
シリコン系充填剤は、建築現場で最も広く使用される充填剤の一つで、特に水回りの施工に適しています。主成分はシリコーン樹脂で、硬化すると優れた耐水性と防水性を発揮するため、浴室やキッチンなどの水回りで頻繁に使用されます。
参考)充填剤の種類と塗り方
シリコン系充填剤は窓枠やガラス周辺のシーリングにも使用されます。ただし、塗料がのらないという特性があるため、外壁などの塗装が必要な箇所には適していません。施工後の美観を重視する場所では、他の充填剤を検討する必要があります。
参考)https://makit.jp/03327/
変成シリコン系充填剤は、ウレタン樹脂を原料としながらシリコーンに似た性能を持つ充填剤で、外壁施工に最適です。この充填剤の最大の特徴は、硬化後に塗装が可能な点であり、外壁の目地やサッシ周辺で広く使用されています。
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変成シリコン系は耐候性と塗装性に優れており、さまざまな用途に対応できる汎用性の高い充填剤です。窯業系サイディング、コンクリート、ALC、タイルなどの目地、サッシまわり、躯体、板金加工など、建築現場の多岐にわたる箇所で使用されています。
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ただし、シリコン系と比較すると耐久性がやや劣り、ウレタン系と比較すると密着性が低いというデメリットもあります。施工場所の環境や用途に応じて、適切に選択することが重要です。
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ウレタン系充填剤は、ウレタン樹脂を主成分とする充填剤で、高い耐久性と強い接着力が特徴です。モルタル外壁や屋根、破風、鼻隠しなどの補修に最適で、水や風の浸入を防ぐ重要な役割を果たします。
ウレタン系充填剤は様々な材料に使用でき、接着力が強いため、構造的な補修にも向いています。施工時にはプライマーの塗布が重要で、下地との接着力を強化し、被着面の細かい埃を抑える役割を果たします。
参考)https://www.sharpchem.co.jp/caulking/Seven-tips-of-caulking.html
特徴 | 内容 |
---|---|
耐久性 | 優れた耐候性で長期使用に適する |
接着力 | 強力な接着性で様々な材料に対応 |
塗装性 | 硬化後の塗装が可能 |
価格 | 比較的安価でコストパフォーマンスに優れる |
ウレタン系粘着剤はソフトでしなやかに剥がせる設計になっており、剥がし残りなく除去できる特性があるため、仮止めや一時的な施工にも使用されます。POP広告やポスターを貼る際にも優れた性能を発揮します。
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エポキシ樹脂系充填剤は、建築補修用注入材として広く使用されており、JIS規格(JIS-A6024)で定められた高品質な充填剤です。主剤と硬化剤の2液タイプで、モルタル、タイル、コンクリートなどのひび割れ補修や浮きの補修に使用されます。
参考)建築補修用注入エポキシ樹脂の各社商品を簡単紹介 - 左官建材…
エポキシ樹脂は液体の状態でも硬化後はコンクリートの圧縮強度の約2.5倍、引張強度で約10倍を示すため、建築業界で第二次世界大戦後から本格的に使用されてきました。接着剤や注入材として広く利用され、構造的な補修に欠かせない材料となっています。
施工時には、ひび割れ部分をU字またはV字型にカットし、その中にエポキシ樹脂などの補修材を充填する充填工法が一般的です。現場での計量が必要な丸缶タイプは材料費が安く、計量不要のカートリッジタイプは施工の手間が少ないという特徴があります。
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建築補修用注入エポキシ樹脂の各社商品紹介 - エポキシ樹脂の詳細な商品情報や施工事例が掲載されています
充填剤を選ぶ際には、施工場所の環境、下地の材質、求める性能を総合的に判断することが重要です。建築現場では、防水性、気密性、耐候性などの機能を発揮させるため、構造体の目地や間隙部分に充填剤を使用します。
充填剤には1液性(1成分形)と2液性(2成分形)があり、それぞれに特徴があります。1液性は缶タイプやコーキングガンを使用するタイプで、そのまますぐに使える利便性があり、部分補修や施工箇所が少ない場合に適しています。2液性は主剤と硬化剤が分かれており、専用の撹拌機で混ぜ合わせる必要がありますが、用途に合わせて大量に作ることができます。
充填剤の種類 | 主な用途 | 特徴 |
---|---|---|
シリコン系 | 浴室、キッチン、窓枠 | 完全耐水、安価、塗装不可 |
変成シリコン系 | 外壁目地、サッシ周辺 | 塗装可能、耐候性良好 |
ウレタン系 | モルタル外壁、屋根 | 高耐久、強接着力 |
エポキシ樹脂系 | ひび割れ補修、浮き補修 | 高強度、構造補修向き |
充填剤の選択を誤ると、施工後に剥離や劣化が早期に発生する可能性があるため、専門知識を持った業者に相談することも重要です。特に2液性の充填剤は、塗装知識や技術がないと硬化不良を起こす可能性があるため、経験豊富な施工業者への依頼が推奨されます。
充填剤を適切に保管し、正しく施工することは、長期的な性能維持に不可欠です。特に硬化剤が配合されている1液成分系の充填剤は、乾燥した場所での冷蔵保管が最適で、長期保管する場合は5℃以下での保管が推奨されています。
参考)取扱い・保管上の注意│ペルノックス株式会社
開封後のコーキングチューブは空気に触れると硬化が進むため、使用後はキャップをしっかりと閉め、湿気の少ない冷暗所で保存する必要があります。温度変化の激しい場所は避け、直射日光が当たらない場所に保管することで、材料の劣化を防ぐことができます。
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施工時の重要なポイントは以下の通りです。
建設・建築業界では、コンクリートや建造物に欠損部がある際、その部分に充填剤を入れて埋める作業を充填といいます。充填に使われる素材は樹脂やモルタルなどが一般的で、マンホール周りの接着、目地の補修、プールや排水管の防水・止水を目的とした穴埋めにも使用されます。使用環境や目的に応じて、シーリング材、コーキング材、パテ類などを適切に選択することが重要です。
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充填剤の形状にも種類があり、球状、針状・繊維状、板状に分類されます。球状は均等に充填したい場合に使用され、応力集中や熱膨張時のひずみが出にくい特徴があります。針状・繊維状は機械的強度を向上させる際に使用され、板状は導電効率や制振、ガスの遮蔽効果などで使用されます。
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充填剤の耐久性は、使用される種類や施工環境によって大きく異なります。一般的に、シリコン系は10年以上の耐久性を持ち、変成シリコン系は10~15年程度、ウレタン系は8~10年程度の寿命とされています。しかし、これらの数値はあくまで目安であり、施工品質や環境条件によって変動します。
充填剤のメンテナンスでは、定期的な点検が重要です。目視で確認できる劣化のサインには、以下のようなものがあります。
建築物の充填剤は、経年劣化により防水性や気密性が低下するため、適切な時期に打ち替えや増し打ちなどのメンテナンスを行う必要があります。特に外壁やサッシ周辺の充填剤は、紫外線や雨風にさらされるため、劣化が進みやすい箇所です。
エポキシ樹脂系充填剤による注入工事は、専門的な技術を要する作業ですが、深刻な職人不足の時代において、新しい業務として取り組む価値があります。施工業者によっては現場調査や施工指導を行っているため、初めて手掛ける場合でも安心して導入できます。
ひび割れ補修の代表的な工法 - 注入工法と充填工法の詳細な解説が掲載されています
充填剤の適切な選択と施工、定期的なメンテナンスにより、建築物の長寿命化とコスト削減を実現できます。日常的な点検と適切なタイミングでの補修が、建物の性能を維持する鍵となります。
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