上昇を測っていましたが、現行の酸素消費法では実際に放出されたエネルギー量を算出できるため、より精度が高い実火災の再現評価が可能になりました。


特に注目すべき数値として、木材(カエデ)の発熱量は約17.76kJ/g、セルロースは約16.09kJ/g、ポリスチレン断熱材などに使われる)は約39.85kJ/gです。ポリスチレンはセルロースの約2.5倍の発熱量を持ちます。断熱材の種類を選ぶ際に、この数字の差が実火災の激しさに直結することを意識しておく必要があります。


測定フローとしては、以下のような手順で進みます。



  • 🔧 試験体を99mm×99mmにカットし、コーンヒーターの下にセット

  • 🔥 50kW/m²の輻射熱を試験体上面から照射(フラッシュオーバー時の熱量に相当)

  • 💨 電気スパークで着火させ、燃焼排ガスをダクトで集気

  • 📊 ガス分析計で酸素濃度・CO・CO₂濃度を経時的に記録

  • 📈 酸素消費法の計算式で発熱速度(kW/m²)を算出し、時間積分で総発熱量(MJ/m²)を求める


試験体が着火してから燃え終わるまでの発熱速度の変化グラフ(HRR曲線)は、認定申請時の重要な提出書類のひとつです。このグラフのピーク値が最大発熱速度(MHRR)であり、200kW/m²を10秒以上超えると不合格となります。


日本ウレタン工業会:防火材料用燃焼性試験法でのJIS A 1321とISO 5660の違い(旧規格と現行規格の差異を詳しく解説)


建築基準法の大臣認定と発熱量測定JISの手続きの流れ

防火材料の国土交通大臣認定を取得するには、指定性能評価機関による性能評価が必要です。現在この業務を行う主な機関として、一般財団法人建材試験センター(JTCCM)や一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)などが挙げられます。


認定取得の流れを整理すると、まず試験依頼書と試験体を指定機関に送付し、発熱性試験・不燃性試験・ガス有害性試験などを受験します。全試験合格後に性能評価書が発行され、これをもとに国土交通大臣認定の申請を行います。認定が下りると認定番号が付与され、その番号が製品に表示されます。


ここで実務上の注意点があります。発熱性試験の試験体は1個あたりおよそ15,000円程度の費用がかかり、通常3測定実施するため1材料で約45,000円以上の試験費用が発生します。さらに不燃性試験・ガス有害性試験も重なる場合は追加費用が生じます。費用面は要注意です。


また、認定を取得した材料は「認定番号+申請した仕様」が紐付いており、製品の厚さ・下地材・施工法を変更した場合は改めて試験・再認定が必要です。これが意外と知られていません。たとえば、認定を持つ壁紙を「薄い下地ボード」に変えて施工すると、その瞬間から認定外使用になります。


現場で使われる複合建材(例:金属板+断熱材+表面材のサンドイッチパネル)は特に注意が必要です。2009年に神戸市で発生した冷凍倉庫火災では、サンドイッチパネルの継ぎ目部分が火災拡大の原因となり消防士が殉職する惨事となりました。この教訓から、発熱性試験に合格していても実際の構法・継ぎ目処理に応じた追加評価が求められるケースが生まれています。



  • 📝 試験依頼書と試験体の送付(サンプルは99mm×99mm、厚さ50mm以下)

  • 🔬 発熱性試験・不燃性試験・ガス有害性試験の受験(必要に応じて模型箱試験も)

  • 📄 性能評価書の取得 → 大臣認定申請 → 認定番号付与

  • 🏗️ 認定材料を使う際は「認定番号記載の仕様」と施工条件が一致しているか確認


一般財団法人建材試験センター:発熱性・不燃性・ガス有害性・ボンブ試験の概要(試験体寸法・試験場所・よくある質問を掲載)


発熱量測定JISの独自視点:現場の建築業者が見落としやすい「試験と設計の乖離」リスク

発熱量測定は試験機関に依頼すれば終わり、と思っている建築業者の方が多いのですが、試験結果を設計・施工に正しく反映させる段階にこそ大きなリスクが潜んでいます。これはあまり語られない盲点です。


発熱性試験は、試験体サイズ99mm×99mmという小さな片で評価されます。実際の建物の壁面は数十平方メートル規模です。小片で合格しても、複数枚を継ぎ合わせた状態や、天井近くなど熱気流にさらされやすい部位での実際の燃え方は、試験結果から直接読み取ることはできません。東京理科大学の大宮喜文教授も「発熱性試験の評価を受けた材料の中には、その構法などに注意を払うことが求められるケースがある」と指摘しています。


具体的に建築業者が意識すべきポイントは次の3点です。


第一に、試験体の施工条件の一致確認です。認定書に記載されている「施工方法・下地材・留め付け間隔」と現場条件が一致しているか、施工前に逐一確認する習慣が必要です。「見た目が同じ材料だから大丈夫」という判断は危険です。


第二に、改修工事での注意です。既存建築物の内装を改修する場合、既存下地の材質が変わっていたり、複数の材料が重ね張りされていたりすることがあります。改修後の材料構成が、認定取得時の試験体構成と一致しないケースは珍しくありません。これは違法内装につながるリスクがあります。


第三に、不燃性試験と発熱性試験の使い分けを現場レベルで理解することです。不燃性試験は「材料自体の燃えにくさのスクリーニング」、発熱性試験は「実際の火災時の発熱性能の評価」という位置づけです。不燃性試験に合格しても発熱性試験で不合格になるケースや、逆に発熱性試験は合格でも不燃性試験が不合格になるケースが存在します。どちらか一方の合否だけを見て判断しないことが原則です。


こうした設計・施工段階でのリスクを管理するために、防火材料の大臣認定番号を一元管理できる書類台帳や、施工記録と照合できる施工管理ツールを活用することが現場では有効です。試験依頼から認定取得・施工確認まで一連のフローを見える化することで、認定外使用という法的リスクを回避できます。


建材試験センター:建築物の火災安全性を支える防耐火性能評価技術(東京理科大・大宮教授の解説含む、構法と試験の乖離リスクを専門的に論述)