

凹凸の深いパターンを選ぶと、塗り替え費用が10万円以上余分にかかることがあります。
ジョリパットは、アイカ工業株式会社が1975年から販売しているモルタル外壁用の塗材です。発売から約50年の実績を持ち、カラーバリエーションは180色以上、デザインパターンは100種類以上(カタログ収録モデル数は162種類以上)と、国内の塗り壁材では最大規模のラインナップを誇ります。
カタログは「ジョリパット総合カタログ(品番:D123N)」として、アイカ工業の公式サイトからWEBカタログ形式で閲覧できます。また、建材店や施工業者経由でサンプル帳(色見本帳)を無料請求することも可能です。実際の色・質感はモニターや印刷物では再現しきれない部分があるため、現場判断に際しては必ずサンプル帳での確認を推奨します。これが基本です。
カタログは大きく15のグループに分類されています。具体的には、ボーダー・クリフ・スクラッチ・ラフ・スプレー・ソフト・ローラー・ニューエイジングアート・マテリアル・消臭抗菌・シルキーパレット・爽土(そうど)・ゼロ・ジョリコート・フレッシュ、以上の15グループです。このうちシルキーパレット・爽土・ゼロは内装専用、それ以外は外装・内装両用となっています。
実務上の注意点として、カタログに記載された単価は「材料のみ」ではなく、施工費を含む「材工込み」の参考単価である場合がほとんどです。実際の見積もりには足場・養生・下地処理・付帯部費用が別途かかるため、カタログ単価だけで総費用を判断するのは危険です。
参考として、アイカ工業公式のパターンバリエーション一覧は以下で確認できます。
アイカ工業公式サイト|ジョリパット パターンバリエーション一覧(全グループの写真・名称を網羅)
https://www.aica.co.jp/products/wall-material/jolypate/pattern/
カタログ内の15グループを施工費用とデザイン特性の両軸で整理すると、現場での提案精度が格段に上がります。以下の表は、各グループの種類数・単価レンジ・主な用途をまとめたものです。
| グループ名 | 種類数 | 単価(材工込み) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| ボーダー | 6種 | 4,200〜5,400円/㎡ | 横縞基調・モダン |
| クリフ | 9種 | 4,400〜11,100円/㎡ | 岩・砂質感・重厚感 |
| スクラッチ | 12種 | 4,200〜5,900円/㎡ | 塗り壁風・汎用性高い |
| ラフ | 10種 | 4,500〜5,400円/㎡ | 粗目・職人仕事感 |
| スプレー | 11種 | 3,200〜5,100円/㎡ | 凹凸少なめ・汚れにくい |
| ソフト | 9種 | 4,200〜5,100円/㎡ | 色コントラスト重視・柔らか |
| ローラー | 25種 | 4,200〜6,400円/㎡ | 最多バリエーション・木目・レンガ調 |
| ニューエイジングアート | 14種 | 6,500〜7,500円/㎡ | ローラーのダーク色仕様・実物感 |
| マテリアル | 14種 | 4,500〜9,100円/㎡ | 砂壁・コンクリート・紙質感 |
| 消臭・抗菌 | 数種 | 3,100〜3,700円/㎡ | 機能重視・シンプル |
| シルキーパレット(内装専用) | 複数 | 3,000〜4,600円/㎡ | 光沢・高級感 |
| 爽土(内装専用) | 複数 | 6,600〜9,900円/㎡ | 天然土・石素材 |
| ゼロ(内装専用) | 複数 | 6,300〜12,000円/㎡ | メタリック・ラメ |
| ジョリコート | 複数 | 1,100〜3,600円/㎡ | ゴツゴツ感・コスト低め |
| フレッシュ | 1種 | 2,600円/㎡ | トップコートのみ・模様なし |
注目すべきはローラーパターンの種類数です。25種類はカタログ全体で最多であり、木目調「ウッディバーク」やブルックリン風「ブルックリンウォール」など、近年需要が増えているインダストリアル系・ヴィンテージ系の表現にも対応しています。この多様性が選ばれる理由です。
