

砂質土壌は粒子が粗く、粒径が0.02~2.0mmの砂が主体となる土壌で、粘土含量が0~15%、砂含量が85%以上を占める特性があります。透水性が高く水はけが良い反面、保水力と保肥力が極めて低いという大きな課題を抱えています。砂質土壌では粒子間の隙間が大きいため、水や肥料成分が速やかに下層へ流出してしまい、植物の生育や建築基盤としての利用に支障をきたします。
参考)https://apron-web.jp/garden/kihon-qa/7238/
不動産開発の観点では、砂質地盤は液状化現象のリスクが高く、地震時に粒子同士のかみ合いが外れて地盤が液状化する可能性があります。特に地下水位が高い河川沿いや埋め立て地、三角州などでは注意が必要です。砂質土でSWS試験における換算N値が5以下の場合は軟弱地盤として改良が必要となります。
参考)https://www.subsurface-exploration.com/knowledge/sashitudo-soil-improvement.html
砂質土壌の透水性は構造の良い粘土質土壌よりも高い値を示しますが、この特性は排水性の良さとして評価される一方で、栽培や緑化では乾燥しやすく管理が難しいという側面もあります。
参考)https://www.nouzai.com/glossary/%E9%80%8F%E6%B0%B4%E6%80%A7
砂質土壌の改良で最も効果的な方法は、有機物の施用による土壌構造の改善です。堆肥などの有機物を投入することで、土壌微生物の活動が活発化し、その代謝産物が粘土と砂を結合させて団粒構造を形成します。団粒構造とは土壌粒子が小さな団子状の塊を形成し、その間に適度な隙間ができる状態で、保水性と排水性を両立する理想的な土壌構造です。
参考)https://shop.takii.co.jp/qa/detail/406
具体的な改良方法として、砂質土壌には粘土質の土を1㎡あたり1~2kg、さらに土壌微生物を多く含む堆肥を1㎡あたり2~3kg施用することが推奨されています。初回の土壌改良では多めの元肥として堆肥5kg/㎡を作土層全体にすき込む方法も効果的です。完熟堆肥3kg程度に加え、市販の黒土(黒ボク)を1㎡あたり3kg程度散布し、20cm程度の深さまで混ぜ込むことで保水性と保肥力が向上します。
参考)https://www.honda.co.jp/tiller/magazine/hatakenotsuchi/vol8/
砂質土への木質バイオ炭と牛ふん堆肥の混入効果に関する研究
砂質土におけるバイオ炭と堆肥の混合施用が団粒構造の形成や土壌有機物の増加に相乗効果を示すことが報告されています。
有機物の施用は単に保水力を高めるだけでなく、土壌微生物の多様性を増加させ、長期的な土壌肥沃度の向上にもつながります。ただし、炭素率の高い有機物を多量に投入すると一時的に窒素飢餓が起こる恐れがあるため、施用量には注意が必要です。
参考)https://www.mdpi.com/2073-4395/11/1/157/pdf
砂質土壌における団粒構造の形成には、有機物と土壌微生物の相互作用が不可欠です。土壌改良材を鋤き込むと、土壌有効菌(善玉菌)が増殖・活性化し、有機物の分解過程で結合物質として機能する高分子化合物が生成されます。特に微生物が生成する多糖類などの線状コロイドは、粘土とシルトを糊付けする役割を果たし、0.01~0.05mm以上の団粒を形成します。
参考)http://www2.tokai.or.jp/shida/FarmAssist/danryuu.htm
団粒構造が形成されると、団粒の内部には小さな隙間(毛管孔隙)、外部には大きな隙間(非毛管孔隙)ができます。この二重の孔隙構造により、砂質土特有の「濡れるとドロドロ、乾燥するとカチカチ」という問題が解消され、環境変化に影響されにくい安定した土壌となります。毛管孔隙は水分を保持し、非毛管孔隙は余分な水分を排出するため、保水性・通気性・透水性が同時に向上します。
参考)https://www.healthy-clay.com/healty-clay/
砂質土は粘土含量が少なく有機物の分解が早いため、団粒構造を維持するには継続的な有機物の投入が重要です。腐植化が進んだ腐植酸は微細団粒の生成に役立ち、土壌有機物は特に粘土含量の少ない砂質土壌で団粒生成に効果を発揮します。
参考)https://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2010/201010.htm
砂質地盤の改良では、建物規模と地盤条件に応じた適切な工法選定が重要です。表層改良工法は軟弱地盤層の厚さが0.5~2m未満の場合に適用され、セメント系固化材と現地の土を混合して地表面を固める工法です。砂質土にも適用可能で、施工期間は一戸建て住宅で1~2日程度と短く、狭小地でも施工できる利点があります。ただし、地下水に流れがある地盤や改良面に近い場所に地下水がある地盤には適していません。
参考)https://www.s-thing.co.jp/jiban_kairyo/kairyo_koho/
エコジオ工法は砂質土に特に有効で、専用の鋼管で地盤を掘削し、孔壁の崩壊を防ぎながら砕石を投入・締固める方法です。ケーシングで孔壁を保護するため土砂が混入せず、プレス円盤で仕上げることで砂質土のゆるみを防止できます。重さ10トンの地盤改良機を使用し、層厚10cm間隔で砕石を締固めることで砂質土地盤を強化します。
参考)https://www.jibatten.com/knowledge/sandy-soil.html
柱状改良工法は小・中規模建築物向けで、砂質土と粘性土に適用可能です。セメント系固化材のスラリーと現地の土を混合攪拌して柱状の補強体を築造し、周面摩擦力と先端支持力で建築物を支えます。施工深さは12.0mまで対応可能で、最も一般的な地盤改良工法として広く採用されています。
参考)https://www.s-thing.co.jp/jiban_kairyo/kairyo_koho/chujyo_kairyo/
砂質土に適した地盤改良の方法について
砂質土地盤の液状化対策を含めた各種改良工法の詳細と選定基準が解説されています。
不動産従事者にとって、砂質土壌改良のコストと投資対効果の把握は重要な判断材料となります。表層改良工法は原地盤を除去せずに改良できるため、施工が効率的で短い工期により経済的なメリットがあります。一戸建て住宅規模であれば1~2日の工期で完了し、工事費用も抑えられます。
参考)https://solidcube.gr.jp/column/kouhou/highly_reliable_ground_improvement_method/
土壌改良材の選定においても、コストと効果のバランスが重要です。ゼオライトは多孔質で養分を保持し少しずつ放出する性質があり、施用量は1回あたり100~200kg/10a程度が標準です。バイオ炭と堆肥の混合施用は相乗効果により、単独施用よりも高い改良効果が期待できるため、長期的な投資効率が向上します。
参考)https://www.mdpi.com/2227-9717/9/8/1431/pdf
地盤改良工事では、エコジオ工法のような砕石を使用する方法は、セメント系固化材を使用する工法と比較して六価クロムなどの溶出リスクがなく、環境負荷が低い点も評価されています。TGパイル工法では残土がほとんど出ないため、残土処分費用が削減できる経済的メリットもあります。
不動産価値の観点では、適切な土壌改良と地盤改良により液状化リスクが低減され、建物の長期的な安全性と資産価値の維持が可能になります。特に河川沿いや埋め立て地などの液状化しやすい地形では、地盤調査後の判定結果に基づいた適切な改良投資が、将来的な損失を回避する保険的役割を果たします。