

建築設備や搬送、回転機器が絡む現場では「イナーシャ=慣性モーメントJ」を求める場面があり、基本形は「質量×半径の二乗」という構造を持ちます。三木プーリの技術資料では、基本の考え方として慣性モーメントを「回転体の質量Mkgと半径Rmの2乗の積」として示しています(J=M・R^2)。
同資料には中空円筒、棒、直方体、回転中心がずれた場合など、実務で遭遇しやすい形状の計算式がまとまっており、「形状を単純化して近似する」考え方も例示されています。
また、必要性の説明として、回転トルクTと角加速度αの関係(T=J×α)が示されており、イナーシャ計算は「モータ・ブレーキ・制御のトルク見積り」に直結する点が重要です。
現場でツールを使うときは、入力欄が「直径D」なのか「半径R」なのかを最初に確定させます。半径が2倍違うだけで二乗項のため4倍の差が出るので、桁ズレの多くはここで発生します。
参考)慣性モーメント(イナーシャ)とは?公式と求め方を具体例で解説…
次に「形状を何に近似するか」を決めます。例えば、カップリングやプーリは厳密には段付きやテーパがありますが、資料の計算例のように“中空円筒とみなす”近似でカタログ値に一致するケースもあります。
近似の方針を社内で統一しておくと、担当者が変わっても計算の再現性が上がり、レビュー時に「どの仮定で算出した値か」が説明しやすくなります。
慣性モーメントのSI単位はkg・m^2で、質量kgと距離mの二乗が掛かる、という形そのものが単位に表れます。三木プーリの資料でも、現在は国際単位系としてJ=M・R^2[kg・m^2]を使用すると整理されています。
一方、現場では古い資料や機器仕様で「GD^2(はずみ車効果)」表記が残っていることがあり、単位系が混在しやすいのが落とし穴です。三木プーリは従来の重量単位系やGD^2に触れ、フライホイール(はずみ車)の文脈で使われていたことも説明しています。
さらにオリエンタルモーターの資料では、JとGD^2の関係式として \(J=\frac{1}{4}GD^2\) を明示しており、換算の起点として使えます。
ツール運用のコツは「プロジェクトの標準単位」を先に宣言することです。例えば、設計計算書・検討メモ・ツール入力をすべてkg・m系に固定し、GD^2が出てきた時だけ上記関係式で変換します。
参考)慣性モーメントJ(イナーシャ) 計算式・公式 一覧
また、密度から質量を起こす場合は、入力値がmmのまま体積計算されていないか(m換算漏れ)を疑うべきです。オリエンタルモーターのページには材料の密度の例も載っており、概算チェック(鉄は約7.9×10^3 kg/m^3等)の目安にできます。
レビューでは、計算結果そのものだけでなく「入力した単位の一覧(mm→m換算の有無)」を残すと、再計算時の手戻りが減ります。
回転体だけでなく、直線運動する負荷を回転系に“等価換算”してイナーシャに含めるケースが多く、ここがツール選定の分岐点になります。オリエンタルモーターの計算式では、直線運動する物体の慣性モーメントを \(J=m(\frac{A}{2\pi})^2\)(Aは単位移動量m/rev)として示しており、ねじ・ベルト等の機構で便利です。
同じページでは、減速機を介した場合のモータ軸換算として \(J_m=\frac{1}{i^2}J_L\) を示しており、減速比iが効くことが明確です。
この2つを押さえると、「負荷側で見たイナーシャ」と「モータ軸で見たイナーシャ」を混同しにくくなります。
ツールの入力画面でよくある罠は、減速比を“回転数比”で入れるのか“トルク比”で入れるのか、表記が曖昧なことです。式が 1/i2 で効く以上、iの定義を間違えると結果が二乗で崩れるため、仕様書の表現(例:1:10、10:1)をそのまま転記せず、必ず「モータ回転/負荷回転」で定義し直します。