一方、ジョリコートとフレッシュはデザイン志向ではなく機能・コスト重視の用途向けです。外構のブロック塀など、大面積でコストを抑えたい場面での採用実績が多く見られます。
参考として、各パターンの詳細価格比較はこちらで確認できます。
ヌリカエ|ジョリパットのデザインパターン・価格比較(15グループ全パターンの単価・施工例を掲載)
https://www.nuri-kae.jp/column/outer-wall/172/
パターンを選ぶ際、デザイン性と施工費だけに目が行きがちですが、プロとして見落としてはならないのが「凹凸の深さと汚れリスクの関係」です。これは意外ですね。
ジョリパットの最大のデメリットとして挙げられるのが「汚れが溜まりやすい」点です。特に凹凸の深いスクラッチパターン・ラフパターン・クリフパターンは、雨水による汚れが凹み部分に堆積しやすく、コケや藻の繁殖リスクも高まります。一方で、スプレーパターンやソフトパターンは表面の起伏が浅いため、同条件でも汚れの滞留が起きにくいとされています。
具体的に数字で見てみましょう。通常、ジョリパットの外壁塗装は10〜15年に一度が目安とされています。ただし、凹凸が深いパターンで汚れが蓄積した場合、7〜8年での再塗装が必要になるケースもあります。30坪の住宅で再塗装を1回追加すると、それだけで80〜140万円の追加出費が生じる可能性があります。パターン選択がランニングコストに直結するということです。
現場で施主に提案する際の基準として「凹凸が強すぎず弱すぎず」という原則があります。つまり、凹凸が全くないフラット仕上げは意匠性に欠け、深すぎる凹凸は汚れを呼ぶ、という中間点を狙うことが実務上の正解です。
また、高圧洗浄についても注意が必要です。最大15MPa以上の水圧をかけられる高圧洗浄機は、ジョリパットのパターン凹凸を剥がすリスクがあります。定期的な水洗いは「手洗い+やわらかいブラシ」が基本であり、高圧洗浄を行う場合は低圧(5MPa以下)かつ経験のある施工業者に依頼することが推奨されます。
カタログを読み解くうえで重要なもう一つの軸が「施工ツール」です。ジョリパットのパターンは、吹付け・コテ・ローラーという3種類の施工方法と密接に対応しており、使用ツールによって仕上がりの性質が異なります。
まず吹付け(スプレー)施工です。スプレーパターンに代表されるこの工法は、専用の吹付けガンで塗材を噴射し、ポップコーンのような細かい粒状テクスチャを作り出します。凹凸が均一かつ浅いため、広い面積を短時間で仕上げやすく、職人の技術差が出にくいという特性があります。単価は3,200〜5,100円/㎡と比較的低めに抑えられる点もメリットです。
次にコテ施工です。コテ仕上げに対応するのはラフパターン・スクラッチパターン・ボーダーパターンなどです。職人がコテを使って塗材を手動で成形するため、凹凸の表情に職人ごとの個性が出やすく、唯一無二の仕上がりを生み出せます。ただし施工費は4,200〜12,000円/㎡と幅が広く、職人の腕前と経験年数によって仕上がりに差が生じるリスクがあります。実力のある左官職人の手が必要です。
ローラー施工はその中間的な存在です。専用のテクスチャーローラーを転がすことで、木目・レンガ・アラカベなど多様なパターンを比較的均一に再現できます。カタログ最多の25種類を誇るのがこのローラーパターンで、単価は4,200〜6,400円/㎡です。吹付けよりも施工時間はかかるが、コテほどの技術依存度はない点でコスパのバランスが取りやすいと言えます。
| 施工ツール | 単価の目安 | 技術依存度 | 代表パターン |
|---|---|---|---|
| 吹付け | 3,000〜6,000円/㎡ | 低め | スプレーパターン |
| ローラー | 3,200〜6,500円/㎡ | 中程度 | ローラーパターン・ニューエイジングアート |
| コテ | 4,200〜12,000円/㎡ | 高い | ラフ・スクラッチ・ボーダー・クリフ |
