

カムとは、回転軸などに取り付けた「原動節」の形状で、接触する相手側(従動節)に意図した運動を与える機械要素です。
このとき接触点(接触部品)をフォロア(対偶部)と呼び、突端(ポイント)・平端・ローラー(ローラフォロア)といった形状が使われます。
建築従事者の業務でも、例えば「一定周期で押す」「一定角度だけ回す」「少し止めてからまた動かす」といった動作は、治具・搬送・自動扉周辺機構・検査装置などに普通に登場し、カム機構はそれを機械的に安定して実現しやすい部品です。
参考)CKDテクノぺディア[テクノペディア用語集]
一方で、カムは接触で動きを作るため、摩擦・面圧・潤滑の条件が悪いと摩耗が進みやすく、ここを見落とすと「動作は合っているのに寿命が短い」というトラブルになります。
参考)カムの種類
現場で「カムが原因かも」と判断する第一歩は、(1)当たり面の傷/偏摩耗、(2)動作終端の衝撃音、(3)高回転時だけ出る振動、の3点をセットで見ることです。
参考)https://d-engineer.com/kikaiyouso/cam.html
また、ローラー系フォロアは摩擦低減に効きますが、カム形状によっては追従誤差が出ることもあるため、精度優先か寿命優先かの優先順位を先に決めて選びます。
カム(原動節)は大別すると、平面カムと立体カムに分けられます。
平面カムは「直進型」と「回転型」に分類され、直進カム・直進溝カム・直進リブカム、板カム(radial/plate)・溝カム(face grooved)・板リブカムなどが代表例です。
立体カムは、円筒形(端面カム、円筒溝カム等)や、円錐形、たる形(globoidal)、鼓形(roller gear cam)などの分類があり、運動の軌跡が空間的になります。
立体カムは設計・加工・組付け難度が上がる一方、力の伝達やコンパクトな取り回しで有利になる場面があり、装置の狙い(剛性、スペース、要求寿命)で選定が変わります。
また、従動節(動かされる側)にも直動型・揺動型・間欠運動型などの種類があり、カム形状と従動節の組み合わせで「どんな動きが得られるか」が決まります。
この“組み合わせで機構が決まる”という見方ができると、現場で図面がなくても、実物の形状から大まかな挙動を推定しやすくなります。
参考:平面カム・立体カムの具体的な種類(直進型/回転型、端面カム、円筒溝カム、鼓形など)の整理に有用。
カムを「形」だけで理解すると、動作は作れても、振動・衝撃・摩耗の課題が残りがちです。
実務では、カム装置の出力動作を表す情報としてカム曲線を用い、変位だけでなく速度特性・加速度特性・入力トルク特性まで含めて考える、という整理が役に立ちます。
カム曲線の基本は2次元データで、変位を1回微分したものが速度、2回微分したものが加速度という関係で扱います。
時間・変位・速度・加速度を一定時間間隔のマトリックスで表す、という表現は、制御屋だけでなく保全側にも有効で、異音や振動を「どの区間の加速度ピークか」に落とし込みやすくなります。
設計で最低限押さえるべき条件として、変位・速度の連続性が必要で、さらに良い特性にするには加速度の連続性や、速度・加速度・(速度×加速度)を低くすることが求められる、という整理が示されています。
ここで意外と盲点になるのが「最大速度を下げるために等速区間を長くしたら、加速・減速時の速度の傾きが増えて加速度が上がることがある」というトレードオフで、静かにしたつもりが衝撃が増えるケースが起こります。
建築設備の周辺では、扉や搬送の停止精度が要求される場面が増え、残留振動があるとセンサ誤検知や締結部の緩みにつながるため、カム曲線の「速度と加速度の形」を見る価値が上がっています。
近年では、カム曲線技術が機械式カムだけでなく、サーボモータの指令データとして適用される、といった説明もあり、機械要素と制御の接点として理解すると応用範囲が広がります。
参考:カム曲線=変位・速度・加速度・トルク特性まで含める考え方、無次元化、速度ピークと加速度のトレードオフの説明が有用。
https://www.sankyo-seisakusho.co.jp/cam/seigyo.html
従動節には直動型・揺動型に加えて、一定時間運動したのち停止し再度運動する「間欠運動型」がある、という整理は、装置のサイクル動作を読む上で重要です。
このタイプは、連続回転入力から「送って止める」を作れるため、搬送や組付けの工程設計で「機械的な同期」を取りたいときに効きます。
間欠運動は便利ですが、停止端(止まり際)に衝撃が集中しやすく、フォロアやカム面の局所摩耗・面圧上昇が起きるため、カム曲線側で加速度を抑える設計が結果的に寿命へ直結します。
また、停止精度が必要な場合、カムだけでなく周辺のフレーム剛性や取付精度の影響も受けるので、「動作はカム、精度は構造」という分担で考えると原因切り分けが速くなります。
参考)カムの機能
現場での点検では、停止直前の異音、停止後の微振動(残留振動)、一定周期での摩耗粉の発生、を同時に観察すると、間欠運動由来の負荷集中を疑いやすいです。
「速度は抑えたのに壊れる」ケースでは、速度×加速度(A・V)が大きい区間がないかを見ると、駆動トルクや衝撃の説明が付く場合があります。
「カム=輪郭で動きを作る部品」という理解を広げると、カムリングという機械要素がベーンポンプでベーンの運動をコントロールする、という用例にもつながります。
カムリングは、固定容量式・可変容量式といった構成の中で、ベーンの動きを規定する要素として説明されており、カムの考え方が“自動機のリンク機構”だけに閉じないことが分かります。
建築の文脈では、油圧ユニットやポンプは設備・保全で関わる機会があり、そこで「カム形状が流体の吸入・吐出の挙動を間接的に決める」ような発想ができると、単なる部品交換から一歩踏み込んだ原因推定がしやすくなります。
例えば、ポンプの脈動や異音が出たとき、ベーン・ローターだけでなく、ベーンの運動を規定する要素(カムリング)の摩耗や傷を疑う、という観点が追加されます。
また、カムは「非対称形状で運動を作る」という定義が核なので、名称としてカムが付かなくても、実質的にカム的な役割を持つ部材(斜面で方向変換する機構など)が現場には紛れ込みます。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/press_mold_design/pr02/c0334.html
設計レビューでは、部品名に引きずられず「接触で運動を規定しているか?」で同類を見抜くと、潤滑・摩耗・当たりのリスクを早期に拾えます。