直線換算では、A(m/rev)が本質で、ねじのリードやプーリ周長などがAに相当します。現場で「rpm→m/s」の変換を別紙でやっている場合、Aの定義が曖昧になりがちなので、計算書内にAの根拠(リード、径、周長)を明記すると監査に強くなります。
また、負荷質量mに含める範囲(ワークだけ/治具込み/搬送部材込み)を固定しないと、同じ機構でも担当者によってJが大きくブレるため、BOMのどの行を拾うかルール化すると運用が安定します。
建築従事者の文脈では「イナーシャ」と言いながら、実際には梁・柱の“断面二次モーメントI”を指している場面もあり、ここを混同するとツール選択を誤ります。tec-noteの整理では、長方形断面の断面二次モーメントが \(I=\frac{1}{12}bh^3\) 、円形断面が \(I=\frac{\pi}{64}d^4\) といった代表公式が一覧化されています。
同ページには中空断面や台形、H形など多様な断面の公式と、計算フォームの存在が示されており、手計算より転記ミスを減らしやすい構成です。
断面二次モーメントは距離の4乗が効くため、寸法単位(mmとm)を取り違えると致命的な桁差になりますが、この“4乗の感度”は現場の違和感検知にも役立ちます。
実務のコツは、回転の慣性モーメントJ(kg・m^2)と、断面二次モーメントI(m^4やmm^4)を、帳票の段階で別シートに分離することです。名前が似ていても、用途も単位も別で、計算ツールも別物として扱うのが安全です。
参考)https://www.orientalmotor.co.jp/ja/tech/glossary/ka31
さらに、複合断面(開口付き、欠き込み、増厚など)を扱うときは、単純公式だけでなく「どの部材を足し引きしたか」を図と表で残すと、監理側の指摘が減ります。tec-noteは多くの断面形状を網羅しているため、近い形状を基準にして分解する発想が取りやすいです。
ここまでを整理しておくと、「イナーシャ 計算 ツール」という検索意図の中に混在する“回転系”と“断面系”を、現場で正しく選別できるようになります。
検索上位の多くは公式や計算例に寄りますが、建築の現場で実際に効くのは「レビューで止まらない見せ方」と「引継ぎに耐えるログ」です。例えば、三木プーリが示すように、慣性モーメント計算には“回転中心がずれた場合”の扱い(平行軸の考え方)が出てきますが、現場の引継ぎでは「回転中心をどこに置いたか」が口頭情報になりやすいです。
そこで、ツール入力の前提を“文書化”します。最低限、次の3点を同じページに固定しておくと、後工程で検算が可能になります。三木プーリの式展開のように、パラメータが何を意味するかが重要だからです。
加えて、監理・上司チェックで刺さりやすい“意外な落とし穴”として、直線運動換算と減速換算を同時に入れる時の二重換算があります。オリエンタルモーターが直線運動換算式と減速機換算式を別々に提示しているのは、工程を分けて考える必要があるからで、同じ係数を二回掛けると簡単に過小評価になります。
実装面では、Excelや社内ツールのセルに「式を直接書く」のではなく、入力欄を固定(ロック)し、A(m/rev)やi(減速比)の定義文をセルコメントに残すと、担当交代後の事故が減ります。
“計算が合う”だけでなく“説明が通る”状態を先に作ることが、建築の現場でのイナーシャ計算ツール運用の差になります。
参考:慣性モーメントJの形状別公式、単位系、トルクとの関係(T=J×α)がまとまっている
慣性モーメントJ(イナーシャ) 計算式・公式 一覧
参考:直線運動の等価換算、減速機を介したモータ軸換算、JとGD2の関係式が確認できる
https://www.orientalmotor.co.jp/ja/tech/calculation/sizing-motor03
参考:断面二次モーメント・断面係数の代表公式と計算フォーム(長方形 I=121bh3、円 I=64πd4 など)が一覧化されている
https://tec-note.com/1720