発注の際には「どのツールで施工するか」を事前に確認しておくことが、仕上がりトラブルを防ぐうえで重要です。コテ施工を希望しているのに経験の浅い業者が施工すると、パターンのムラや施工不良が発生し、後から補修しても「継ぎ目」が残りやすい状態になります。これが条件です。
ジョリパットのカタログには「外装・内装両用」と「内装専用」の2種類が混在しています。この違いを現場で見落とすと、後々大きなトラブルにつながります。
内装専用とされているのは、シルキーパレット・爽土・ゼロの3グループです。これらはデザイン性が高く、単価も3,000〜12,000円/㎡と幅広いため、施主から「外壁にも使えないか」と問い合わせを受けることがあります。しかし、内装専用品は耐候性・防水性・紫外線対応の処方が外装用とは根本的に異なります。
具体的には、内装専用品を外壁に施工した場合、雨水・紫外線・温度変化への耐性が不足しているため、通常10〜15年とされる外装ジョリパットの耐用年数よりも大幅に短い期間で「色褪せ・剥離・吸水によるカビ発生」が起こる可能性があります。場合によっては2〜3年で外壁としての機能を失い、全面的な補修費用として数十万円〜100万円超の出費につながります。
この点はカタログの品番欄に「内装専用」と明示されていますが、見落としやすい箇所でもあります。提案段階でカタログの品番を必ず確認し、施主への説明書類にも明記しておくことが施工トラブル防止の基本です。
また、もう一点見落とされがちなのが「既存サイディングへの施工可否」です。アイカ工業のジョリパット「リミュール工法」を使えば、既設のサイディングボードを剥がさずに改修施工が可能です。ただし、この工法に対応している指定品番はジョリパットアルファ JP-100のみに限定されており、カタログの全パターンが使えるわけではありません。改修現場では工法と品番の対応関係をカタログで必ず照合してください。
参考として、アイカ工業の工法ラインナップはこちらから確認できます。
アイカ工業公式|ジョリパット 工法ラインナップから探す(リミュール工法など改修対応工法の詳細を掲載)
https://www.aica.co.jp/products/wall-material/jolypate/industrial/
ここからは、カタログの「読み方」ではなく「使い方」という独自の視点を紹介します。
多くの施工担当者はカタログを「製品の確認ツール」として使いますが、施主への提案場面では「絞り込みツール」として使う方が受注率と満足度の両方が上がります。これは使えそうです。
具体的には、以下の手順で使います。まず施主のライフスタイルや建物のテイストから「コテ系かローラー系か」を先に絞り込みます。次に「汚れへの許容度」を確認します。メンテナンスに手間をかけたくない施主であれば、凹凸の浅いスプレー系・ソフト系から候補を出します。最後に2〜3パターンに絞り込んでからサンプルを並べて見せます。
この順番が重要です。最初から全162種類を見せると、施主は選択肢が多すぎて判断できず「とりあえず保留」になりやすいからです。住宅展示場での研究では、選択肢を「3つ」に絞った場合と「10以上」から選ばせた場合で、決定速度に3倍以上の差が生じるという傾向が報告されています。
また、カタログのサンプルは「A5判(葉書より一回り大きい)」サイズが一般的ですが、実際の外壁施工では1面が10〜30㎡になります。カタログ上で「濃い」と感じた色は実際の壁面では更に濃く・暗く見え、「薄い」と感じた色は明るく拡散して見えます。この「面積効果」を施主に事前に説明しておくことで、竣工後の色違いクレームを大幅に減らせます。
加えて、夜間・雨天・日中の時間帯によって凹凸の陰影は大きく変わります。スクラッチやラフなど凹凸の深いパターンは、曇り空の下では立体感が弱まり、イメージと異なって見えることがあります。採用前に建物の方位と光の当たり方を確認したうえでサンプルを提示する、という一手間が施主の安心感と信頼につながります。
実際の施工事例や3DCADデータについては、以下で建材メーカーの公開データを活用できます。
3Dカタログ.com|ジョリパットアルファ ラインナップ(CADデータ・施工写真を無料で確認できる)
https://www.3cata.com/cadproduct/list/1107