
角ねじは、ねじ山の断面が長方形(正方形)形状を持つ特殊なねじです。ねじ山の角度は90°で構成されており、ねじ面が軸線に対して直角になっているため、力の働く方向が軸線と平行になる構造が最大の特徴です。
この形状により、三角ねじと比較して以下の利点があります。
角ねじは精度が比較的低いとされていますが、大きな伝達力を必要とする用途において威力を発揮します。
角ねじには独自のJIS規格は設定されておらず、一般にセラース標準角ねじが使用されています。セラース標準規格では、呼び径10mmから190mmまでの範囲で詳細な寸法が規定されています。
主要寸法例(10mm~30mm)
山数(N)は25.4mm(1インチ)あたりのねじ山の数で表現され、径が大きくなるほど山数は少なくなる傾向があります。
大径部の規格(60mm~190mm)
大径の角ねじでは、より粗いピッチが採用されています。
角ねじの製造には特殊な加工技術が必要です。一般的な三角ねじ用のタップが使用できないため、多くの場合旋盤加工でめねじを製作する必要があります。
加工上の重要ポイント:
角ねじの製作では、ねじ山の角度精度と平行度が重要な管理項目となります。特に、ねじ山の側面が完全に垂直でなく、わずかな傾斜を付けることで、加工精度とはめあい性能の向上を図っています。
製造コストは三角ねじより高くなりますが、大きな力を伝達する用途では投資効果が高く評価されます。
建築業界では角ねじと台形ねじの使い分けが重要です。両者は似た用途で使われることがありますが、明確な違いがあります。
形状の違い:
性能の比較:
項目 | 角ねじ | 台形ねじ |
---|---|---|
摩擦力 | より小さい | 小さい |
精度 | 低め | 高精度加工可能 |
伝達力 | 大きい | 高い強度 |
製作性 | 困難 | 容易 |
台形ねじは工作機械の送りねじに多用されるのに対し、角ねじは万力やジャッキなど、より大きな力を必要とする用途に適用されます。
建築業界での角ねじ活用は、他の産業とは異なる特殊な要求があります。建築現場で求められる性能は以下の通りです。
建築特有の要求事項:
具体的な建築用途例:
建築業界では、角ねじの大きな伝達力特性を活かし、従来の油圧システムでは対応困難な精密調整が必要な場面で重宝されています。特に、段階的な荷重調整や長期間の荷重保持において、機械的な確実性が評価されています。
また、建築現場の環境条件(粉塵、湿度、温度変化)に対する耐性も重要な選定要素となり、適切な表面処理と材質選択が求められます。近年では、高強度材料を使用した角ねじが開発され、より過酷な建築環境での使用が可能になっています。
参考リンク - 角ねじの基本特性と用途について詳しい技術解説
https://hitopedia.net/%E8%A7%92%E3%81%AD%E3%81%98/
参考リンク - ねじの種類と特徴を包括的に解説
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machine-elements/screw/type.jsp