生コンクリート価格推移と建設業への影響

生コンクリート価格推移と建設業への影響

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生コンクリート価格推移と変動要因

生コンクリート価格推移の重要ポイント
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2025年の価格動向

東京では2025年6月に23,800円/m³を記録し、2003年以降の最高値を更新。わずか1年半で約25%上昇しました。

価格変動の主要因

セメント・骨材価格の高騰、燃料費上昇、運送業の2024年問題による輸送コスト増加が価格を押し上げています。

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今後の見通し

2025年度は横ばい予想も、東京協組は2027年度に最低3,000円/m³の値上げを予定しています。

生コンクリート価格の最新推移データ

建設物価調査会が公表する建設資材物価指数によると、2015年1月から2025年5月にかけて生コンクリートの価格は継続的な上昇傾向を示しています。特に注目すべき点は、2025年6月号における関東(東京)のレディーミクストコンクリート18-18-20(25)の価格が23,800円/m³に達し、前月比3,000円上昇して2003年1月以降の最高値を記録したことです。全国の主要都市でも同様に最高値を更新しており、建設業界全体に大きな影響を与えています。
参考)生コンクリートの価格が高騰?価格推移と価格に影響を与える要因…

東京地区生コンクリート協同組合では、2020年半ば頃から段階的な値上げを実施してきました。2022年1月には約2割の値上げを発表し、1立方メートルあたり3,000円という過去最大の値上がり幅を記録しました。さらに2025年4月1日以降の出荷分からは、さらに3,000円/m³の価格改定が実施されています。地方でも同様の動きがあり、沖縄の石垣島生コンクリート協同組合では2023年4月に3,000円/m³の値上げを実施し、わずか1年で合計6,000円の値上げとなりました。
参考)生コン価格が高騰する理由とは?値上げの現状を解説

一般財団法人 建設物価調査会の「Web建設物価掲載データから見る生コン市場の動き」では、生コン出荷量と工場数の推移が詳細に分析されており、価格変動の背景を理解する上で参考になります。
参考)建設物価調査会

生コンクリート価格を左右する原材料コスト

生コンクリートの価格変動に最も大きな影響を与えるのが原材料コストです。主原料であるセメント、骨材(細骨材・粗骨材)、混和剤のいずれかが高騰すれば、生コンクリート本体の価格も連動して上昇します。特に生コンクリートの大部分を占める骨材の価格変動は、最終製品価格への影響が極めて大きくなります。
参考)生コンクリートの価格が変動する理由 - 建設市場インサイト

セメント価格は2018年頃から緩やかな上昇傾向にありましたが、2022年のロシアのウクライナ侵攻により燃料である石炭価格が急騰し、セメント価格も大幅に引き上げられました。これまで生コン価格はセメントの価格変動にあまり影響を受けていませんでしたが、2022年の高騰は生コン価格の引き上げにつながるほど大きな影響となっています。また、セメント製造時には多くの電力を消費するため、電気料金の値上がりも製造時の燃料費を高騰させ、生コンクリート価格を押し上げる要因となります。​
骨材については、2019年頃より全国的に価格上昇傾向が続いており、運転手不足による輸送コスト上昇が背景にあります。建設物価調査会のデータでは、2024年3月から2025年1月までにコンクリート用砕石20~5mmで18都市、砂(荒目)で14都市、砂(細目)で12都市において価格が上昇しています。生コン工場側は次年度以降のセメント値上げによるコスト高を懸念しつつも、安定供給の維持には骨材価格の引き上げもやむを得ないとの認識が広がっています。
参考)主要資材の現状と展望 景気は緩やかな回復に期待 資材価格は小…

生コンクリート価格に影響する輸送と需給バランス

生コンクリートは生コン車(ミキサー車)で建設現場へ運搬されるため、輸送コストの変動が価格に直接影響します。特に2024年4月1日から運送業にも時間外労働の上限規制が適用されたことで、いわゆる「2024年問題」が発生しています。生コンクリートには運搬時間の制限があり、規定時間内に建設現場に届ける必要があるため、人手不足の状況下では輸送コストが上昇しやすくなっています。​
需要と供給のバランスも価格変動の重要な要因です。建設物価調査会の調査によると、2000年から2023年にかけて生コン工場数は減少傾向にあり、生コン出荷量も2018年以降は減少が続いています。全国生コンクリート工業組合連合会の調査では、2024年4~6月期の全国総出荷数量は1,522万3,865m³で前年同期比7.7%減となりました。官公需は51カ月連続の前年割れ、民需も5カ月連続の前年割れとなっており、資材価格高騰による工事計画の縮小や働き方改革、人手不足による工期長期化などが需要減速に拍車をかけています。
参考)生コンクリート|市況・価格推移|けんせつPlaza

しかし大規模な建設工事が集中する場合には、一度に多くの生コンクリートと運搬車両が必要となり、供給能力を超える需要が発生すると価格が高騰しやすくなります。このような需給の不均衡が、地域ごとの価格差を生み出す一因にもなっています。
参考)生コン価格について

生コンクリート価格の地域差と協同組合の役割

生コンクリートの価格は地域によって大きな差があります。例えば北海道の網走では1m³あたり25,950円(2023年10月時点、21-18-25)で取引されている一方、沖縄では18,000円という価格設定になっています。都市圏でも、東京は21,100円に対して大阪では25,100円と、約4,000円の価格差が存在します。これらの価格差は単純な運搬困難性や需要と供給のバランスだけでは説明できない複雑な要因があります。​
生コンクリート業界の特徴として、協同組合を通じた取引が一般的に行われています。協同組合に加入している事業者は独自に価格を決定することができず、組合が定めた価格で販売します。この協同組合システムは、建材の安定供給と人件費の確保、建築計画の安定的な供給を実現するための手段として機能しています。​
ただし、協同組合に加入している事業者が脱退したり、非協同組合の事業者が協同組合に加入したりすると、価格競争が生まれ価格の下落や高騰が起こる可能性があります。土木学会の研究発表でも、国内の生コンクリートの供給体制と価格変動に関する分析が行われており、価格形成メカニズムの理解が重要とされています。​
建設市場インサイトの「生コンクリートの価格が変動する理由」では、価格競争が働きにくい構造について詳しく解説されており、協同組合の組織力と供給できる工場が限定されている点が指摘されています。​

生コンクリート価格高騰が建設業界に与える実務的影響

生コンクリート価格の高騰は建設工事費に直接影響するため、工事費全体の見直しが必要となるケースが増えています。工事原価算出時と生コンクリート発注のタイミングにはズレがあり、発注時に見積もり価格より高騰していることも珍しくありません。このような予算超過は建設工事費の見直しを余儀なくし、事業計画全体に影響を及ぼします。​
さらに深刻な問題として、建設工事の遅延や中断のリスクがあります。大量の生コンクリートを必要とする工事では、生コン工場の生産能力を超えてしまい、建設現場への供給が困難になることがあります。また生コン工場の生産能力が十分でも、生コン車を確保できず運搬できないケースも発生しています。生コンクリートを調達できなければコンクリート工事を実施できないため、決められた工程で作業を進められなくなり、場合によっては建設工事が中断する可能性もあります。​
全国生コンクリート工業組合連合会の調査でも、主要10都市のうち札幌5,000円、東京3,150円、新潟2,000円、名古屋100円、那覇2,000円の価格上昇が確認されており、値上げの動きが全国的に広がっています。名古屋では価格体系の見直し後も値上げ交渉が継続されており、仙台や福岡でも強含みで推移しています。このような状況下で、建設事業者は資材価格の動向を常に把握し、適切なコスト管理を行うことが求められています。​

生コンクリート価格の将来予測と業界対応策

2025年度の生コンクリート価格については、建設物価調査会が横ばいで推移する見込みと予想しています。東京地区生コンクリート協同組合は2025年4月1日以降の出荷分から3,000円/m³の価格改定を実施しましたが、現行価格を維持する見込みとされています。ただし長期的な視点では、東京協組は2026年度の価格を据え置き、2027年度に最低3,000円/m³の値上げを行う方針を示しており、価格改定の準備期間を半年から1年半に延長して需要家の理解を求めています。
参考)東京協組 生コン価格、26年度据置きも27年度に値上げ

セメント業界の動向も生コンクリート価格に影響を与えます。セメント協会の2025年度需要見通しによると、国内需要は32,000千t(前年比97.7%)と減少が見込まれており、労務費や資材価格の上昇により金額あたりのセメント使用量は減少すると想定されています。メーカーは価格維持に努める考えを持っているため、2025年度のセメント価格は横ばいとなる見込みです。
参考)セメントの価格推移|価格高騰に与える要因や建設業界への影響、…

建設業界では生コンクリートの無駄削減に向けた技術開発も進んでいます。LiDARなどを搭載したスマートフォンで現場を撮影しながら正確に打設数量を計算する技術により、発注時の無駄を減らすことが可能になっています。従来は2人でメジャーなどを使って計測していた作業が1人で済み、数量も自動計算できて精度が向上しています。
参考)https://www.shinko-web.jp/series/12058/

対策手法 効果 実施のポイント
部分打ち+砕石併用 使用量20~50%削減 必要箇所のみコンクリート打設し他を砕石敷きに
再生骨材コンクリート利用 材料費最大15%削減 解体コンクリート再利用で輸送費も削減
プレキャスト製品活用 施工時間短縮 工場製造品使用で現場作業効率化
スマホによる数量計測 発注精度向上 LiDAR活用で自動計算により無駄削減

建設物価調査会の「セメント業界の現況と今後の展望」では、2025年度の国内需要見通しや官需・民需の動向が詳細に分析されており、中長期的な価格予測の参考になります。
参考)建設物価調査会

国土交通省の主要建設資材需要見通しでは、2024年度のセメント需要を3,500万トン(前年度比1.2%増)、生コンクリートを7,100万m³(同1.2%増)と予想しており、前年度を上回る見通しを示しています。ただし骨材・砕石の動態統計調査が2019年で中止となったため、今後は別の指標での需給把握が必要となっています。
参考)本年度の主要建材需要見通し——セメント、生コン、普通鉄鋼が増…

建設事業者としては、価格変動の要因が複数あることを理解し、今後も価格が変動する可能性を念頭に置きながら、適正価格での取引と効率的な資材調達、無駄削減技術の活用を進めることが重要です。​